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朝のフレンチトースト
早朝からフレンチトーストを焼き、コーヒーを飲み机に向かう。
伯母へ私の近況を手紙で認める。
九十才を過ぎ、五人の兄妹のなか最後に残る伯母の気持ちは如何なるものかと考える。
誰かが最後に残る、その理屈は理解出来る。
普通は年齢の順に逝くものと、心は当たり前に準備されているのではないだろうか。
しかし、そんな当たり前に思えることが、なかなかそういかない。
二年前に伯母は長女を亡くしている。
持病があったにしてもあまりに急な出来事だった。
『幸せな老後』なんて言葉を時々耳にするが、よく考えてみればおかしな言葉である。
誰が判断するのであろうか。
私が勝手に理不尽な死の順番で伯母が辛い毎日を送っているのではないか、と思っているだけである。
人の心は分からない。
母も伯母も辛い人生を乗り越えて来た人たちだ。
達観した人生観を持っているに違いない。
過去の辛さを引きずっていたらここまで生きて来れなかっただろう。
強い伯母は案外楽しくやっているのかも知れない、楽しくやっていてもらいたい。
私は還暦を過ぎた、二十年近く両親と兄の看病やら、介護で辛さを感じる時期もあったが今は幾分落ち着いている。
その中で出来る何かをやろうと思うようになった。
ここまで来るのには時間がかかったが、無駄な時間ではなかったと思っている。
朝からフレンチトーストは美味かった。
ふだん食べないものをたまに食べるととても美味い。
自分の料理をほめられても実は自分ではそれほど美味いとは思ってない。
人の心は分からない。
だから伯母の心も案外健康なんだろうと思う。
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