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おねショタ108式の91『ランプの影のエメラルド』

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大陸の東西が繋がり始めた時代のはなし。

主人公はまだ少年と言えるほど年若い冒険者。
騎士の国から、使命を帯びて仙術の国へと旅をする。

難所である砂漠を越えるため、砂漠の縁を往く隊商らに従い、巨大な一枚岩の都市へと辿り着く。
そこは騎士の国とも仙術の国とも違う文化を持つ都市である。


潤沢とは言えない懐事情のため、少年は都市の中では隊商らと分かれ、別の宿を探す。
しかし目ぼしい宿は既に埋まっており、夜遅く、ようやく小じんまりとした宿を見つける。

彼を驚いたような顔で迎えたのは、見たことのない色の肌、見たことのない色の髪、そして見たことのない色の瞳をした女性。
その宿を切り盛りする女将である彼女は、お腹を限界まで空かせた一人だけの客、少年のため、様々な料理を供する。

ひたすらに食事に没頭していた少年は、いつの間にか女将が姿を消していることに気付く。
探す少年の目に、食堂の前方に設けられた舞台が映る。

腰を、身体を、玄妙に動かし魅惑する舞踊。
薄布に覆われた肌を、幻想的な灯りが照らし出す。

少年の周りの薄暗がりの世界は完全に闇へと変じて、ただその舞台上の女将……踊り子だけが世界の全てとなる。
そして、舞台からふわりと降り立った彼女は少年を誘い(いざない)……

明朝、少年と隊商らは巨大な"何もない"一枚岩の洞窟で目を覚ます。
あれは夢か幻か。しかし皆、気力体力共に漲っていた。

不思議な出来事に首を傾げる彼らだったが、少年の手には一粒、あの女性の瞳と同じ色のエメラルドが握られていた。

資料費(書籍購入、映像鑑賞、旅費)に使います。