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M-1グランプリ2021 全組ネタ感想記
前置き
(※合計約12,000字の物好き用の記事です。)
私が1年で最も楽しみにしている行事の1つ、M-1グランプリ決勝戦。
M-1決勝の日を出来るだけまっさらで楽しむために、もうそれ以外で若手芸人のネタを見る回数を敢えて減らしているほどに好きだ。
今年はM-1グランプリの公式youtubeで予選の動画がたくさん上がっていたが、敢えて1本も見なかった。
というのも知っているネタがM-1グランプリの敗者復活や決勝で披露されると「あれ?前見たときはここで大爆笑が起こってたんだけど、思ったほどウケてないな。大丈夫かな?」とか「なんか前よりテンポが速いな」とか余計なことが気になるからだ。
M-1決勝は、一度も舞台に立ったことなどない素人なのに、偉そうに審査員ごっこをやって、審査員の点数が出る前に自分で採点して楽しんでいる。2018年大会から毎年やっている。
こうすることで緊張感と集中力を高めて大会を見ることが出来るし、後からいろんな人の感想を見るのもとにかく楽しくなるからだ。大会自体が忘れられない思い出になる。
点数は自分の好みとお客さんのウケ度合から複合的に付けている。
これまで点を付けるとき全体的に平均点を低めに付けてしまっていたので、今回はちょっと基準点を上げてみた。
これまでは85点くらいが何となくの基準だったけど、今回は90点を基準に付けてみた。今のM-1決勝だと80点台自体、低得点の部類になっていると感じたからだ。ちょっと前は85点以下が低得点って感じだったけど。
感想に移る前に1つ思ったのは、ここ何年かのM-1決勝は、最終決戦に進出するトップ3以外、順位にほぼ差などないように感じている。
4位と最下位に強烈な開きを感じることが本当にない。初期のM-1は本当にほとんどウケなかった組だっていた。M-1決勝最下位などかなり屈辱的な称号だった気がする。
だけど最近は本当にスベる組がいない。今年もそうだった。終わって順位表を見て「あ~あの組が結果的には最下位ってことになっちゃったのか」って感じ。今回のモグライダーの8位など、いくらトップバッターだったとは言えど信じられない。
お笑い界のレベルが高くなっているのか、予選の審査の妥当性が高まったのか分からないが、とにかくより良い大会になっているということだ。
それでは各組の感想と採点結果を書いてみようと思う。
1.モグライダー
とにかくトップバッターであったことが悔やまれる。トップバッターであることを感じさせないほどウケていた。
今回最終決戦に進出した3組は文句なしの3組なんだけど、モグライダーは出順が終盤だったらほんとに上もあったんじゃないかなと思ってしまう。
今回のM-1グランプリ、最終的にはニュースター誕生というよりは既に売れつつある組に箔が付くような結果になったけど、10組の中だとモグライダーが一番来年以降売れていくんじゃないかと思った。
まずさそり座の女は当てずっぽうで星座と性別を当てようとした輩がいるって発想が面白い。それでそんな訳の分からない無邪気な輩の役がともしげさんにしっくりきすぎていた。
ツッコミの芝さんが本当にテンポもトーンもワードもものすごく的確で良かった。ともしげさんの感じから、ともすればとっちらかったネタになりそうなところ、見る側が置いてけぼりにならない整備された漫才になっているのは芝さんのツッコミのおかげだろう。
なんとなく見た目からもツッコミの声からもアンタッチャブルの柴田さんを彷彿させる感じ。見ていて心地の良い漫才だった。
ともしげさんが赤ジャケット白シャツだと、新宿カウボーイのかねきよさんと被ってしまうのは私だけだろうか。
採点:93点
特に印象に残ったフレーズ:頑張れねぇ奴が神社行っても意味ねぇだろ!
