浮遊する生命

価値観もチクチク痛む、と歌う凡庸な童謡が嬲る朝、鳴り止まない警報機がひびく薄暗いアパート、朽ちた乳母車に乗せられた数年前の新聞紙や、よくわからないチラシが散乱する廊下を足を引き摺りながら歩く老人たちの群れ、亡霊たちが居るアパートに住まうベンゾ系の姫、その姫のヒモ、その男の有機溶剤で溶けた歯から覗く宇宙の波形、経過していく力とはこのような昏倒したケモノから生まれるのだよ、と左派をかじった精神科医の差別的で、選民思想に囚われた自らを解放できずに、薬物投与で誤魔化された精神たちが軋む音が延々となびく聡明な病院内、白髪でできた自然のメッシュをなびかせ、課せられた罪などそっちのけで遊び狂うグルーピーたち、立場なんてなんの役にも立たない、と誰かの立場になってまで考えぬいた上での批判にすら至らずに、表面的な否定や批判などが文化を衰退させる、と保守的な捕囚たちは、自らのバンダリズムに気付かずに、誰かを抑えつけては、自らを優位に立たせるための等位を守るために世界を倒錯させる。誰の理想にも近づけないし、誰かの理想なんてものは、誰かからすればクソの役にも立たないからな、と諦める気持ちもわかるし、諦めない気持ちも、まあわかる、とカタルシスに至るためにわかったフリをする大人たちは、誰かに自らの罪をなすりつけ、自らの罪を偽装する、という幼い子供が親に怒られないためにつくすぐ見破られる嘘をつくという自らの幼児性に気付かずに、誰を押さえ付けるためにためらわずに嘘をつきながら、完全な支配を目的とした芝居を続ける。想念が引き摺るプラトニックな思いをチクチクとぬい合わせる宇宙的な母、物質を細部まで見れば、私たちは同じ物資を分け合い、詩的な分離と、文学的な融合により高揚していく確かな兄弟である、と立体的な余波を超えて、質感すら失うような交配を繰り返し、今をクリアにすることもできずに、繰り返し現れる理由が反復しては、さまざまな思念を禍々しくぶつけ合いながら、ひたすらに曖昧な消費を繰り返しては、悲観的な関係によじれ、ただひたすらに結ばれる先では、退廃的な理由に屈従していく。終焉にふれる君の幼い哲学的な手、厭世観を掻きむしる夏の虫たちの無垢な大群、群像にとろける思いの端々をついばむ鳥の様子、緑色の大地からはあらゆる生命がキラキラしていて、疾走感をたずさえ、惑溺する苦痛を遮り、ただ確かな愛にだけは戒律などや規律すらなく、ただ分かち合うというより、理解するということよりも、溶け合うという表現をも超越するような愛に帰宅する。

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