見出し画像

女性のみなさん、産婦人科へ行きましょう!

みなさんは「産婦人科」に対して、妊娠している女性や子どもを望む女性のみが訪れる場所というイメージを持っていませんか?

私は、あらゆる年齢の女性にもっと気軽に受診してほしいですし、できるなら、なるべく早くかかりつけ医を見つけてほしいと思っています。

今回は、まだ産婦人科を受診したことのない方、受診に抵抗があるという方に、産婦人科のかかりつけ医を持つメリットや、実際の診療がどのようにおこなわれるのかお伝えしたいと思います。

キャリアの転機に訪れるライフイベント、体調の変化

20代、30代、40代、50代……。年齢を経るごとに、誰もが社会的な役割が変わり、年代ごとのライフイベントもありますが、なにより女性にはそれぞれの年代特有のカラダの変化が訪れます

【年代ごとのライフイベントと女性のカラダの変化】

西岡先生⑦チャート.001


上記を見ていただいてもわかるように、女性の人生は、仕事がおもしろくなってくるタイミング、責任ある仕事を任せられるタイミング、重要なポストへの昇進が叶うタイミングなど、キャリアのうえで重要な転換点に特有の体調の変化や大きなライフイベントが重なってしまうことが多いのです。

それらをあらかじめ知っていれば、ある程度の予測をたてて備えをしたり、タイミングよく対策を講じたりして、変化する自分のカラダと上手につきあいって行くことも可能です。

そうして、できるだけ長く仕事を続けていく、思い描いたキャリアを実現する、といったことができれば理想的ですよね。

画像3

そのためにも、産婦人科を受診するハードルを下げておくことはとても大切です。

女性特有の、そして年齢特有のカラダの不調やトラブルがあったとき、産婦人科を受診することによって解決することは多いです。
また、実際に受診してみると、ご自身が抱えている悩みの大きさに比べ、意外なほど簡単に解決してしまうことも少なくありません。

現代の産婦人科は、想像よりずっと受診しやすい

「産婦人科は、恥ずかしいから受診しにくい」

そう感じている人は少なくないと思います。

私も20代前半ではじめて産婦人科を受診したときには、心臓バクバクものでした。

でも、看護師さんは優しかったですし、女性医師はカーテン越しに気さくに話しかけてくれました。

「最近、若い子にも子宮頸がんが増えているので検査しておきませんか?」と提案もしていただき、リラックスした雰囲気の中、診察を受けることができました。

それから20数年が経過し、最近の産婦人科の病院・クリニックでは、“女性の受診のしやすさ”を第一にさまざまな工夫を凝らしています。

まず、外見からしておしゃれなカフェかエステかといった作りの施設もありますし、中に入って受付、待合室、診察室、内診室…。いずれも女性がリラックスできるような空間作りがされています。

また、妊婦健診の診療時間とは別の時間帯に一般婦人科の診療時間を設定していたり、はたらく女性が仕事帰りに受診できるよう、夜遅くまで受け付けている施設もあります。

予約の際に女性医師を希望できたり、インターネット予約できる施設も増えてきています。

メールの添付ファイル-1

おしゃれで落ち着いた雰囲気が漂う待合室なら
初めて受診する人のドキドキもやわらげてくれそうです
*写真協力:フィーカレディースクリニック(東京・日本橋)

これといった不調がなくても訪れてOK!

では、実際にどのような流れで診察がおこなわれるのでしょう?

「その前に、まず“何のために”受診をするのか考えなくても良いの?」
…と、思う人もいるかもしれません。

初診で産婦人科を受診する場合、受付で問診票を渡されます。そこに記載されている「来院理由」の選択肢には、だいたいこんな項目があります。

【来院理由】
・月経不順 ・月経停止 ・腹痛
・子宮筋腫 ・卵巣嚢腫 ・性器出血
・がんが心配 ・子どもがほしい
・妊娠 ・おりものが多い
・他院からの紹介 ・その他(  )

つまり、妊娠・出産以外でも、これだけの理由で産婦人科を訪れてよいのだということです。

例えば、「月経中でもないのに下腹部の痛みがずっと続く。内科に行ったら「なんでもない」と言われた」…といった場合でも、十分な受診理由になります。子宮や卵巣に何か病気が隠れているかもしれませんからね。

もちろん、「異常がないか確認したい」といったレディースドック的な目的も大歓迎です。

画像5

その他、問診票では以下のようなことも聞かれます。

普段訪れている病院(内科など)にはないプライベートに踏み込んだ質問も出てくるため、初めてだとびっくりしてしまうかもしれません。スムーズに記入できるよう、問診の例を引用しておきます。

【問診票の例】

年齢/身長/体重/職業
来院理由(上記参照)
既往歴/現病歴
飲んでいる薬の有無と薬品名
アレルギーの有無とその詳細
《月経について》
初経年齢/閉経年齢
月経は順調に来ているか
月経血の量
月経時の腹部の痛みの有無
月経時の身体症状(具合が悪くなるところがあるか)
最終月経 ○年○月○日〜○日間
月経周期
基礎体温測定の有無
性交経験の有無
結婚の有無
妊娠歴/分娩歴
※施設により女医希望の有無

 産婦人科での受診はこんな流れでおこなわれます

診察室に入ると、記入した問診票をもとに診察が始まります。

男性医師でも女性医師でも、女性特有の症状やツラさにしっかりと耳を傾け、その人に必要な診察内容を考え、一緒に解決策を考えてくれます。

性交経験がなく内診に抵抗があるという人には、初診は内診を避け、下腹部の超音波検査のみという選択をしてくれる医師もいます。

もちろん、必要があれば医師の判断で内診をおこないますが、その人が内診の必要性について十分理解できるよう、ていねいに説明をしてくれるので、安心できると思います。

【内診台での診察】

まず、ショーツを脱いで内診台(マッサージチェアのようなもの)に座ります。スタッフがスイッチを入れると、台が電動で動き、カラダが仰向けに近い状態になり、同時に太ももが両側に開かれ、外陰部が診察できる体勢になります。