とにかくめちゃくちゃ良かった。トップバッターに付けられる最高得点を付けた。
トップバッター不利問題
トップバッターが最終決戦に進めるような回は、大会全体で見れば尻すぼみということでもあるから、何とも難しい課題である。
私は新鮮な目で見た方が審査もしやすいだろうとずっと思っていた。
ただトップバッターをはじめとする序盤組の採点を考えると、審査員全員が準決勝のネタを事前に見ておいた方が良いのかなとも考えた。そうすれば何点まで付けても後の審査が困らない組か何となく頭に入れることが出来るから。
そうしないと今のままでは序盤に登場する決勝未経験組があまりにも不利だ。審査員自身も基準点を付ける苦しさがあるように思う。
これまでトップバッターで高得点を出した組もナイツや笑い飯と実績十分のコンビ。
ここ数年の大会のようにほぼ一組もスベらないハイレベルな決勝では、何かが今と変わらないと、トップバッターが優勝候補ではない限り最終決戦3組に残ることはほぼ不可能なのではないかとも思う。
2.ランジャタイ
そのあまりに独特の世界観は決勝で信じられないくらい大ウケするか、目も当てられないほどスベるかのどちらかだと思っていた。とりあえずランジャタイがM-1決勝に進出するって時代が来るところまで来たなと思った。
ランジャタイが決勝に進むM-1というのは、かなり公正な大会にも思えて素晴らしいとは思う。一方で大ハネした場合、「漫才とは?」論争が昨年以来またしても繰り広げられてしまうのかという要らぬ心配をしていた。
それが意外や意外といったらあれだけど、普通にウケていた。会場全体がランジャタイワールドに巻き込まれたような大うねりではなかったものの、普通に面白いネタとして受け入れられていた感じ。
なんというかランジャタイのネタは見る側が試されているネタにも思う。
というのも伊藤さんの立ち位置がツッコミというより困惑なので、見る側が頭の中でどれだけ国崎さんにツッコめるかみたいなところがある気がする。ピン芸人だとこのパターンはよくあるように思うんだけど。
あんなくだらないものを伊藤さんが、なんだかんだしっかり理解しようとしながら聞いている様は面白い。
それでも前ランジャタイのネタを見たときより、伊藤さんが割とちゃんとツッコんでたなと思ったし、多分ムーンウォークの件あたりもM-1用に尺が短くなってるんだろうなと思った。
馬鹿馬鹿しすぎてM-1の華やかな舞台が似合わないネタ(褒め言葉)。今回の予選10組で一番日本語が分からない外国人でも笑いそうなネタ。
全然関係ないけど、二人ともあたしンちに出てきそうな見た目だよね。
採点:90点
特に印象に残ったフレーズ:ニャンちゃんかあなたかどっちなの?
ランジャタイの決勝進出が決まった時点で、今回ばかりは審査員ごっこをやめようか迷っていた。それくらいどう評価していいか分からない存在で、案の定ネタ終わりの後審査員たちがわかりやすく頭を抱えていた。
普通にウケるにはウケていたというのも審査員泣かせだったように思う。
松本さんの「見る側の精神状態による、自分の体調を知るためには良い漫才」というのがあまりにも的確な表現だった。
その後もイジられ続けて今年の大会に間違いなく絶大な存在感を残し続けた。
3.ゆにばーす
ゆにばーすのネタの感想で迂闊なことを言うと、川瀬名人に論破されてしまいそう。
過去2回決勝進出したときや、決勝進出しなかった年の敗者復活戦などと比べるととても洗練された完成度の高いネタに見えた。これまで見たゆにばーすの漫才の中で一番面白いと思ったくらい。
2人ともジェスチャーというか動きの様が面白い。川瀬名人あんなスタイル良かったっけ。シルエットだけだと粗品さんっぽい。
ちょっと気になったのは、このご時世でガッツリセクハラ要素のあるネタなのはヒヤヒヤした。
笑いどころ以外の川瀬名人のセリフにそういう要素が結構入ってので、「そんなん言うたらあかん顔やろ!!」的な脳内ツッコミが入ってしまった。
男女コンビである強さが活きたネタでもあるんだけど、もう少し世間の目が厳しくなってくるとこの種類のネタは厳しいのか。紅一点の上沼さんが94点で高得点だったから私が気にしすぎなのか。
そんな内容でも生々しさをあまり感じないのは、はらさんのキャラクターの強さも感じた。
