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変わらぬ友と変わり行く運送業界

私のゼネコン時代の友人の話です。
彼は建築屋です。
私がゼネコンで最後に営業した京都府下の知的障害者施設の建設現場の責任者でした。もともと工期も工事費も足らない工事を無理して受注しました。私の知的障害者の施設建設をしたいという強い気持ちもあって受注に至りました。
しかし予想されたように突貫の大変な工事となりました。
彼はまだその時、30過ぎで立場は次席でしたがすべてを取り仕切り竣工させてくれました。

竣工直前に私は会社を辞めました。1兆円の債務を抱え、会社はその債務放棄を銀行から認められました。もともとの債務の積み重ねはその銀行の口車に乗り、本来は建設工事の請負に徹するべきゼネコンが不動産事業を海外で展開し、その失敗による不良債権の積み重ねが原因でした。(銀行が飲み込んだ債務1兆円は国から補填されたと聞いています。)

本来の姿ではない1兆円の債権免除を私は理解できず、早々に手を挙げ退職させてもらいました。
それから人員整理が始まり1万人の社員は3千人にまで減りました。
彼は竣工を迎え、残務整理を終えて自ら退職しました。

そして、その後紆余曲折あって、現在は長崎県諫早市の運送会社の社長をしています。

彼から昨晩電話があって、京都で業界の会合があるからその前の晩に一杯やりませんか、という内容でした。

彼のいる運送業界は建設業界に負けず劣らずの3Kで荷主の発注価格が安すぎる厳しい業界です。
皆さんご存じのクロネコさんや飛脚のお兄さんはもちろん業界での最大手です。こんな大企業は運送業界のほんの一部で、中小企業法の定義による中小企業が99%にもなる大きな下請け構図のある業界なのです。

これは運送業が明治維新以後に国策として資本主義国家『日本』を作ろうとした成り立ちにも関係してきます。
しかしながら、運送業が無ければどの産業も成り立ちません。苦しくとも基幹産業として無くてはならない運送業なのです。

そして、こんな厳しい業界にも『働き方改革』や『カーボンニュートラル』の波は襲っています。
いつも時代の先を見る彼が夏からある会社に誘われて実証実験をやってました。彼の会社の大型冷凍トラックに『ソーラーパネル』を積みました。一般家庭の屋根に乗っているような重量物ではありません。薄型軽量、柔軟性のあるものです。トラックには最大積載量が決められていますので重い装備は敬遠されます。

この『ソーラーパネル』から発電される電気は冷凍庫を常時冷やすことが出来るのです。高騰高止まりの燃料費の節約にもなりCO2削減にも役立ちます。

現在当たり前のように走っている冷凍冷蔵自動車は彼の会社ナガサキロジティクスの親会社である福岡運輸の創業者である女性社長が終戦直後に進駐軍の要請に大手を含めた運送会社各社のなか、たった1社手を挙げ矢野特殊自動車とともに開発したものです。

世の先を見据えて困難を乗り越えて低温輸送を実現した親会社創業者のようにナガサキロジスティクス社長の阿部君(本名)にも辛苦をものとせず新しい事業を実現してもらいたいものだと思います。


同じ釜の飯を食った仲間が元気にやっている話は自分の事のように嬉しいものです。
個性的な人間が多い会社でした。一万人も社員がいれば変わった奴もいます、そんな人間が目についたってことかも知れません。

多くの社員の人生を変えてしまった会社。辞めたくない、辞めることの出来ない事情を抱えた社員は少なくなかったと思います。会社経営ってのは本当に責任のある仕事だと思いました。


ナガサキロジ社長の阿部君、一級建築士と一級施工管理技士の資格を持った運送会社の社長は全国でも少ないでしょうね。
建設業からいろんな業界に旅立って行った仲間たち、皆「変わった経歴だね」って言われていると思います。


彼の会社のWEBサイト



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