ビートルズの邦題のはなし


私が最初にビートルズを聴いたのは、レコードでもCDでもなく、Apple Musicでだった。

今もそうなのかは分からないが、Apple Musicでビートルズを聴くと全てのタイトルがカタカナになり、ひどく読みにくい上にすごくダサかった記憶がある。

しかも何故かちょこちょこ日本語のタイトルがある。…邦題がついている曲もあるんだ、当時はその程度にしか思わなかった。

ただベスト盤ではカタカナ表記なのにオリジナル盤では邦題…などの整合性の無さに限界を迎えて、無料期間終わった瞬間にApple Musicは解約した。Android端末使ってるから相性も最悪だったので。

ちなみにSpotifyは全て英語表記なのでオススメ。みんなSpotify使おうよ!笑

ということで今日は、ビートルズの邦題を分類してコメントしていこうと思う。激しめのディスりも入るが、これは全て愛ゆえなので暖かく見守ってほしい。怒らないで…。


①ダサすぎるしどうかしてる

・A Hard Day's Night→ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!

まずはかなり有名なこの曲。

この邦題を最初に知ったときに笑わなかった人はいないと思ってる。何がヤァ!ヤァ!ヤァ!だよって思いません?これじゃドリフやダチョウ倶楽部って感じだよ!いくらなんでも原題をないがしろにしすぎでしょ。笑

同名の映画が同時期に公開されてるんだけど、どうやらその映画のタイトルが別のビートルズの映画と間違って伝わる→それを訳す→そのまま映画、アルバム、曲のタイトルにって説があるらしい。

あと、ダサさを全力で助長しているヤァ!ヤァ!ヤァ!に関しては、ドイツとかで同じ映画が公開されたときに、A Hard Day's Night YEAH!YEAH!YEAH!ってタイトルに付いてたところから拝借してるようで。

…せめてイェイ!イェイ!イェイ!とかに出来なかったのかな。She Loves Youとかを聴けば、明らかに発音がヤァじゃないことは分かると思うんだけど…。


・Help!→4人はアイドル(アルバムタイトル)

日本人もみんな知っている、なんでも鑑定団でも使用されている曲。

曲自体はHelp!というそのままのタイトルで日本にやって来たのだけれど、アルバムと映画のタイトルだけ謎邦題になってしまっている。ビートルズがアイドル的人気を誇っていたのは分かるよ?でもアイドルだったっけ?

Help!には、この人気の中で自己を失っていくことから助けてほしい!というジョンの叫びが込められてるんだけど、それが表題曲のアルバムに、4人はアイドルなんて邦題をつけてはまずいんじゃないかと思う。多分アイドルから脱したかったんだよビートルズは!(過激派)

当時の日本人は、Helpと4人はアイドルという意味の違いに驚かなかったのだろうか…。Helpの意味はさすがに知ってるよね…。

とんでもない邦題がついてるのはこの二つくらいだから、ビートルズの映画の広報担当が暴走してたってことだと思ってる。他の邦題は、さすがに曲の意味を理解して付けていそうなので。

ちなみにこの二つ、どちらも現在では邦題が使われなくなっている。それ、半ばダサいことを認めてるよね?


②多分誤訳だと思うんだ…

・I Want To Hold Your Hand→抱きしめたい

初期の大ヒット曲。

タイトルを見れば分かるんだけど、抱きしめたい、じゃなくて手を繋ぎたい、のはずなんだよね。

正直、手を繋ぎたいだとダサいのは分かる。抱きしめたいの方が凄く響きはいいし、頭に残るタイトルだとは思う。だからと言って、手を繋ぐと抱きしめるを同義扱いしてタイトルにしちゃうのはちょっとおかしくない?関係性、発展しすぎじゃない?笑