採点:92点
特に印象に残ったフレーズ:「コロナ賛成派」⇒「そんなやつおらんわ!」
4.ハライチ
敗者復活からとにかく攻めた、自分たちのやりたい斬新なネタをやってるなって感じだった。面白かったに加えてカッコよかった。ロックだった。2015年の敗者復活でナイツが披露した吉幾三のネタを思い出した。
私は敗者復活は男性ブランコ、金属バット、ハライチに投票していた。私の中ではこの順位だった。2組はすんなり決めて、3組目は悩んだ末のハライチだった。結果的にここは綺麗に上位3組だった。
決勝進出は男性ブランコか金属バットか読めなくて、コアなファンの付き方から金属バットの方が有利かなあと思っていたくらい。ハライチは好みが分かれそうなネタだったのもあって決勝進出はしないのかなとも思った。
だからこそハライチ決勝進出にはびっくりした。ラストイヤーだし、知名度十分のコンビだし、ちょっとタイムオーバーした件もあり、どうしてもとやかく言われてしまうところがあるとは思う。
ただ他にも人気組がいる中あの日の出来で金属バットと男性ブランコがトップ3に入っているのは、どう考えたって国民は大真面目に審査をしているとしか思えない。
そこで1位を取ったのだから凄い。タイムオーバーもとやかく言われるけど、それで1,2個件を増やしたならともかく、あのネタの終盤の感じ、オーバーしたのがズルって感じでもなくてそれほど気にならなかったんだけどな。
敗者復活の話で延々出来てしまいそうなので一旦ここまでとする。
そんなわけで敗者復活と同じネタを披露するのかなと思ったら全然違うネタ。これもまたロックなぶっ飛んだネタ。
なんとなく去年のおいでやすこがとマヂカルラブリーの吊り革のネタを思い出す部分もあった。
これまでのハライチがフリになっているというか、岩井さんがボソボソ澤部さんに振り続ける漫才しか知らない12年前のお笑いファンがあのネタ見たらひっくり返るんじゃないのか。
とにかく面白かったと思ったし、やりたいことをやってM-1ラストイヤーをエンジョイしているのが伝わってきた。順位だけで見ると結果9位だけど、全然屈辱的な結果なんかじゃないように思えた。
あまりにも爽やかで、岩井さんもう腐り芸人から卒業しちゃうんじゃないのかと思ったし、今後のハライチが楽しみになった。
特に印象に残ったフレーズ:なぁいてるのかぁ~?
採点:94点
会場が随分ウケていたようにも見えたので、点数を少しプラスした部分もあったんだけど審査員の点は思ったほどは伸びず。結果的になんだけど今大会は全組ウケてたからお客さんウケで点を判断するのは難しかった。
上沼さんがハライチに98点を付けたことの感想は、後で書く。
5.真空ジェシカ
個人的には今回トップクラスに面白かったと思った。
「これ隣町の地図。踏めますか?」「あ、僕初日しかないんで」、「好きな法律だけ守ってもらえば」、「今年初笑いだ」、「僕のせいで今年の駒澤がナメられている」などなど全ボケ全ツッコミがツボにハマって、最初から最後までずっと安定して面白かった。何度か見返しても飽きずに笑ってしまう。
途中のミッキーマウスの件、2008年にダイアンがサンタクロースのネタをやった時みたいなヒヤヒヤ感を感じたんだけど、オチが平和的でなんかホッとした。
ここまでの出てきた組の中では突き抜けて面白かったようにも思えて、もっととんでもない高得点を叩き出すのかなと思った。真空ジェシカの漫才をこれまであまり見たことがなかったけどフアンになった。
特に印象に残ったフレーズ:貴重な5秒を罪人(つみんちゅ)の説明に使ってしまった。
採点:96点
ネタ中はそんなこと全く思わなかったけど、審査員の採点結果を見て、あれは私のような20~30代の大卒の人に著しく刺さるネタだったのかなとか勝手ながら思った。真空ジェシカが2人とも大学お笑い出身なことも影響してるのかな。
確かに「理系のおばあちゃん初めて見た、おばあちゃん大体文系だと思ってた」とか20代男性はゲラゲラ笑うけど、50代後半の松本さんや60代女性の上沼さんが同じように面白く感じるかというとどうなんだろう。
江夏に「僕世代じゃないんで」も思えばネタ中考えもしなかったけど局所的にしかウケないフレーズなのか。その後出てきた阪神の川尻ってチョイスもまあ絶妙なんだけど、野球好きに極端にウケるネタだったような。
