MEZZANINE Vol.4 都市の新関係論
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text:吹田良平
いわゆる「スマートシティ」は魅力に乏しいと常々感じていたけれど、今回の取材を通じて、「手段の域を出ておらず、スマートどころでない」等の意見が次々と発せられた。弊誌はかねてより、「スタートアップ・エコシステム拠点都市構想」や「クリエイティブシティ」といった都市政策にも、同種の閉塞感を覚えていた。
スマートシティは、せっかく都市のデジタルツイン化を実現するのであれば、欠乏充足や生活利便性提供のその先の、市民の創造性をエンパワメントする都市を目指すべきだし(だって、わざわざ”賢い”都市って言ってるのだから)、スタートアップ・エコシステム拠点都市は、そもそも「挑戦する者たち」が好む街の環境をこさえなければ拠点化は起こらないし、クリエイティブシティは、これまでの文化芸術振興政策の枠組みから解放して、経済開発や幸福追求(欲望充足)の地平で向き合うべきテーマだと感じていた。あくまで、異なる3つの都市政策として。
ところが、編集を進めていくうち、これらの3つの異なる都市政策は、ゴールが一つに重なり合い、一つの環世界として像を結べるかもしれない、という境地に至った。その場合、シティ=都市のサイズでは知の連携進化を果たす街の実現は難しく、①シティより二回り程小さい、ネイバーフッドレベルで捉えるのが適当であること、②街の触媒機能を加速させるためには、都市計画法上の特別区域計画の網を張るのに取って代わる、テクノロジーの力が奏功しそうだということ、③そこで鍵を握るのは、人と人との新しい関わり方にある、との気づきを得た。そこで本号では、前者を「クリエイティブネイバーフッド」、次のアーバンテック・サービスを「NaaS(Neighborhood as a Service)」、双方に通底するコモンセンスを「新しい関係性」と称して、その可能性を探ってみることにした。
本号の構成は、まず最初に「スマートシティ」、続いて「スタートアップ・エコシステム拠点都市」、そして「クリエイティブシティ」の順で各々が抱える問題点を洗い出し、打開のための方向性を提示した。次に、これら3つの都市政策・経済政策が求めるゴールを一つに結像させた新しい都市のあり様として「クリエイティブネイバーフッド」構想を展開。その上で、この街のコモンセンスやコモンウェルス(共通善)を明らかにすべく、「新しい関係性」と「テクノロジー」について検討を深めた。
編集作業の開始は、丁度 1月下旬の武漢市の都市封鎖の時と重なった。今号も作業の過程では、素晴らしい識者・俊英たちとの出会いに恵まれながら、街を彷徨い創造的試行錯誤とグラス(ある時はビール、ある時はホッピー、ある時は、もういい)を重ねていった。
そして、いきなり世界の各都市が次々とロックダウンを開始。都市力の息の根を止められた。結果として今号は、Society5.0への代替案提示という当初計画よりも、パンデミック後の都市性能の再考と再興に関する檄文、との思いが強い。