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初めて制作した「めとてラボ」パンフレット
めとてラボは、「め」と「て」で生まれる自然な文化を耕していくための創造拠点づくりを目指し、さまざまな人と協働し、模索しながらリサーチや実験をするラボラトリーです。
視覚言語(日本手話)で話すろう者・難聴者・CODA(ろう者の親を持つ聴者)が主体となり、自らの感覚や言語を起点とする創発の場(ホーム)をつくることや、異なる身体性や感覚世界を持つ人々とともに、新たなコミュニケーションの在り方を研究・開発することに取り組んでいます。
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さて、今回は、2022年度に初めて制作した「めとてラボ」のパンフレットについてご紹介したいと思います。
昨年度は、国内リサーチ、デフスペースリサーチ、アーカイブプロジェクトといったさまざまな活動をしてきました。その活動の様子をより多くの方に知ってもらいたいと思い、「めとてラボ」のパンフレットをつくることにしました。
実は、パンフレットづくりの過程で、手話で話しているときの感覚や手話と日本語のイメージについてなど、メンバーの間でもさまざまな対話がありました。
「めとてラボ」としても、初めて制作したパンフレット。そこにはどのような制作プロセスがあったのか、そしてどんな思いが込められているのか。今回は、パンフレットの制作背景について、めとてラボメンバーの大高有紀子がご紹介します。
手話で話す空気感を紙媒体にする試行錯誤
めとてラボは視覚言語(日本手話)で話す人が主体となって、一人ひとりの感覚や言語を起点としたホームを作ることを目指しています。
このめとてラボの雰囲気や活動内容をパンフレットで伝えていこうとするとき、手話で話す空間や空気感を、「紙」媒体でどうやって伝えていくのか? パンフレット制作のなかでも、大きな課題となっていました。
手話で話しているときの空気感。上記の映像では「上手い/プロ」の表し方について、福島の方言ではどう表すのかを話しています。
◎形に込めた思いとは?
パンフレットといえば、一般的には四角の紙に写真や文字がちりばめられていますが、今回、めとてラボがつくったパンフレットは丸型です。
![](https://assets.st-note.com/img/1693286208701-q14IdzOra1.jpg?width=800)
なぜ丸型にしたのかというと…
ゼロ(0)から始まる
手話という言語は四角できっちりと囲まれているのではなく、広がりがあって空間がある
一般社団法人ooo(オオオ)から生まれたプロジェクト
一見シンプルそうに見えて、実はこのような意味が込められているのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1693285598886-f8Kq1SqPrP.jpg?width=800)
また、この丸型のパンフレットは、表面に活動の写真とイラストがあり、裏面には表面に描かれている活動の内容や思いなどを綴っています。
表紙を見て、気づくことはありませんか?
透明なシートには、何かふわふわとした物体が浮かんでいたり、矢印や線が描かれています。
一方その下の紙には、座っている人や立っている人、何かポーズをしている人……。家のような空間の中にいる人たちが、それぞれ別々に何かをしているように見えます。
![](https://assets.st-note.com/img/1693276920106-gJw04J8aQQ.jpg?width=800)
この透明シートと表紙を2つを重ねてみると、別々にいた人が実は線でつながっていたり、空間の1階にいる人が天井にある照明のスイッチを押し、照明のオン/オフによって、2階にいる人たちを呼んでいる様子に気づきます。
また、1階のテーブルを囲んで座っている人たちは手話で会話し、その会話の内容が広がっていく様子も見えます。
◎手話で話す身体感覚や空気感をイラストで表現
こうした手話で話す空間や空気感をどうやって伝えていくか?が、今回の制作において大きな課題だったのですが、そうした感覚を忠実にデザインしてくださった方がいました。
それが、イラストレーターの宮川幸さんです。
まず、なぜそれが大きな課題だったかというと、音声言語なら同じ言語に文字化することでほぼ同じ内容を伝えることができます。
(例)音声日本語 → 書記日本語
しかし、手話は文字というものがありません。だから、手話で話された言葉を文字にするには異なる言語への翻訳が必要になります。
(例)日本手話 → 【翻訳】 → 書記日本語
文字化できない感覚をどうやって伝えていくことができるのか。
その議論をめとてラボメンバーと重ねるなかで、活動内容をすべて文字にするのではなく、写真やイラストを通して伝えていく方法も必要なのではないか、という考えに至りました。そこで、イラストレーターの宮川さんにご相談することになった訳です。
実は、宮川さんはCODA(Children of Deaf Adults=耳の聞こえない親のもとで育つこどものこと)であり、手話のある環境で育ちました。そのため、手話から生まれる空間や空気感をイメージでき、かつそれを描き出すことができます。
イラストのイメージは、すぐに完成したかというとそうではなく、めとてラボのメンバーと宮川さんで手話で話しながら、アイデアを出したり、めとてラボメンバーが手話の空気感をイメージした動画をつくり、それまた見ながら議論を重ねてきました。
こうして出来上がったのが、このパンフレットなのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1693311099845-VYJyD2leLO.jpg?width=800)
一人ひとりの感じ方や考え方が異なるように、手話で話すときの空気感や空間のイメージも一人ひとり異なっていることを、このパンフレット制作を通して知ることができたのは、めとてラボメンバーにとっても大きな成果でした。
最後に、パンフレットが出来上がった時に初めて感じたことなのですが、このパンフレットを持つと、両手に包まれているような持ち方になり、なんだか「ホーム」にいるような、ホッとするような気持ちになりました。
丸型にすることで、思いがけないような相乗効果もあるのだなぁと気づきました。
また、このパンフレットは金色のリングで留められており、外すこともできます。このようにリングを外して並べると、めとてラボの活動内容が一目でわかるようになっています。さらに、このリング留めには、めとてラボのこれからの活動内容を綴っていくという意味も込められています。
2022年度はまだ9枚のシートですが、来年、再来年と活動していくたびに、少しずつ活動の記録やそのなかで得た気づきなどが重なっていき、より厚みや重みのあるものにきっとなっていくはず……!
2023年度のドキュメントの制作もただいま計画中です。このパンフレットに重ねて綴っていくアイデアも出ていたり、どんな形になっていくのか楽しみです。
ぜひ、これまでとこれからのめとてラボの活動をパンフレットを通して見ていただければ幸いです。
![](https://assets.st-note.com/img/1693277043111-JGFnmZgQXD.jpg?width=800)
パンフレット『めとてラボ2022 - 活動レポート - 』は、PDFデータでも公開しています。Tokyo Art Research Labのwebページからご覧ください。
【「めとてラボ」noteについて】
このnoteでは、「めとてラボ」の活動について、実際に訪れたリサーチ先での経験やそこでの気づきなどを絵や動画、写真なども織り交ぜながらレポートしていきます。執筆は、「めとてラボ」のメンバーが行います。このnoteは、手話と日本語、異なる言語話者のメンバー同士が、ともに考え、「伝え方」の方法も実験しながら綴っていくレポートです。各回、レポートの書き方や表現もさまざまになるはず。次回もお楽しみに!