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[読書感想]エンデ「はてしない物語」はダイブする。下巻からが面白い。

※ この記事では、ネタバレをしないよう書いています。ただ、映画"ネバーエンディング・ストーリー"については既視聴とします。あらすじはまったく書いていません。あらすじは「はてしない物語」(Wikipedia)などに記載されています。

イントロ

ミヒャエル・エンデといえば、あなたはどちら派でしょうか?

「モモ」?  「はてしない物語」?

わたしは「モモ」でした。
愛蔵版まで持っていました。

「中田敦彦さんのYouTube大学」(リンク先: 該当動画)「100分で名著」(インク先:NHKの該当HP) など、さまざまなメディアで紹介されています。
※ そのため、わたしは書きませんけど。

「はてしない物語」を映画で見ました。幼い頃に何回も飽きずに見たものです。有名な「ネバーエンディング・ストーリー」です。

主題歌も有名ですね。リメイクが何度も行われています。最近の10~20代の方はこの映画を見られているのでしょうか?

※ 原作と映画の大きな違いは、幸いの竜(ドラゴン)の名前です。映画ではファルコンですが、原作はフッフールです。

「ネバーエンディング・ストーリー」があるから。

見たことのある方はお分かりでしょうが、この映画は、あまりに出来がいいです。夢とファンタジー、そして教訓が詰まった、類をみない大作です。
しかし、これがメリットであり、大きなデメリットでもあったのです。

「はてしない物語」を読む気が起こりませんでした。
原作があるのは、知ってはいました。「映画だけでいいや」と思わしめる映画の完成度がありました。積ん読リストにさえ、アマゾンのウィッシュリストにさえ入っていませんでした。「モモ」は読んでいたのに。

※ 「モモ」も映像化(映画)があります。しかし、出来がいいとは言えないようです。わたしは見たことがありません。だからこそ、原作を読む必要があったといえます。皮肉な結果ですね。みなさんもわたしと同じでは?

ふとしたきっかけで読み始めて、読み終えたとき分かりました。

映画って、序章しかしてないやん。

「風の谷のナウシカ」の映画がマンガ版の序章(つまり1巻)だけ、また、AKIRAの映画がマンガ版の途中を大幅カットされて最初と最後だけ、これらが合わさったような感じです。

映画は原作小説の上巻に相当します。

※ エンデさんは映画のストーリーにご不満だったようで、訴訟もされています。映画を上巻の内容で完結させるには、あのようにしかできなかったのではと、わたしは思います。

上巻329p、下巻411p、そもそも映画以降の話の方が長いのです。下巻からがファンタジーとしての冒険が描かれています。

※ 下巻の映画がありますが、評判はよくありません。わたしは見ていません。100%ファンタジー世界である下巻を映像化するには、1980年代の技術では難しいと思えます。ロード・オブ・ザ・リングのような作品が製作可能になった2000年以降であれば、良い映画になったのではないでしょうか。

読んでいる本のなかへ入ってしまう物語」、これは下巻のあとがき、翻訳者である上田真而子さんの言葉です。実際に読んでみるとわかります。

これ、「ダイブする」お話だ。

「ソードアート・オンライン」などゲームの世界に入り込むSF・ファンタジーもの、または、「リゼロ」や「無職転生」など転生する"異世界もの"の原型を、そこに見ることができます。

「はてしない物語」には、萌え、アクション、魔法、魔物、怪物など、現代の視点からすると、これらの要素があります。

また、原作「はてしない物語」での主人公 バスチアン・バルタザール・ブックスは「デブでチーズ色をしたX脚ののろまな少年」(Wikipedaより)です。映画のような可愛い少年ではありません。「リゼロ」や「無職転生」での主人公のように、周りの人たちとは少しばかり距離をおかれてしまう少年なのです。

上巻、映画に当たる内容を、知っている方にはお分かりですが、その現実世界に生きる少年バスチアンは崩壊したファンタージェンを再創造します。下巻は、ちょうどその後から始まります。

さて、世界を造りし者がどうなるか? 苦労せずに与えられた栄光が人をどのように変えてしまうのか、大人ならば想像できますよね。

しっかり、バスチアンは制裁を受けて、そして立ち直ります。

「はてしない物語」の由縁は、おわかりですよね。下巻には、映画の終わりのように締められます。

この記事も「はてしない物語」の続きでもありますね。

こぼれ話

翻訳者の佐藤さんはエンデさんと再婚されました

和書は上田真而子さん、佐藤真理子さんのお2人で翻訳されました。原著はドイツ語で1979年に、そして日本語翻訳版は1982年に出版されました。この翻訳作業を通じて、佐藤真理子さんはエンデさんと1989年にご結婚されました。 1929年生まれのエンデさんは当時60歳、1985年に前妻インゲボルク・ホフマンさんと死別され、佐藤さんとは再婚です。しかし、佐藤さんとは6年しか過ごせませんでした。6年後、エンデさんは1995年に病気により他界されました。

本の体裁

わたしは文庫版で読みました。

ハードカバー版では、作中の『はてしない物語』と同じ体裁になっており、読んでいるあなたもバスチアンになりきることができます。

ハードカバー版でもユーズドで買うならば、文庫版2冊を新本で買うのと、ほぼ同じ値段になるはずです。わたしは本棚の都合上、文庫版にしました。しかし、ハードカバー版でもいいでしょうね。

手が本にふれた。その瞬間、わなのかけがねがおりたように、バスチアンの中で何かがカチッと鳴った。手にふれたことでとりかえしのつかない何かがはじまり、ひとりでに進行してゆくのでは、そんな予感がバスチアンをとらえた。

エンデ「はてしない物語」岩波書店

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