この状態が恥ずかしいという人のために、バスタオルなどが用意されているので、おなかの上にかけて医師の診察を待ちます。

医師と受診する女性の間には短いカーテンが引かれていて、診察中の医師の顔や姿が見えないようになっている施設が多いです。

★「患者さんの顔を見て診察する」方針の施設もあるので、予約時に確認してみた方がよいでしょう。

受診する女性の側にモニターが設置してあり、画像を見て医師の説明を受けながら超音波検査の確認ができる施設もあります。

画像2

【内診】

双合診といって、腟の中に指を入れ、もう一方の手で下腹部をさわることで、子宮の大きさを確認したり、子宮の変形の有無、卵巣・卵管の腫れの有無、癒着の有無や程度などを確認する診察です。

【視診】

おりものの状態や炎症の有無を確認します。
腟の中に腟鏡診というアヒルのくちばしのような器具を挿入して、子宮の入り口(頸部)の状態を医師が目で確認できるようにします。腟鏡診には、LからSSSまでさまざまなサイズがあり、女性の状態によって使い分けをしています。

がん検診をするときは、腟鏡診をおこなった後に、ブラシを使って頸部の細胞を採取します。

内診では、どの産婦人科医も受診する女性の苦痛が少なくなるよう、リラックスして診察ができるよう、ていねいに声かけをおこなってくれます

それでも「産婦人科の受診に抵抗を感じる」という人へ

「女性器を他人に見られるのは恥ずかしい」という感覚は、成熟した女性なら誰もが持っているものだと思います。

でも、産婦人科の医師は「この女性の女性器(子宮、卵巣を含む)に病気がかくれていないだろうか?」ということしか、正直、考えていない。そういう視点でしか見ていないと言い切ってよいでしょう。

私も産婦人科の外来に勤務していた経験があるのですが、医師はもちろん、それ以外のスタッフもそのような視点しか持っていません。

おしりが大きいとか、アンダーヘアが云々など、デリケートなエリアである分、女性器(とくに外性器)に対してコンプレックスを持っている人もいるかもしれません。

でも、少し乱暴な言い方になるかもしれませんが、医師にとってそれは、「人の顔が1人ひとり違うように、外性器の形だって1人ひとり違うよね」という認識にすぎません。

はたらいていた当時の私もそうでしたが、産婦人科のスタッフは、初診時の緊張や羞恥心をできるだけやわらげ、リラックスしてもらえるようにと気を配りながら受診する女性1人ひとりと向き合っています。

女性が心身共にリラックスしてしていると、実は受診自体もスムーズに進むことが多いんですよ。

画像6

産婦人科のかかりつけ医はすこやかなライフキャリアにかかせない生涯のパートナー

「私も産婦人科を受診してみようかな」
そんな気持ちになっていただけましたか?

健康な人生を送るうえでも、女性特有のカラダの変化に対応しながら働き続けるためにも、女性にとって産婦人科の存在は欠かせません。

最初に受診した産婦人科が必ずしもかかりつけにできるかどうかはわかりません。しかし、いくつかの施設を受診してみるうちに「この先生になら何でも相談できる」といった信頼のおける医師との出会いがあるかもしれませんし、通いやすい、対応が柔軟といったことが決め手で長く通える施設になるかもしれません。

いずれにしても、産婦人科のかかりつけ医を持つことは、疾患の早期発見や重症化を防ぐことにもつながりますし、経年変化を知ってもらえているからこそ、検査の数値や年代ごとの治療の変化に対しても納得感の高い説明が得られるなど、さまざまなメリットがあります。

年齢にかかわらず、ぜひ、今からでもかかりつけの産婦人科医を探してみていただき、人生のパートナーとしてよい関係を作ってほしいと思います。

■ 文/西岡 笑子(にしおか・えみこ)
防衛医科大学校 医学教育部 看護学科母性看護学講座教授。順天堂大学医学部非常勤講師。順天堂大学医学部助教、神戸大学保健学研究科准教授を経て現職。母性看護学・助産学とウィメンズヘルスが専門分野。2児の母でもある。mezame女性研修の監修を行う。

(構成/阿部志穂 イラスト/すぎやまえみこ)


“mezame”は、はたらく女性の健康とキャリアをサポートするプログラムです

画像7

女性特有の体調の周期的な変化、年齢やライフステージごとに変わって行く役割、体調、かかりやすい病気…。ウィメンズヘルスをふまえて“はたらく”を考えれば、女性従業員のパフォーマンスは今以上に向上し、女性自身もなりたい自分、叶えたい人生に近づくことができます。

さんぎょうい株式会社が提供する“mezame”は、専任の産業保健師とキャリアコンサルタント(国家資格)がタッグを組み、健康知識とキャリアプランニングの基礎研修に加え、個別のキャリア面談によるモチベーションアップ、ライフステージ別・職級別の健康とキャリアを考えるセミナー等をおこなうプログラムです。

労働損失が5000億円にも迫ると算出されている月経随伴症状。職場全体がヘルスリテラシーを高め、女性の健康に配慮することで労働生産性もあがり、相互理解が促進されることで離職率の低い職場風土を醸成できます。

女性活躍推進施策、健康経営施策の第一歩としても最適です。経営者のみなさん、人事・HRご担当のみなさん、ぜひ一度、ご相談ください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?