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はかってみましょう「基礎体温」

読者のみなさんは、「基礎体温」をはかっていますか?

毎朝決まった時間に体温計で測った体温を記録していくという、少々アナログな記録法ではありますが、これを記録し続けたデータを持っていると、さまざまなシーンで女性の健康を助けてくれます。

なれてくると、月経周期をはじめとしたカラダのリズムや特徴がわかり、体調の変化や病気の兆候にいち早く気づくことができるなど、たくさんのメリットがあります。

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高温期と低温期が二層に分かれるのが理想的

このコロナ禍で、はかる機会が増えた「体温」。
風邪をひいたりウイルス感染したときに上昇するもの、といったざっくりした認識をみなさん持っていらっしゃると思いますが、体温には、運動、食事、感情の起伏、基礎代謝などさまざまな要素が影響を及ぼしています。

今回お話する「基礎体温」は、その中でも「人間が活動するために必要な最低体温」のことを指していて、毎日はかることでカラダのリズムを把握することができます

基礎体温を毎日はかり続けていると、体温が低い時期と高い時期に分かれていることに気づくと思います。

この変化は、排卵後の黄体から分泌される黄体ホルモンが脳の体温調節中枢に作用し、体温が上昇することで起こります。具体的には、排卵が起こると体温が上がるため、“高温期”に入ると「排卵があったんだな」と、自分のカラダの内部で起こっていることがわかるというわけです。

高温期が長めだったり、低温期が長めだったり、またジワジワと高温期へ移行するなど、人によってグラフの形には差がありますが、排卵を境に低温期と高温期が二層に分かれているのが、グラフの理想的な推移です。

【理想的な基礎体温のグラフ】

基礎体温グラフ.001

“基礎体温”のはかりかたのポイント

以下のポイントを参考にして、ぜひ基礎体温をつけはじめてみましょう。
すでに記録を続けているという人は、自分のはかりかたが正しいかチェックしてみてくださいね。

① 朝目覚めて、カラダを起こす前にはかる

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少しの動作でも体温は変化してしまうので、基礎体温測定専用の体温計は枕元など手の届く場所に置き、目覚めたら動かなくてもはかれるように準備しておきましょう。4〜5時間睡眠を取って、目覚めたときの体温を測るのが良いとされています。

できれば、毎朝同じ時間に計測するのが理想ですが、夜勤のある方など、事情によって難しい場合は、熟睡した寝起きに計測してください。

② 専用の「婦人体温計」をつかう

微細な体温の変化をキャッチするために、基礎体温専用の体温計を使用しましょう。小数点第2位まで計測できるので、カラダのリズムを正しく感じることができます。

③ 舌下で計測する

基礎体温は、舌の下ではかります。汗や外気の影響を受けにくく、体温が安定しているためといわれています。

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▲舌下の付け根左右のどちらかに体温計をあて、
ズレないように持って軽く口を閉じます。

④ 記録は必ず計測直後に

体温の変化を把握するためには、毎日確実に記録することが大切です。グラフを作成したりアプリを活用するなどして、忘れずに記録・管理するようにしましょう。

以上、基礎体温を正しく計測するためのポイントをお伝えしましたが、実際には、計測時間に多少のバラツキがあっても、(計測前に)うっかり起き上がってしまってもさほど大きな問題にはなりません。
基礎体温は、毎日計測してその移りかわりを観察することに意味があります。あまり神経質になりすぎないように続けていきましょう。

「おりもの」の変化も体調管理に役立てて

カラダの周期をモニタリングする方法として、もうひとつ、知っておきたいのが“おりもの”の変化です。実は、月経と同じようにおりものにも周期があり、その周期にあわせて状態や量が変化しているんです。

卵巣から分泌される女性ホルモンは“卵巣ホルモン(エストロゲン)”と“黄体ホルモン(プロゲステロン)”の2種類ですが、おりものの量は卵胞ホルモンの分泌にほぼ比例し、おりものの状態もこの2つのホルモンと深く関わっています