曲の雰囲気としては誤訳っぽくないんだけど、歌詞を見るとやっぱり誤訳かなってニュアンスを感じる。抱きしめたいって連呼してるのはさすがに面白すぎるよ。

にしても、日本語は滅多にタイトルに主語をいれないから、余計訳出には苦労しそう。日本語ってひとつの意味を込めるのに文字数を食うからなぁ。じゃあなんで邦題をわざわざ付けたの?って感じなんだけど…。


Norwegian Wood→ノルウェーの森

村上春樹のせいでバイアスがかかってしまった曲。私の脳内では『ノルウェイの森』のイメージソングになってしまったので悲しい。やれやれ。

私が語るまでもないようなことなんだけど、Woodを森と訳すのはほぼ確実に誤訳である。the woodは森と訳せるんだけど、woodの場合は木材としか表現できないとのこと。

まぁ歌詞を訳してみても、ノルウェーの森と訳してしまうと、『彼女といた家はどこに行っちゃったの!?』って感じだしね。森でテント生活でもしてるような訳になっちゃうから…。それなら、ノルウェー産の木材だとかノルウェー製の家具、と表現した方がまとまりが良い。

ただね、これに関しては『木材』の意味と『森』の意味が同時によぎるWoodという言葉をそのまま残す…つまり邦題を付けないのが最適だったんじゃないかなぁ。ダブルミーニングまではいかないけど、日本語じゃ表せないニュアンスが存在していると思う。

曲調からはどことなく、森林にいるような感じがするから、それを汲み取った点では綺麗な邦題だよね。


③これはすごいと思う!

・Ticket To Ride→涙の乗車券

先ほど激しくディスったHelp!の収録曲。イントロが印象的だね。

この曲の邦題は秀逸だと思う。だって直訳しちゃったらただの乗車券だ。乗車券ってタイトルの曲を出されて、聴きたい!って思う日本人はあまりいないだろう。

基本的には意訳するタイトルはあんまり好まないんだけど、これに関しては上手いなぁと。涙という歌詞は出てこないんだけど、彼女が出ていってしまって悲しい、という歌詞だから、涙の乗車券という邦題は的確だと思う。

日本語の語感と上手く合わせられてる感じが好きだ。歌詞自体はそんなにしめっぽくなってる気がしないから、それと照らし合わせると少しだけ違和感があるのが唯一の微妙ポイントだけど…。まぁ、ビートルズの皆様なら大層モテるから女の子選び放題ですもんね…。笑


・All You Need Is Love→愛こそはすべて

たぶんビートルズを知らなくてもこの曲は知ってるよね、って曲。フランス国家がイントロで使用されてるの、初めて聴いたとき驚きませんでした?

これはね、うだうだ語りたくないレベルで断トツ優勝だと思ってる。直訳してしまうと、『あなたの必要とするすべてのものは愛だ』みたいになってしまう。これではダサい。かといって原題のままでは伝わりにくい。(当時の日本人の英語力を流石に下に見すぎている可能性はあるが)

このタイトルを、愛こそはすべて、という非常にまとまりも響きも良く、原題の意味を傷つけずに訳したのは天才だと思う。この英語を見て、スッとこの邦題が出てくるとは思えない。少なくとも私には無理。笑

曲の冒頭、Loveと繰り返していることからも、テーマは愛であることもすぐに分かるし、むしろイメージを強める邦題だ。

これからもずっと、愛こそはすべてという邦題は生きていてほしいな。…まぁ私、Spotifyのヘビーユーザーだから、邦題を目にすることは殆どないんですけど…。笑


終わりに

散々邦題に対してケチをつけてしまったが、それでも洋楽に馴染みのない日本人にこれほどビートルズを聴いてもらうことができたのは、邦題があったからだと思う。

当時日本での人気がこれほどなかったら、私も一生ビートルズには出会わなかっただろうしさ。本当に邦題様々です。

ダサい邦題も綺麗な邦題も、そう考えると嫌いにはなれない。だからと言って、邦題付ける文化が残っていてほしいとは微塵も思わないけれど。笑


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