自動車メーカーのロゴデザイン
はじめに
こんにちは、MiddleField DESIGNメンバーのHARA-bleepです。主にバナーやフライヤーのデザインや、アイコンなどのマテリアルを担当しています。
さて、今回は自動車メーカーのロゴデザインについてスポットを当てた記事にしてみました。2020年頃からのロゴ変更ラッシュをメインに、クルマ好きな自分の観点でいろいろ書いていこうかなと思います。
フラットデザイン、流行中
自動車メーカーがロゴの変更を発表するとクルマ好き界隈がざわつきます。ディーラーの看板やカタログ、そして何よりクルマに装着されるエンブレムが変わるのですから…トータルでどう変化するのかとても気になります。
ただ、2018年のMINIを筆頭に2020年頃から始まった自動車メーカーのロゴ変更ラッシュには共通点…そう、フラットなデザインがあったのです。
こうして並べて見ると一目瞭然。特にプジョーは1960年代のロゴへ先祖返りをしつつも大幅に変化しました。いくつかの公式発表を見ていくと…
(立体的なデザインの)陰影と灰色の色調を意図的に回避することで、まったく対照的な白黒効果が生まれ、新しいブランドアイデンティティの信憑性と明快さが伝わります。その2次元の特徴により、ユニーバサルアプリへの使用も可能になります。
―――MINIのHPより翻訳&抜粋
新しいロゴは、工業的でハードな印象から、上品で親しみやすくデジタルとの親和性の高いデザインへ移行したと言えるでしょう。そして、日産が伝統的な自動車メーカーとしてだけでなく、モビリティとサービスを提供する会社へと進化していくことを示しています。
―――ニッサンのHPより抜粋
効果的で、直感的で、没入型で、非常に視覚的で、ダイナミックで、ビジネス向きの、デジタルファーストに考え抜かれたシステム内で一貫性を保っています。この新しいエンブレムは、視覚的なアイデンティティだけに限定されないブランドエコシステムへの道を開きます。
―――プジョーのHPより翻訳&抜粋
といった風に”デジタル”を意識しているところが共通しています。これまでの立体的なエンブレム調のデザインだと、レスポンシブデザインやアイコンなどの拡大縮小に追随しにくいという要因も考えられます。デジタルネイティブな世代にとってはそちらのほうがウケがいいのかもしれません。
そして、このようなフラットなロゴにするとクルマに装着した際にレーダーなどへの影響が少なくなるという利点もあります。ロゴが平滑な面であればセンサー類を埋め込んでも障壁になりにくいため、自動運転などの運転支援技術の精度向上に繋がります。
引用元:トヨタ 取扱説明書 | C-HR
https://toyota.jp/pages/contents/ownersmanual/pdf/c-hr/c-hr_hybrid_202008.pdf
現状ではまだロゴの変更を行っていないメーカーでも、デザインガイドなどを見るとこういったデザインを想定している場合があるので、もしかしたら数年後にはフラットデザインが出揃っているかも…今後の動向に注目です。
ロゴに込められた想い
さて、ここからは自動車メーカーのロゴデザインについて書いていきます。様々な企業・サービス・商品のロゴの中で、よく見かけるデザインは”名称の入っているロゴ”や”頭文字を入れ込んだロゴ”でしょうか。自動車メーカーで例えるならレクサスやニッサン、スズキが分かりやすいと思います。
ここではそこから一歩踏み込んだ歴史と背景についてを解説していきます。
スバル
水平対向エンジンやAWDなどの技術を持つスバル。ロゴに輝く六つの星は、プレアデス星団…日本では”昴(すばる)”と呼ばれる星団です。
かつては航空機メーカー”中島飛行機”として戦闘機の開発と生産を行っていましたが、戦後に解体された中島飛行機系の5社と再合同を経て”富士重工業株式会社”になりました。
"スバル"という名称ですが、1950年頃の試作車”スバル1500”ことP-1の愛称として初めて使用されました。その後は”スバル360”など自動車ブランドの名前として親しまれてきました。ロゴの基本となるデザインはスバル360から続いています。そして2017年には”株式会社SUBARU”へ社名が変わりました。
6社の合併をプレアデス星団になぞらえ、スバルの名を冠したクルマを送り出して自動車業界に輝く星を目指す…このような歴史と背景がありました。
フェラーリ
クルマ好きでなくともその名を知っているはず、高級自動車メーカーを代表するフェラーリ。ロゴには本拠地であるイタリアの国旗とFerrariの文字が配されており、通称・跳ね馬こと”カヴァリーノ・ランパンテ”が中央に構えています。
この馬は第一次世界大戦におけるイタリア空軍のエースパイロット、フランチェスコ・バラッカが自身の戦闘機に描いていたパーソナルマークが元になっていて、フェラーリの創始者であるエンツォ・フェラーリが1923年のレースで優勝した際に彼の両親がプレゼントしたものです(ちなみにその時のエンツォ・フェラーリはアルファロメオのレーサーでした)。そして、1947年のフェラーリ創設時からモデナ市のカラーであるカナリー・イエローを背にしたこのロゴが使われるようになったのです。
ポルシェ
そういえば、ロゴに馬がいるメーカーが他にも…そう、ポルシェ。スポーツカー分野において試金石のような存在とも言えるメーカーです。
こちらの馬はドイツ・シュトゥットガルト市の紋章がモチーフになっています。さらに鹿の角はヴュルテンベルク・ホーエンツォレルン州の紋章が元になっており、黒と赤の帯はヴュルテンベルク王国の国旗を表しています。
ロゴの変遷として、"PORSCHE"と"STUTTGART"の文字は途中から黒く塗られるようになり、帯も深みのある赤色に変わっています。なお過去のデザインを基にした”ポルシェクレスト”も注文可能です。ちょっと欲しい。
ちなみに前述のカヴァリーノ・ランパンテとの共通点を唱える説(撃墜したドイツ空軍機に描かれていた紋章をバラッカがパーソナルマークにした?)がありますが、あちらは騎兵連隊の部隊章が元になっているらしく、こちらは軍馬の放牧地でもあったシュトゥーテン・ガルテン(牝馬の園)から来ています。諸説ありますが、姉と弟だった…とは言えないかもしれません。
おわりに
自動車メーカーの公式見解だけでなく、様々な説や憶測が入り混じって調べるだけでも面白い内容になりました。フラットデザインについては、もし追随する動きがあれば同時に歴史やデザインに関するお話もメーカー側から出てくると思いますし、知見を深める機会にもなるかもしれません。
今のうちにクルマのロゴもコレクションに入れておこうかな?😏
引用元リンク
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