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拝啓

春暖の侯、、、

春暖は俳句の季語でもある。
定義による春は三月から五月であるが、私の春暖は早い春の暖かな陽射しを浴びた雰囲気をそう言いたい。
しかしながら、昨日の通勤列車の中で、今日のような陽気も春暖というのかと思いながらJRで揺られていた。

もうすぐニ年になる通勤電車である。
三十年もの間、二日酔いでまだ動き出さない脳のまま、朝早く満員電車に無理矢理乗り込み会社まで通っていた。
そんな生活から卒業したつもりでいた。

しかし、もう二度と乗ることのないと思っていた通勤電車にまた乗り込んでいる。
人生ってのはそんなもんだと思っている。

ただ今回は必ず座っての通勤である。
今までの人生の半分を使って経験してきた通勤との違いにはカルチャーショックに近いものがあった。
新たな発見をしながらの電車での通勤である。
座ったことのなかった列車の座席につき、本を読み、モノを書いて考え事をする。
その気になれば寝ることも出来る。
背に陽の暖かさを感じての居眠りは至福の時間である。

何も無い、いつもと変わらない時間がそこにある。
毎日戦場に向かうように殺気立って吊り革にぶら下がっていた時間はもう無い。
特段変わったこともない暖かさが私を包んでくれる。

何も無いことの幸せを春暖は教えてくれた。

何かがあったから何も無いことが幸せだと、春暖は私に教えてくれた。

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