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社会人 大学院修士課程 教師を続けながら その6 アメリカ留学 帰国①

アメリカ最終日の朝が来た。時計の針は丁度4時。こんなに朝早く飛行機が出るのかっていうと、出るのである。ルームメイトの友達が車を出してくれた。一路スティーブンス・ポイントの空港へと向かう。12月。朝というよりも、まだ夜って感じだった。寒空の下、2台の車は凍てつく朝焼けの中を突っ走っていく。前の車に、Joel, その友人,Hiromi, そして僕。後続車にはPaul,Sanae,Motokoが乗っていた。オレンジ色のライトが近づいてきた。空港というよりも、飛行場といった感じだ。僕は半年前、初めてここに降り立ったのだ。何もせずにだらだらと過ごす半年と、何かを求めてのそれには雲泥の差がある。後者を選択した僕はこの時点で間違っていないといえる。

車からスーツケースを下ろすと、Paulが言った。「Akiraさん、頑張ってください」前にも書いたが、彼との出会いは後々の僕の人生に大きく影響してくる。SanaeやJoelともハグをした。最後はHiromi。恐らくは彼女が一番長い時間一緒にいた人だ。心を込めてハグをした。彼らとはまたいつかどこかで会える。そう心に念じながら、僕はひとり搭乗口へと向かった。女性の係官が一言。"You had good time in the U.S.. Have a nice trip!!"ゲートへと延びる通路を進んでいくと、全員が手を振ってくれていた。Hiromi以外。彼女は下をうつむいたままだ。Hiromiの視線を感じた。それを感じながらも僕は進んでいく。が、我慢の限界だった。彼女をまっすぐ見つめ、両手を大きく振って別れを表現した。彼女は泣いている。それを振り払うかのように僕はゲートへと向かった。

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(リチャード・マークス。90年代のアメリカを代表するシンガーの一人)

朝焼けの空港には、Richard Marxの"Hazard"が流れていた。意味深な歌詞の内容もさることながら、この曲が今でも好きだ。日々の現実を生きながらも、時には癒され、そして次のステップに向かえるのはこの曲のおかげだ。年齢を重ねた今でも懐かしく思うのは、やはり最高の場で最高の時を過ごしたからに違いない。

僕は悔しさを心に残したまま、タラップを上がった。一段一段、いつかやって来る挽回の日を心に誓いながら。


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