primal scream


愛する人を思い浮かべる。目を閉じて。
眉間の奥、脊髄の延長線と交わった辺りに、意識を集中する。第三の目。ヨガでいう第六のアジナ・チャクラというエネルギーポイント。からだ全体の力が抜けていく。私は浮遊するひとつの瞳になる。
その人の笑顔、瞳から発せられる光、醸し出す波動。克明に思い浮かべる。停止された五感の代わりに、閉じた世界の裏側にあるスクリーンに、それは映し出されている。
他のことに考えが連鎖していってしまうのをひとつひとつ断ち切りながら、苦い想い出、くるしみへの回路をひとつひとつ埋め込む作業を繰り返しながら。またその人の香りに身を浸す。

私とその人との境目が曖昧になり、浮遊する瞳となった形無き私は微細に分割され、その人のあらゆる部分に吸い込まれるように同化していく。
そうして、私はその人のなかに入る。その人の目から世界を見る。
一体感。その人の目から見る世界は美しく、惨さ、醜さまでもが輝いている。

宇宙が逆にまわりはじめる。
全ての始まった一点に凝縮される。あなたと私と世界とが。
そこには無だけがある。それは底無しの地獄のような暗黒ではなかった。それはただ純粋な愛というエネルギーの巨大な塊だった。私とあなたと宇宙と、全てのものはそこから生まれた。その一点に還るそのために、私にはあなたが必要で、あなたには私が必要で。
私の住む世界はそのようにできている。そのなかに、叫びを深く内包して私は生まれた。「あなた」と「無」と「永遠」と「愛」と「美」と「宇宙」と「全て」は同義語で。
ただあなたにとってもそれが同じであることだけを強く願う。


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