違和感を逆手にとる表現。180度ルール破りとカメラ目線の成功例
さて、ここまで色々カメラ目線について語ってきましたが、カメラ目線を使った名シーンは沢山あります。
こちらの映像をみていただくと分かるのが基本的にカメラ目線は鏡又はレンズのPOVとして使われていることがわかります。
いくつかの例外では印象的に違和感を演出していることに気がつくはずです。
このように、カメラを見るショットが何を伝えるために使用されているのか読み解くのも大事なことです。
今まで習ってきた事はいわゆる基本です。
映像でストーリーを語る為の最低限のルールなのですが『シャイニング』など既に上げたいくつかの、基本を逆手に取った映画がある事も覚えておいて欲しいのです。
実は先ほど違和感は【違和感の原因が分からない時】プラスに働く、と書きましたが実はもう1つプラスへとの変換方法があります。
それは違和感が驚きになった時です。
それを最大限に利用した作品がこちら。
鈴木清順の『ツゴイネルワイゼン』です。
ここでは詳しく説明しませんが、一例を挙げると、
AとBのショットで男女が向かい合っていると思ったらCというショットで実は男女は背中合わせに立っている事が分かる、と言う様な場面が多用されています。
これは違和感を強調する事で驚きに変えているのです。
ちなみに、この驚きの根底には想定線によって導きだされている観客の先入観を利用しているというのがあります。
想定線で話したように
この様なショットをみると観客は2人が向かい合っていると思い込みます。
しかし次のツーショットのMLで背中合わせで2人が立っているのを見ると、想像と違う事で驚きに変わります。
人間が驚く理由は2つあり、1つは突然の衝撃、爆音や、振動、もう1つは自分が思っていた事と全く違った結果を知ったときです。
この映画はまさに、モンタージュ理論に馴れ切って先入観を前提として映画を見ていた観客の映像構成で意表をついた作品と言えるのです。
この様に、編集理論の原則を逆手に取って作られた名作は多くあります…
しかし、忘れてはいけないのが、どの作品も編集理論あってこその作品である事。
編集理論を逆手に取ると言う事は、編集理論を最大限に利用する事。
今まで上げた名作の作者であるキューブリックも、ベルイマンも鈴木清順も編集理論知らない、使えないではなく、知り尽くしているからこそ、この応用的演出を可能としているのです。
基礎を知ると言う事は新たな表現を探る為の第一歩なのです。
と言うことで、皆さんも違和感を最大の効果に変えている映画を分析してみてはいかがでしょうか?
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