下着は汚れるし臭いは気になるしと、おりものに良いイメージを持っている人は少ないと思いますが、おりものにも女性のカラダにとって重要な役割をちゃんと持っています。

そのひとつが「自浄作用」
膣を通して細菌がカラダの中に入ってくるのを防ぎます。普段、膣内は酸性に保たれていて、そこから分泌されるおりものは、細菌が侵入しにくい環境をつくり、膣の中をきれいにたもつ力を持っています。

もうひとつは「受精の手助け」。
排卵期になるとおりものは弱アルカリ性へと変化し、精子が子宮へとスムーズに到達する役割を担います。そのため、排卵日の数日前になるとおりものは徐々に増え、排卵期の2〜3日が最も多くなります。

分泌量が変わるだけではなく、サラッとした状態からとろみのある水のように透明で柔らかく糸を引くよう状態へと、排卵期を境に状態の変化もあらわれます。

このような変化を知っていると、

「そろそろ生理かも」
「排卵日が近いかな?」

といった具合に、カラダの周期を知る目安にすることができます。
基礎体温と併せて、ぜひおりものの状態もチェックしてみてください。

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周期が乱れたら気持ちや暮らしを見つめ直して

ちなみに、月経周期の正しい数え方をご存じですか?
月経周期は、月経が始まった日から「1、2、3…」とカウントし、次の月経が始まる前日までを“一周期”とします。

この表では、標準とされる29日の月経周期をカウントしていますが、実際の月経周期は個人差が大きく、同一の人の中でもストレスや健康状態によって変動があります。基礎体温を付け続ける意味はだからこそ大きいともいえるでしょう。

記録がカラダへのポジティブイメージにつながる

体温の測り方に慣れるまでは少々大変に感じるかもしれませんが、寝起きのルーチンは意外に習慣化しやすいものです。まずはいち月経周期、続けてみるつもりではじめてみましょう。

改めてまとめると、基礎体温の記録を続けることは、以下のようなメリットにつながります。

・PMS(月経前症候群)の診断ができる。
・月経随伴症状の状態を確認し、セルフケアの目標を焦点化できる。
・外出、仕事、旅行等のスケジュールの調整がしやすい
・生活スタイルを自分の月経周期にあわせて組み合わせることができる。
・不測の事態が回避でき、月経での不快な経験や悪影響を軽減できる。

痛みやイライラ、カラダの不調といった月経にともなう症状に振り回されるのではなく、あらかじめ月経周期を予測して起こりうる事態に対応することができれば、「自分の月経は自分でコントロールできる」といった自己肯定感にもつながります。

責任を持って働く“いち社会人”としても、日々の体調をモニタリングして体調管理につなげることは大切なこと。周期を管理しやすいアプリもたくさんリリースされていますし、自分がやりやすい記録方法を見つけて、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

■ 文/西岡 笑子(にしおか・えみこ)
防衛医科大学校 医学教育部 看護学科母性看護学講座教授。順天堂大学医学部非常勤講師。順天堂大学医学部助教、神戸大学保健学研究科准教授を経て現職。母性看護学・助産学とウィメンズヘルスが専門分野。2児の母でもある。mezame女性研修の監修を行う。

(構成/阿部志穂 イラスト/すぎやまえみこ)


“mezame”は、
はたらく女性の健康とキャリアを
サポートするプログラムです

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女性特有の体調の周期的な変化、年齢やライフステージごとに変わって行く役割、体調、かかりやすい病気…。ウィメンズヘルスをふまえて“はたらく”を考えれば、女性従業員のパフォーマンスは今以上に向上し、女性自身もなりたい自分、叶えたい人生に近づくことができます。

さんぎょうい株式会社が提供する“mezame”は、専任の産業保健師と国家資格キャリアコンサルタントがタッグを組み、健康知識とキャリアプランニングの基礎研修、個別のキャリア面談によるモチベーションアップ、ライフステージ別・職級別の健康とキャリアを考えるセミナー等をおこなう支援プログラムです。

労働損失が5000億円にも迫ると算出されている月経随伴症状。職場全体がヘルスリテラシーを高め、女性の健康に配慮することで労働生産性もあがり、相互理解が促進されることで離職率の低い職場風土を醸成できます。

女性活躍推進施策、健康経営施策の第一歩としても最適です。経営者のみなさん、人事・HRご担当のみなさん、ぜひ一度、ご相談ください!


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