そうは言っても、そういえば審査員の塙さん、礼二さん、富澤さん、志らくさん、巨人師匠揃いも揃って野球好きだった。偏ってるな随分と。
あそこは川尻じゃなくて松坂大輔だったら、野球好き以外の知名度もあってもっとウケていたような気もする。
だけど敢えてそこで川尻を選ぶ真空ジェシカだからこそ、個人的にはめちゃくちゃハマったのだろう。
6.オズワルド
今回は元々優勝候補には挙げられていたけど、ついにM-1決勝の舞台で評価されたかと嬉しくてたまらなかった。
個人的にはオズワルドに2019,2020と2年連続でトップ3入りの点数を付けていて、特に昨年などヒティニキのネタが好きすぎて、なんであれで最終決戦に行けないんだろう…と思ったほど。
今年は順番も良かった。去年はおいでやすこが、マヂカルラブリーの後、一昨年はミルクボーイの後と場の空気がかき回された直後に順番が来ていて気の毒だったから。
ここまで審査員が満場一致で高得点を出した組もあまりなく、オズワルドが流れを作れるんじゃないかなという感じがあった。
掴みから完璧だった。去年一昨年はシュール全開の出だしだったのを思うと随分変わっている。
途中から畠中さんが本当にそういう妖怪に見えてくるという凄さもあった。
2019年のオズワルドは相当ゆっくりマイペースなテンポでネタをやっているイメージがあって、それもそれですごい魅力を感じた部分ではあったんだけど、前よりテンポがよくて、笑いどころが増えている印象もある。なんというかお客さんの理解も追い付きやすいネタになってるのかな。
採点:95点
特に印象に残ったフレーズ:2時間くらい待った時気付いたんだけど、俺友達なんていなかったんだよね
7.ロングコートダディ
「俺来世はワニになりたいんだよね!」っていう方がボケじゃないんだもんな。
天界全体を演じるとか、来世肉うどんとか、世界観独特すぎるんだけど、なぜかすごくキャッチーで理解できるという。天界が簡単に想像できたもんね。
個人的に肉うどんの後の人の来世が気になって、「僕の後ってどうなってるんですか?」ってツッコミが入るものだと思ってたんだけど、最後まで入らなったね。「お前」より気になったんだけど。
1回目見たときは気付かなかったが、このネタ明確なツッコミのセリフがオチまでないんだって2回目見たときびっくりした。兎さんの顔芸だけでツッコんでるというのもすごい。
採点:92点
特に印象に残ったフレーズ:ラコステ あっワニ!違うわ
8.錦鯉
今回不思議とまさのりさんが会場に向かってるシーンが本当にカッコよく見えた。なんかハリウッド俳優みたいに見えて。
個人的には錦鯉1本目の中盤以降が今回のM-1の全ネタの中で一番笑った気がする。
好きなアルファベットのあたりから全てがめちゃくちゃ面白く感じるゾーンに入っていた。特に嫌いなイスの件が好きで、今週中何度か思い出し笑いをしてしまった。
あの掛け合いの心地よさと会場のウケの加速、2008年オードリーの引っ越しのネタの終盤と重なった。
一見まさのりさん一強の芸に見えるんだけど、ツッコミの渡辺さんの力量があまりにも凄い。奇抜なワードや例えツッコミを使わないで、渋い声であんなに面白いってのが本当に凄い。全ツッコミ芸人の憧れの的になるんじゃないのかこれから。
ほんとにお客さんの心の声を絶妙なタイミングで声にしているというか、トーンや間の使い分けがものすごい。サンドウィッチマンの伊達さんと良い意味で重なる。やっぱりツッコミが言いたいことを言ってくれている漫才は本当に安心して見れる。
あの終盤の畳みかけがあまりにすごかったものだから、前半実は笑いの量が多くなかったというのがそれほど気にならなかった。2周目見たときに「あれ、前半こんな感じだったっけ」ってなったくらい。
実は去年のパチンコのネタが個人的にはあまりハマらなかった。
だからこそ今年の合コンのネタはめちゃくちゃ面白く感じたし、今回序盤あまりウケてないのも、見ていてそんなに引っかからずに済んだのかもしれない。
採点:98点
特に印象に残ったフレーズ:みんなはさ!!嫌いなイスってある!?⇒ねぇよ!嫌いなイスなんて!⇒俺は電気イス!!⇒みんな嫌いだよ!!!
