「め」と「て」で耕されていく文化に触れる。
今回は、ギャロデット大学と筑波技術大学大学院にてデフスペースデザインの研究をされ、国内外のリサーチに取り組まれている福島愛未さんと進めた、手話で会話することと、視覚や触覚を起点とする身体的な感覚から生まれてきた居住空間のリサーチについて、めとてラボメンバー・和田夏実がお届けします。
みなさんは、「デフスペース」という言葉をご存知ですか?
例えば、お互いの目を見て会話をするために、1階から3階までが吹き抜けになっていて、どこにいてもお互いの顔を見合わせることができるようになっていたり。
部屋の照明を活用して、電気をチカチカ点灯させることで人を呼んだり。
デフスペース自体は、アメリカで生まれた概念ですが、実のところ日本にも人々の暮らしののなかにさまざまなデフスペースの工夫がみられます。
そこで、福島愛未さんと、日本におけるデフスペースを探しにいこう!と、今回は、長野のとある家を訪問し、家主にインタビューを行いました。
ここは長野で約20年前につくられた、ろう者の両親とコーダの3人家族が住む家です。3人は主に手話で会話をします。
例えば、「ごはんですよ〜!」と家族を呼びたいときは、一体どのようにするのでしょうか?
1階には全部の部屋のスイッチを管理するボタンが並んでいて、そこから呼びたい人がいる部屋のスイッチをチカチカさせます。呼ばれた人は自分の部屋から1階に向かって顔を出すと、そこで会話ができる(情報を伝えられる)という空間になっています。
照明は、その他にもさまざまな情報を伝える役割があります。
住まいを作っていくためには、家族の好みや既存のものとの関わりも重要で、料理をしたり、掃除をしたり、そうした生活のなかでの工夫もまた組み込まれていきます。
デフスペースデザインってなんだろう?
インタビューは、現地参加メンバーと遠隔参加メンバーをZoomでつないで、手話で語らいながら、「デフスペースデザイン」と呼ばれている空間を作っていくための方法や今後の展望について話し合いました。
現地リサーチとインタビューを通して、あらためて、家を作るということは、ひとりひとりの存在や言語、その人らしさを肯定していくことなのだと実感しました。
まだまだいろんなところに隠れているかもしれない、デフスペースデザイン。
自分の家にもこうした工夫があるよ!という方がいらっしゃったら、ぜひ一緒にまだまだ眠るデフスペースのデザインについて探っていけたら嬉しいです。
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