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リーダーシップ研修を受ける気にさせる殺し文句

昨日,日本医療マネジメント学会学術集会(福岡)で「権限によらないリーダーシップと心理的安全性」について講演してきました.医療の世界でチーム医療が当たり前になっていて,主担当のドクターが全てについて把握して全て指示するという状況が減ってきているだけに,異論を許容する態度が皆にないと医療事故がおきやすいという認識がひろまっているようで,昨年は神戸でも同様の講演をしたことがあります.

前泊した木曜は大雨で気温も下がりましたが,川沿いの,もしいい天気なら良い雰囲気であろう店で,鶏の水炊きで温まりました.翌朝はこの学会集会の初日の朝一番のセッションだったので,私の知っている学会からの連想で,失礼ながら不人気なorあまり重要視されていないテーマなのかなと思って会場入りしたら,割合大きめの会場が満杯で立ち見も出ていたので驚きました.このセッションの「履修証明」が必要になる人が多いようだったので,医療安全のために義務化されている研修の一環という位置づけのようです.

講演は4本のうちの2番目で持ち時間は30分だけでしたが,会場からいただいた質問が非常に興味深く,その質問をいただいたことが今回の福岡出張の最大の収穫だったかもしれません.その質問というのが,ナースらしき人の「ご自分では優秀だと思いこんでいる人(ドクターなのか病院長なのか)に新しいリーダーシップの研修を受けさせる殺し文句はありませんか」.そんなご苦労をされているんですね.従来型の「リーダー研修」であれば管理職に昇進する見込みの人や昇進直前・直後の人が対象なので,研修を受講する意欲というかreadinessについては問題は少ないでしょう.問題なのはもう管理職研修ははるか前に受講して,それ以来日々経験を積んでいるのでいまさらリーダーシップについて研修を受ける必要はないという考えの人です.しかも従来型の「良いタイミングで良い指示を出」せるようになるという研修ではなくて,「部下にもリーダーシップを発揮してもらえるように環境を作る支援的なリーダーシップ」の研修なのですから,「必要ない」と思っている人ほど本当は必要である可能性が高いわけです.

私自身の仕事を振り返ってみても,ふだん企業研修や大学の職員研修では人事部からの依頼で(受講者のreadinessは前提条件として)研修を行うし,学生に対しては必修か,または選択か,どちらにしても自分には必要ないと思っている学生や社会人に対して,研修や授業を受ける気にさせるという仕事はあまりしてこなかったことに気づきました.

会場でのその質問の話に戻りますが,その場ではうまい殺し文句を考えつきませんでした.たとえば「楽になりますよ」は,楽にならない場合も多々あるwので駄目です.「人生楽しくなりますよ」は事実なのですが,当人に「いま充分に楽しい」と返されたらそこで終わりです.講演終了後にランチに向かう途中の路上で,よさげなフレーズが降りてきました.「あの研修を受けると評判が上がって,あの人のところで働きたいというドクターやナースが遠くからも集まってくるようになるらしいですよ」.これなら(たぶん)嘘はありません.

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