最上級の評価。この時点で1位じゃなかったけどなんか優勝ありそうだなと思った。
9.インディアンス
昨年の感想でも書いたんだけど、以前私はインディアンスの漫才があまり好みではなかった。見ていて置いてけぼりになってしまう部分があって、どこか田渕さんの空回り感を感じてしまう部分があった。
それが昨年のM-1を通してガラリと印象が変わった。
なんというか前は一方通行のボケと困惑って感じでやかましさが目立ってしまう印象があったんだけど、年々程良いバランスになっていっているように思う。ツッコミのきむさんがちゃんと田渕さんを制止しようとしている感じが出ているのが良いのかな。それとも単純にこっち側がインディアンスのネタを見るのに慣れたのか。
特に楽天モバイルの件がめちゃくちゃ面白かった。田渕さんの「楽天モバーイル」がええ声すぎて面白かった。我々が日々いかに楽天モバイルのCMを見せられているのか身に染みて分かった。来年あたり楽天のインフォマーシャルを任されてたり、米倉涼子さんとどこかでコラボしてもおかしくない。
2018年の霜降り明星も「楽天カードマンの言い方!!」ってツッコミで大ウケしてたし、楽天がM-1のスポンサーをやりだす日も遠くないのかもしれない。
そりゃあれだけいろんな種類のボケをやれば、どこかハマる可能性は高まるよなとは思う。
ただもう十分すぎるほどボケているわけだから、もう少しテンポをゆっくりにしても、十分なボケ数になると思うし、より多くの人が置いてけぼりにならずに、理解してもらいやすいネタになるように思うなあとは。
採点:94点
特に印象に残ったフレーズ:恐怖心のやつ 東京行ったらしいな
松本さんが言ってた「拍手笑いが待ててない」という感想は、2本目を見るときやけに意識してしまった
10.もも
なんか桃鉄のお笑い劇場のイベントに出てきそうなコンビ名。せめる。、まもる。っていうかわいらしい芸名含め。
芸名に「。」が入るモーニング娘。スタイルはどうやら画数が良いかららしい。
個人的には何となく見取り図の言い合いパートみたいだなと思いながら見ていた。あおり運転の申し子とか熱中症の櫻井翔とか言い合ってたあれ。
それにしても「○○顔やろ」だけでネタが成立して、しかもウケ続けているというのは凄い。終盤になるほどウケが加速してたし。
本番ではどうしても最終決戦当落線上の錦鯉、インディアンスと比べて見てしまうところがあったけど、2回目改めて見ると本当にやり取りのテンポが心地良い。結成4年目の28歳でこれというのは凄い。ずっと聴いていたいような漫才。
今大会でみんなネタの見方が分かったから、来年以降もっと面白く見れるのではないかと思う。あの松本さんに「僕ら来年優勝するんで」ってサラッといえるメンタリティも凄い。
採点:91点
特に印象に残ったフレーズ:チャンピオンベルト顔やろ!
チャンピオンベルト顔があまりにもしっくりきて、最後の審査員コメントのところ、ほんとにボクサーのインタビューみたいな感じで見てしまった。
まもる。の方が「なんでやねん!せめる。顔やろ!」と思ってたけど、チャンピオンベルトは防衛してそうだった。
僕-1グランプリ2021まとめ
(出場順)
モグライダー:93点
ランジャタイ:90点
ゆにばーす:92点
ハライチ:94点
真空ジェシカ:96点
オズワルド:95点
ロングコートダディ:92点
錦鯉:98点
インディアンス:94点
もも:91点
(点数順)
錦鯉:98点
真空ジェシカ:96点
オズワルド:95点
ハライチ:94点
インディアンス:94点
モグライダー:93点
ゆにばーす:92点
ロングコートダディ:92点
もも:91点
ランジャタイ:90点
やっぱり1組目に高い点数にすると点数幅を付けるのが難しいんだなということを痛感した。昔のM-1は全然70点台もあったわけだから、LIVE-DAMの精密採点DXくらいの点数感で出すのがちょうど良いのかな。
そうはいっても本物の審査員の方も今や90点台が当たり前すぎて、得点発表の時80点台のシルバーの表示が逆に目立ってしまっているくらいだから、何とも基準が難しい。
ちなみに個人的には上沼さんが極端な高得点を出すのは、志らくさんが斬新なネタに極端な高得点を出したときに発動しているのかなと思っている。
ハライチの98点にはさすがにびっくりしたけど、志らくさんもランジャタイに96点を出しているわけで。
