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柿の背くらべ

今年久しぶりに口にした柿は甘かった。
そしてその色は赤く濃く変わっていく。
遠くから見ても色づく枯葉の中にあっても柿の赤は目に飛び込んで来る。
その色は種の保存をかけた柿の防衛本能なのであろうか。

鳥たちはその種を遠くに運んでくれる。
鳥たちに連れて行ってもらいたい真っ赤な柿たちは、私には私たち人間同様にも見える。
小さな世界、小さな社会のその中で周りより目立ちたく背伸びする。
私を見てくれ、と背伸びをする。
そんな世界をずいぶん見て来たように思う。
利己に凝り固まった頭は全体を見ることなく目先の自分の事しか見えない。
より良い結果を生むことは決して無いであろうに。
しかし、それは渦中の人間には分からない事なのである。
そんなことを卒業したつもりの私の目には、周りのそんな事がよく分かる。

柿の赤さは柿には分からない。
気付いた頃には熟し切って食べごろのタイミングを失っているかも知れない。
こんなことは経験であって、その経験の積み重ねで自身が気付いて会得しなければならないことなのかも知れない。

行き着く先が分かる私には見ているのは辛く、口を出したくもなるがこればかりは自身で乗り越えなければならない事なのであろう。

それも人間として生きて行くための営みの一つかも知れない。

頂戴した柿も色が濃く、甘い。

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