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生きるためにやって来た仕事のはなし

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なかなか理想を仕事とすることは難しいもの、食べるため、生きるためにしてきた私のサラリーマン人生です
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2022年5月の記事一覧

怖いと思ったこと その6 『雨を憶えている皮膚の記憶』

近年の降れば大雨、吹けば大風、自然災害とは言えどもこの国はいつからこんなに異常な気象を受け入れなければならなくなってしまったのかと思う。 私は大雨や台風が来るといつもゼネコン時代の現場での仕事を思い出す。 京都の南部の京田辺市、当時の綴喜郡田辺町に上場電機メーカーの社員研修施設を建設した。 会社は優良得意先の設計施工の物件で強力に力を入れていた。 夏の終わりに竣工した。 バブル期のどこも人手の足らない時代、建築職員は一人、また一人と京都各地の現場に散っていった。 最後

雨と匂い

雨の匂いが雨降りがやって来るのを教えてくれる。 大学に行く前に働いていた豊橋の魚市場。 水とは縁の切れない仕事ではあったが、頭の上から落ちてくる雨は誰もが嫌だった。 早い早朝の市場の駐車場は車はまだ少なく夜の空気で冷えたアスファルトがひんやりして気持ちよかった。 荷下ろしを待つ長距離トラックのアイドリングするエンジン音とともに流れ出る排気ガスの匂いは今も私の鼻孔に残っている。 そんなにおいと一緒に、いつも降り出す前の雨の匂いを感じていた。 「ああ、今日も濡れるな」と思い空

怖いと思ったこと その2

建設業界の営業マンはわりと怖い思いをしているかも知れない。 まずは、オーナーが個人から上場企業、官公庁まで、実にさまざまなのである。 そしてこのオーナーとの契約にたどり着くまでにサブキーマンのような存在が時々ある。 そんな存在はまあまあややこしかったりする。 『経験』という二文字で済ませてしまうがこんな人たちとの付き合いで気持ちや心をすり減らし、なかには命まで落としてしまう方までいる。 気楽にやって来たつもりであるが、ある意味命懸けの24時間365日の仕事だった。 このno