前上沼さんが極端な採点をしていたのは2018年だけど、その時も志らくさんがジャルジャルの国名分けっこに99点、トムブラウンのナカジマックスに97点と斬新なスタイルのネタに極端な高得点を付けている回だった。
7人も審査員がいるわけだから点数に個人の好みの色は出て当然だし、出すことを求められていると思う。誰の採点もおかしいとは思わない。
結果1人の影響でそんなに大幅に順位が変わる事があることはないはずだし、もし1人の採点だけが順位を大きく左右してしまうのであれば、逆にそれは点差をあまり付けていない人に責任は行くべきな気がしている。
そういった意味では好みで著しい高得点を出す志らくさんを踏まえて、上沼さんもご自身好みのネタに著しい高得点を付けるというのはかなり理にかなっているし、責任を果たしていると言える。
しかも最終的に上沼さんは98点~88点の採点幅、志らくさんは96点~89点の採点幅で採点をしたわけだから何も他の審査員と比べてそれほど極端ということはないし、私は上沼さん及び志らくさんの審査基準が変だとは思わない。
最終決戦は点数もつけず気楽に見る。
最終決戦1.インディアンス
まず前提として、私はインディアンスは面白いと思う。たしか最終決戦のネタでもゲラゲラ笑った。
その上でだが、今回振り返るとき「2本目ネタのテーマなんだったっけ?」「あれあのボケは1本目だっけ?2本目だっけ?」となってしまった。錦鯉とオズワルドにそんなことはなかった。
これがインディアンスのネタの本筋そっちのけでひたすらボケ続けるネタの弱さというか、「結局何のネタをやっていたのか記憶に残らない」というところがどうしてもある。
要所要所のボケは確実に面白い。見ていて楽しい。
劇場で見る分にはきっと素晴らしいネタだと思うし、塙さんが言っていた通り「全M-1出場者の中で一番漫才がうまい」というところになるんだと思う。
なんだけど、この「結局何だったんだあのネタ」感が解消されないとM-1グランプリで決勝には出れても、優勝するというのは難しいのかなという印象を受けている。逆にそこさえ解消されれば優勝がめちゃくちゃ近いんじゃないかなとも思った。
でもその表裏一体がインディアンスの強みでもあるんだろうからなあ。
二人ともお笑いに真摯に向き合っていることは伝わるし、もしかしたら彼ら自身が一番悩んでいる部分なのかもしれない。
特に印象に残ったフレーズ:ほぼ、ホイコーローなんですよねぇ… ウィーン
最終決戦2.錦鯉
「どうせみんな、こうなるんだよ!」で始まり「Life is beautiful!」で終わる。最終結果を見るとこの最初と最後はあまりにも美しくてよくできている。
もう各所でいろんな人が褒めているけど、渡辺さんの「じゃあいいじゃねぇか」のタイミングがあまりにも絶妙で、あそこで優勝が決まったといっても過言ではない。
そのあとの寝かせ方の説明が異様に丁寧なところも面白かったし、まさかあそこが伏線回収になってるとは。なんかあの感じも凄い良い意味でサンドウィッチマンのネタを思い出した。
その後のバナナの件も、同じことの繰り返しでなぜあんなに面白いのか。
富澤さんの「これ笑う以外あります」というのがまさしくの感想。優勝しそうな瞬間最大風速の吹き方をしていた。
特に印象に残ったフレーズ:じゃあいいじゃねぇかもう もう終わり
最終決戦3.オズワルド
このネタ、今大会全ネタの中で唯一見たことがあるネタだった。
今年7月ABCお笑いグランプリの決勝で披露して優勝を決めたネタだった。だからネタの入りを見て「あ~これでウイニングラン決めるか」と思った。
ところが、なぜかお客さんが思ったほどウケない。たぶん本人たちも大きな笑いを期待しているだろう箇所で大爆笑は起こらない。
純粋に楽しみたいのにどこか「あれ?前見たときほどウケてない。大丈夫かな?このネタこんなウケないネタだっけな。」と余計な目線が入ってしまった。大スベりではないものの明らかにハマりきっていないことが伝わった。
改めて2周3周見てみたけど、普通に面白いネタなのだ。なぜあんなに失速したのか分からないほど。
あれを2009年の笑い飯やKOC2015のロッチと同じに括るのは違うと思う。
個人的には以下2つの要素が大きかったのかと勝手に思っている。
・優勝フラグが立ちすぎてて、お客さんが変に緊張して見てしまった。
⇒結果お客さんの方が硬くなりあまりウケず、本人たちも動揺してしまった。
