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一汁一菜という言葉

一汁一菜という言葉が好きである。
なんともシンプルでいい。
具たくさんの汁物とご飯、これだけでいい。

私は朝早く目を覚ます。
歳を重ねたからというわけではなく、子どもの頃から早かった。
そして、一人でボソボソ朝メシを食べるのであるが、ご飯が一番ありがたい。
たくさんはいらない、軽く一膳の白飯を電子レンジで温め、晩メシの残った味噌汁に冷蔵庫の残り野菜を刻んで入れて具たくさんの味噌汁にする。
玉子か、油揚げがあればありがたい。
それで簡単に朝メシを済ませて一日がスタートする。

子どもの頃は母の作った味噌汁は父の好みの信州味噌、大豆のツブが残ったヤツだった。
ついでに煮干しもそのまま残っていた。
煮干しをすくわないように、具のワカメだけを拾い上げ、ご飯にぶっ掛け電子レンジで加熱して私の朝の独りメシは出来上がった。
そして時間が来ると飼い犬のクロとチビに母が同じ朝メシを用意していた。クロとチビは煮干しがあって嬉しかっただろう。
私と同じ朝メシを毎日食べた仔犬のクロとチビは煮干しが良かったのか骨太な元気な成犬に成長した。

朝からたくさんの野菜とその気になればタンパク質も摂ることが出来る。
健康オタクではないのだが朝の大切な時間に少しの手間で気持ちの落ち着く食事が出来る。
もうずいぶん長く続く私の習慣である。

だいぶ前になるが、歌舞伎町に『三汁一菜』という飲み屋があった。
西武新宿駅近く、一階は養老の滝だった。
地下一階の『三汁一菜』はカウンターだけの店、『明石焼きとシチューの店』とサブタイトルをつけて看板を上げていた。
マスターの開店時の年齢である31歳から付けられた屋号である。
明石焼きが珍しく、シチューはどれも美味く、暗いが店の雰囲気もマスターの喋りも良く繁盛した店だった。

大学合気道部の先輩がそこでアルバイトをしており、よく飲ませてもらった。
仕事を手伝ったこともある、懐かしいもう今は無い飲み屋である。
この『汁』とか『菜』という漢字に私は敏感なのである。
具だくさんの汁とご飯で私は一汁一菜としているが、本当の一菜を加えるならばこれからの時期、よく焼き油の滴る大きめの鰯の丸干しがいい。
そんな丸干しを朝から食べる事が贅沢となってしまった今、私は今のスタイルでいい。

朝から冷酒ひやざけの一合でもあれば、なおいい。
一日における私の至福の時間となるやも知れない。

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