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おねショタ108式の105『スーツを脱ぐとき』

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「おのれジューナイツ! 今度こそ、今度こそぉぉぉ!!」
「何度来ても、私達はお前たちには屈しない!」
 爆散した巨大化怪人の核を抱え上げた【次元大臣】メガロスは、ローブを纏った頭足類の如き奇怪な姿を次元の亀裂に躍らせた。
 だが、騎獣戦隊ジューナイツのリーダー・レッドナイトは凛々しくもそう宣言し、巨大ロボ・ジューロイヤルの操縦席から堂々とそれを見送る。迂闊に深追いすれば、IQ400とも言われるメガロスが策謀張り巡らせた彼らの世界、冥獄界で返り討ちに遭いかねないからだ。
 しかし、いずれ。と言う気持ちは、レッド達5人の総意でもある。

「さあ、今日のところは基地に帰ろうぜ」
 その焦れる気持ちを払拭するように、ブルーナイトがそう言って操縦席の中の空気を緩める。
「もう夕方になっちゃいましたねー」
「今日の夕飯の当番は僕ですね。カレーでいいですか?」
「吾輩は構わないが、貴殿の当番の際はカレーが6連続……」
 とそれぞれホワイト、グリーン、ブラック。
 ギクッとするグリーンに、美味いからいいんじゃないか? とブルーがフォローし和やかに話していると、レッドが口を開いた。

「私は少しパトロールしてから戻るよ。夕飯が冷めないうちには戻る」
 そう言って、彼女はジューロイヤルから人型巨大ロボ・レッドメイルに分離して地上へと降りていった。

◆◆◆

「お疲れ様。お疲れ様です」
 今回の巨大化怪人の暴走で壊された街を、ジューナイツの上部組織である【財団】の作業機械が修復すべく早速走り回る。彼ら彼女らとすれ違うたびレッド……赤井美桜《あかい・みお》は労いの声を掛けていた。
 なお、彼女はレッドメイルからも降機しているが、未だ破損箇所の崩落を警戒して強化スーツ着用中である。
 その夕陽よりなお赤く輝く勇姿は、すれ違う一般隊員の心を熱くさせた。

 誇るべきトップ・オブ・トップ。赤色の正義。

 もちろん役職上は戦隊司令や技術顧問が上にはいるが、その彼らですらレッドに対してそう認識していた。

 ただ一人、彼女自身を除いては。

◆◆◆

 身体に張り付くようなデザインの強化スーツの表面に幾何学的な光のラインが瞬く。レッドナイトの腕力が瞬間的に増加し、数トンにもなるビルの瓦礫を素手で砕くと、そこには頑丈そうな扉が現れた。

 15式小型避難壕。
 大規模災害組織の引き起こす市街破壊に対応するため、街の各所に備えられた安全シェルター。そのうちでも一世代前の製品である。

 レッドナイトがスーツ前腕部に埋め込まれた情報端末を確認すると、その中には確かに一人避難者が居るはずだ。

「敵巨大化体の腕部スイングでコンクリート片が飛散。開放を阻害され、公園付属避難ユニットのうちこれだけが”本当に”開かなくなった模様。救出する。……訂正。『本当に』という部分を削除。
 ……今日も大暴れしていたからな。ちゃんと抑えられるように、ジューロイヤルの更なる強化を進めなければいけない……」
 彼女の言葉通り、何らかのトラブルで未開放となっているシェルターをチェックするのがパトロールの目的だ。極稀に戦闘員が残存しており、その討伐も含む。

 情報端末を操作しその扉を開けると、生温い空気が流れ出る。季節は秋だが、空調が最低限な上、閉鎖空間であったからだろう。

「……あっ! レッドナイトさん!」
 そして扉が開放されたことに気付いて、うとうとと微睡んでいた少年が弾かれたように顔を上げた。

「友達と遊んでたら怪獣が出て、避難誘導に従ってここに入って、なんでか僕だけしか居なかったけど、安全だって習ってたから、ちょっと怖かったけど、全然泣いたりしてないよ!」
 テレビ画面でしか見たことのない憧れの存在の登場に、少しだけ目尻を赤くした少年は息せき切ってレッドナイトに駆け寄る。年格好は初等学校の中ほど。現実にヒーロー存在し人々を守護するこの世界では、その人気は推して知るべしだろう。

 一方でレッドナイトは無言のままシェルター内に進み込むと、情報端末を操作して再び扉を閉鎖した。

「……レッドナイト……さん?」

 その無言の様子に不思議な圧力を感じた少年は、知らず半歩下がる。

「私はレッドナイト。赤井美桜と言うんです」

 首の後ろ、うなじにあるボタンキーを押し、騎士兜とネコ科動物の混じった意匠のヘルメットを除裝する。その口調は、先程までのレポートや隊員らに向けていた厳格な様子とは趣を異にする。

「赤色の赤に、井戸の井。レッドになるなんて思わなかったけど、不思議な符合ですね」

 手首周辺のブレスレット状になった多目的デバイス……先程の情報端末もこれだ……を操作し、腕から袖までのスーツを除裝する。

「そして、美しい、桜。で、あかいみお。下の名前にも色に関する字が入っていて、言わないけれどメンバーのみんなにはちょっと面白がられてるみたい」

 手首の除裝がされると残りの部位も自動的に緩む構造になっている。彼女はブーツを脱いで、出口近くの壁際に揃えた。自然と、更に一歩踏み出し少年を奥へ追い込む。

「ねえ、君のお名前は?」

 そして、パレオかミニスカート状の腰布が落とされ、後ろ開きにスーツが開放される。内部クリーン機能で汗は清浄化され、噴き出した水蒸気は美桜自身の濃く甘い体香をしている。

 少年の前にレッドナイト……否、美桜の一糸まとわぬ裸体が晒された。

【続く】

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。