・底抜けに明るいバカ(インディアンス、錦鯉)の後だと、飄々と頭おかしいクールバカがハマりにくかった
いずれも超高得点の1位で最終決戦を迎えてしまったからこそ、不利な空気になってしまったという、何とも気の毒なことが起こっていた可能性がある。
特に順番がインディアンス、錦鯉の後というのは、彼らのスタイル的に考え得る限り最悪の順番だったように思う。底抜けに明るい2組の後だと、オズワルドのネタは理性的なネタに見えて使わなくていい頭を使ってしまう。
あのネタ「脳溶けちゃうよ~!」くらいの感じで気軽に見てりゃいいのに、理解しようとしてしまうと、たしかに畠中さんの多重人格の構造が複雑でちょっとこんがらがる。2,3回見ると構造が分かってどんどん面白く思えているのはあるかもしれない。
特に印象に残ったフレーズ:言ってないはチンピラだよぉ
最終決戦3組のネタが終わった後「この中で誰が一番だなんて、争うこともしないで」と世界に一つだけの花の歌詞がよぎった。
それくらい一番を選ぶのは難しかった。瞬間最大風速の吹き方から錦鯉が行きそうかなとは思った。
ただ直近のTHEWで票が2-2-3と割れてオダウエダが優勝したこともあった。
陽のインディアンスと錦鯉で票が中途半端に割れて、2-2-3でオズワルドが優勝する展開だって全然あると思った。
全体感想
50歳と43歳のコンビ錦鯉が優勝というあまりに美しい結末で幕を閉じた。
M-1ラストイヤーが56歳、最高齢出場記録が自分との闘いというネタはもう披露できないのかと思いつつ、まさのりさんの涙に思わずもらい泣きしそうになった。本当に感動した。
実は私はまさのりさんと誕生日が同じ7月30日で、以前から縁を感じていたんだけど、今年まさのりさんが50歳になる時は随分と意識したものだった。自分の誕生日にまさのりさんもまた一つ歳を取る事はこれからも意識し続けるんだろうな。
元々M-1グランプリという大会は、島田紳助さんが「10年間芸人をやってこれに出られないようなら辞めた方が良い」という漫才師が辞めるきっかけを作ることを目的に立ち上げた大会だった。
だから「大会を通じて、漫才が隅々まで広まった。10年の節目をもって発展的解消することが、次につながる」(M-1グランプリのWikipediaから引用)と理由を付けて2010年の第10回大会を境に一度終わったのだと思う。
そんな大会が復活後に「鳴かず飛ばずのまま50歳になっても、諦めなければ夢は叶う」というドラマを生み出したのはなんとも面白い。
大会が当初の目的であった芸人を辞めるきっかけとして全然機能していないけど、それがこんなにも面白く、多くの人の感動を呼ぶ結末を生み出しているのだから。
40代後半まで一切鳴かず飛ばずでも、50歳で夢叶ってしまうことがあるんだから全売れてない芸人さん及びその家族が頭を抱える結末でもあったように思う。
私も27歳になり年齢を理由に何かを判断してしまう場面がある。もう○歳だからこういうことは格好悪くてやらないとか、もう何かを始めるには遅いとか。
でも今回の錦鯉を見て「もう○歳だから」みたいな、年齢を理由にしたネガティブなことを言わないようにしようと思えた。
毎回松本人志さんが審査員紹介される時の「漫才の歴史は彼以前彼以後に分かれる」というフレーズがめちゃくちゃカッコいいなと思っていた。
もう今の時代にそんなカリスマいるのかなと思ったけど、M-1に関して言うと1組思い当たるコンビがいた。
2018年王者の霜降り明星だ。
お笑い界に新たな風が吹き、M-1が今ほどの異常な宴になったのは、26歳の代(粗品さんは当時25歳)で王者になった彼らの功績が本当に大きいと思う。そこから先はどの組の優勝も大会に与えた意義、ドラマが異様に大きいように思える。
20代のニュースター、誰も知らなかった超実力派、最下位経験者による既存の概念を打ち破る漫才、そして鳴かず飛ばずの時代が長かった苦労人。
彼らの優勝が毎年M-1の色を変え、見る者を楽しませてくれる。
仮に2018年の優勝が和牛で、2019年の優勝がかまいたちで、2020年の優勝がおいでやすこがだったら、多分今のM-1の色はまた違う色だったのだろう。
2022年はどんなM-1グランプリが見れるのだろうか。今から楽しみでならない。
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