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Mine&Industry #2

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 ゴブリンは数えてみると十二体……十二匹? 十二体でいいや。結構な大所帯だ。素手の奴の方が少なく、大半が粗末なナイフや棍棒などを持っている。

 一時停止した状態で考える。この能力の元になったゲームの戦闘は、基本的には自動砲台による防衛……つまりタワーディフェンスだ。その基準で考えれば、砲台さえ作れれば十二体という敵の数はさほど多い数ではない。ただし、このゲームシステムでは、砲台建築のための鉱物資源の採取・運搬・管理の要素が追加されている。
 そう、資源だ。最低ランクの素材は銅、鉛。次に石炭、砂あたりがセオリーだが、その確保は可能なのだろうか? 見たところ周りは一面の草原。鉱床の露頭などは見えない。
 その時、俺はとあることに気付く。考えている間視界の端に映していたゴブリンたちが、極めてゆっくりとだが動いているのだ。

(時間は完全に無制限ではないのか!?)

 この調子なら接触するまで気の遠くなるほど時間はかかりそうだが、完全にゲームどおりでないことに少なからず動揺してしまう。なにしろ、制限時間の有る無しは大きな違いだ。

 更に、幸か不幸かもう一つ気づく。

 丘の向こうの丈高く茂った草むらの中、ゴブリンからは見えないようにして、二人の女性が隠れていた。

(マップで赤くないから、敵じゃないよな? でも裏返せば、つまり、ゴブリンには攻撃されるんじゃないか?)
 そう思いながら観察する。一人はいかにもな剣士といった風の見た目で、俺より少し年が若い程度。分厚そうな革鎧を着け両刃の片手剣を手にしている。一方もう片方は少女と言って良い見た目で、簡素な鎧と短い杖を所持しているところからして、魔法使いか何かだろうか。
 そして、僅かにしか動きがなくても分かる程度に、消耗しきっていた。十二体ものゴブリンの相手にはいかにも心もとない。

(この子たちを守らないといけないのか……? こんな設定のステージ、ゲームには無かったぞ)

 そこまで考えたところで、ふと思う。ゲームと同じでないことはそればかりでは無いのではないか? と。

(あるはずだ。意識しろ。それが無いはずがない)

 そう内語しつつ、ゲーム画面と同一のはずの視界内を意識し、それ……施設設置ウインドウを探し出し、目当てのものを選択する。

 その名は【マシンドリル】。最も初歩的な施設であるが、だからこそこれがなくちゃ始まらない。そしてそれは”採掘資源の有る場所”にしか設置できない。

 泥の中のような緩慢な動きの二人の近くで、設置不可を示す赤みがかった半透明状態のドリルユニットを動かす。この表示が変われば……そう祈るような心持ちでスライドささていくと……

(ここだ!)

 ついに、ドリルユニットの表示が無色半透明に変わった。そして採掘可能資源は……基本資源の銅だ!

【続く】

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。