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時代に遅れだした事に気づいた老害の戯言:鬼滅の刃原作

こんにちは、Nestle(ネスレ)です。

鬼滅の刃、すごいですね。先日公開された劇場版の無限列車編は過去類を見ない大ヒットを記録しており、以前深夜帯で放送されたアニメがまさかのゴールデンタイムにオンエアされています。

かく言う自分もアニメを視聴し、鬼滅の刃に大変感動した一人です。劇場版も公開された週末の日曜日に見に行き、煉獄さんの背中に震え、猪之助の炭治郎への檄に泣かされました。まだ見てない人は是非劇場へ。

ということで、前置きはこのくらいにして本題に入ります。

鬼滅の刃がジャンプで連載が始まった頃、暗殺教室にドハマリしていましたし、食戟のソーマや僕のヒーローアカデミアなども大好きだったのでそれらを読む目的で、大学の研究室の先輩が買っていたジャンプをお借りしたり、立ち読みしたりで読んでいました。

その頃の私の感想としては、「絵が暗くて好きじゃない」でした。

しかし、ただ絵が暗い作品については今新作アニメが話題の「ひぐらしのなく頃に」、ジャンプで言えば「DEATH NOTE」や「GANTZ」などはメチャクチャ好きです。そう考えると絵が暗い、だけで判断したわけでは無いのだと思っています。であれば、なぜ当時ハマれなかったのか?

アニメを見た後、続きがどうしても気になったので原作を再度読むことにしました。ストーリーを一度しっかりと理解しているので原作をもう一度しっかりと読んで見ようと。しかし、読んだ感想は「あれ、これ、……ん?」だったのです。

衝撃的でした。誤解を避けたいのでもう一度述べますが、鬼滅の刃好きです。ストーリーラインは当然ですがアニメと同様に素晴らしい。炭治郎のセリフには心が沸き立つし、鬼の回想には同様に心を痛めて共感さえしてしまう。個人的には響凱の回想が好きです。

ただ、整理すると以下4点に対して苦手意識がありました。

1. 絵のクセが強く、顔の歪ませ方が個人的に苦手
2. 「~の呼吸」の技で何が起きているのかが分からない
3. 各話の間の時間軸が飛ぶように感じることがある
4. 話の展開が早すぎて、もう少し丁寧に描いて欲しいポイントが多々ある

3, 4点目は大体同じことを指していて、鬼滅の刃はとにかく展開が早いです。これまで自分が読んできた作品の中で群を抜いて展開が早い。個人的には作品の設定が細かく定義され、じっくり読ませるタイプの作品が好きです。展開が早すぎると細かいところの描写が気になってしまい「あれ?ここで何が起きたんだっけ?」と読み返すことになります。


この点について先日非常に興味深い記事を読みました。

鬼滅の刃がなぜこれだけ大ヒットしたのかを漫画編集者の方が丁寧に分析された内容で、ヒットした3つの要素をCut(削る)、Drip(抽出)、Emotion(感情ツール)の3つで説明されていました。

普通ならまるごと1話使ってもおかしくないエピソードを、途中経過を大胆にカットして1つの見開きで終えて次の展開へ移り、見どころを一挙に凝縮させることで1話に何度も見せ場を盛り込む。(Cut)

一方で詰め込みすぎるわけではなく、しっかりと見開きごとに「ここで何を伝えようとしているか」を一言で言い表す描写はしっかりと描く。(Drip)

そしてただテンポが良いだけではなく登場人物の動機、想いをわかりやすく伝えるために「回想」や「モノローグ(独り語り)」を多用して丹念に描く。(Emotion)

この3点をしっかりと抑えることで、TikTokのように15秒の短い動画で成立するようなコンテンツが溢れている現代においても読者を飽きさせず、置いてきぼりにもせず、ずっと離さないのだ。とこちらの編集者の方はまとめられていました。


すいません。僕はまさにその点に、ついていけませんでした。

編集者の方がまとめられている通りなのです。大胆にカットし、抽出する。これが鬼滅の刃の魅力であると。

ストーリーラインや要所要所のセリフは本当に素晴らしく、感動できました。ただ自分がなぜ原作ではダメでアニメで没入できたのかというと、まさにそのカットされた無駄な部分があったからこそ全体のストーリーに深みが出ていたのだと思っています。

アニメでは、漫画で全く描かれていなかったシーンがいくつも挟み込まれていました。モノローグで飛ばされていた修行パートを丁寧に描き、炭治郎たちが強くなる過程をしっかりと説明しています。また、見開き1つ、コマ1つで終わってしまう戦闘描写にもしっかりと動きをつけ、複数のカットで丹念に描かれることで非常に迫力のある絵になっていました。

上記の記事には「熱意だけで猪突猛進」というスタイルは時代遅れであり、この「鬼滅のCDEメソッド」がこれからの時代には重要だと述べられていました。

残念ながら重厚な描写が好きな私は時代遅れだそうです。

ただ人が立っているだけなのに、正面から、斜め後ろから、そして手だけをアップにする、みたいな描写が好きです。無言で佇んでいるときに引きの絵を空から、相手の視点から、そして横顔のアップ、のような描写が大好きです。もちろん、適当にカットを挟めばよいのではなく、それぞれに明確な意味、意図を持たせた上でにはなりますが、その1つのシーンを複数の角度から見せることで各登場人物の心理が言外に伝わる。そんな描写が大好きです。

ただ間違いなく、コンテンツの消化スピードはどんどん上がっていて、現れては消費されて消えるを繰り返しているように思います。誰もがコンテンツを発信できる今、YoutubeやTwitter、TikTokなどで見れるライトな娯楽は本当に溢れるようにあり、全てを楽しむことなんて絶対にできません。

だからこそ個人的には、娯楽に溢れた今だからこそ。腰を据えてじっくりと、丹念に緻密に描かれた作品を、何度も何度も噛みしめるように見たい。古い人間になってしまった私はそう思います。

ということで、もう一度鬼滅の刃の映画見てきますね!!今度は立川シネマシティの極上音響環境で梶浦さんと椎名さんの最強の劇伴を浴びてきます!!!

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