尾道での日々⑤〜夜ってたまにそういうことするよね〜
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2017年7月の記録。
夜って、そういうことたまにするよね。
尾道を案内をしてくれた学生は終電があるからといって、先に帰った。
関東から来た学生と私が残り、帰路に着く。
しかし偶然目の前に猫が現れた。猫に視線を奪われた私は、猫を追いかけながらひたすら突き進んだ。関東の彼も巻き添えにしてしまった。猫を追いかけながらというのも変だけど、そこではじめて彼とちゃんと話をした気がする。
そして海に出た。夕方は川に見えた尾道水道。周りが暗く、対岸も暗いせいで、今度こそ本当の海だった。
コンクリートで沿岸を固められた海に、人工的な海だな、と思った。座れるところを探してしばらく歩く。低い防波堤の上に5本のワイヤーが張られていて、自殺防止なんじゃないの、など適当なことを言う。
造船所の近くにカフェのテラス席があったのでそこに座る。少し離れた船着き場でも人がいる。夜の風が気持ち良い。本当に夜風は吹いていたのだろうか。そこでしばらく彼と話をした。
大学のこと、友達のこと、自分の悪い癖、尾道みたいな場所は他にもあるか、良かった旅先、東京という街について、来年の不安。一滴もお酒は飲んでいないのに、次から次へと話題が湧き上がってきて何を話してもすごく楽しかった。話す内容にあんまり意味はなかった、そこで話す、ということに私はとても癒された。
コンクリートの上に寝ころんで尾道大橋に目をやる。背中が痛い。安っぽい暖色の街灯に目を細める。空を仰ぐ。島よりもくぐもった夜空に星が覗いている。半端な田舎町に生まれた私は、この街に親近感を持った。
「ここ、来たことある気がするんだよね。この風景も見たことある気がするね。ね、そう思わない?」
「うん、とても、、。」
皆の記憶の断片をかき集めてできたような街。そう思うのは夜のせいであって、ヒロインと錯覚させる舞台が整う何かがあるから。
午前1時半頃、そろそろ戻ろうと今度は真面目にゲストハウスに着いた。汗が肌にまとわりつくも、眠気がぶり返してきてそのまま寝てしまった。夢を忘れるほど深く眠った。人生において一日でもこんな日を過ごせたことは、誇らしかった。宝物になる。強さになる。
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7年経った今でもこの夜のことははっきり明確覚えている。
夢だったのかなと思うくらい、素敵な時間だった。
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