パワハラ報道に対するメディアの取材姿勢について考える
私は利害関係者でも何でもない(と考えているが、保有株の中に該当している会社があれば利害関係者になってしまう)が、パワハラについての報道について、大きな違和感を感じたのでここに記したい。
なおこの企業の社長他、登場人物を貶めるような意図は一切ない。
あくまでこの報道から見られた事実および、そこから推論を記しているわけであって、その内容の公平性、真正性は1次情報に当たれない以上、担保されていない。ご覧いただく上で、その点は十分留意していただきたい。
問題があればお問い合わせより、ご連絡を。
特に違和感を感じたのは、以下2点である。
「事実確認」と称して、直撃取材を敢行している
メディアを使用した外的圧力による告発
直撃取材への違和感
上場企業において、特にグロース市場への上場を果たしている企業であるということから考えるに、広報が置かれているかどうかは不明である。しかし、IRは確実に存在するだろう。株主に対して影響を与えうるこの報道がなされる(可能性がある)のに、彼らがなぜ登場しないのだろうか。
また「社長が」取材拒否をしたにも関わらず(告発のあった社員から提供のあった)録音された音声を使用して取材するというのは、いささか問題があるのではないだろうか。通報者の保護に反するためである。
つまり、
1. 裁判上でこの報道によって、社長へ一定程度の社会的影響(=制裁)を与えたと認識された場合、不利に働くことは大いに考えられる。
2. パワハラが存在するとするならば、社長個人の問題を超え、会社の問題であるわけだから、会社(=法人)に対して取材依頼をし、その結果、社長が返答した、という構成でなければならない。会社が介在していないわけであるから、取締役会が機能していない、といっても差し支えない。これは2点目でも論じたい。
3. この音声や内容を聞いて社長はどう行動するだろうか。該当する社員に対して不利益を被らせる可能性が存在する以上、直接使用するというのは違和感がある。
この告発は「パワハラがあったかどうか」の事実認定の話である。
社長からすれば、業務上必要のあった指導の範囲内と考えているだろうし、告発社員からすれば、その逆であるということが十分に理解できる。
ならなおさら、なぜ会社が介在していないのだろうか。
外的圧力による告発
最も違和感を感じるのはこの点である。
なぜ告発した社員は、上場企業であるにも関わらず、(弁護士などを通した)内部通報制度を使用しない(と客観的に見て考える)のだろうか。またパワハラの存在自体があったとして、それに対する取締役会における牽制機能がなぜ機能しなかったのであろうか。
もし、内部通報制度が形骸化していたり、不在であるならば上場時点におけるJPXの監督責任にもなり得る。また取締役会(だけでなく、内部管理体制)の機能不全であるならば、社外取締役が指摘すべきである。
またメディアによる、社長に直撃取材の違和感はこの点にある。
メディアがするべきなのは、会社に対して(ないし、取締役、社外取締役や筆頭株主に対して)質問状を送付するなどの手法を取ることであって、その結果無視された、事実認定がされなかったと判断された、のであればそれをこの告発された音声を以て、世間に問うという手段を取ることができる。より影響力を行使することもできたであろう。
また、弁護士を通して回答していると社長が発言していることから分かる通り、直撃取材はその弁護士を超えて取材している。訴えられる危険性もあり、危険を顧みない報道である。これは取材姿勢であるから一概に否定はできないが。
以上のことから、この報道を全体的に持ち上げるような姿勢には違和感を感じている。
なお報道を見る限り
については、客観的に見てパワハラと認定されてもおかしくはない。
この音声があるならば、なぜ自浄作用に期待しなかったのか、そこにこの会社自体の問題があるだろう。
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