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今こそSCREAM!!

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“metanoteシリーズ”の最初のオリジナルストーリー、 『今こそSCREAM!!』という作品になります✨ 約2年間、誰もが感じてきた自分を表現すること、 人と繋がることがで…
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2022年4月の記事一覧

【第16話】 全音符のような夕日が、二人を照らしていた

 本村は、朝のホームルームでラップを披露しようと決めた。  鬱々とした毎日を送っていた高校生の頃、救ってくれたのはラップだった。だけど、教師になった時、それは封印した。やっと叶えた夢、同僚や周りからどう思われるか、正直気になったのだ。  もしかしたら、それが高島の言ったことだったのかもしれない。  教師になったから変わってしまったのではなく、二つを両立するのだと夢見ていたことを諦めてしまった時から、少しずつ変わってしまったのかもしれない。  “SCREAM!!” がそれを気づ

【第15話】 キラキラした朝の光は、どこかCDの輝きみたいだ

 VRのライブハウス “SCREAM!!” からマリンは部屋へと戻ってきた。  時計をみると、朝6時過ぎ。カーテンが窓の外からの光を溜め込んでいて、シャッと音をたてて開けると、放たれたように勢いよく差し込んできた。「きれい……」初めて、朝日が清々しいものに感じた。  マリンの母が準備してくれた朝食のグラノーラを食べながら、思い切って「歌いたい」と伝えてみた。  すると、「やっぱりね」と母が微笑んだ。「やっぱりって?」と聞くと、  「だってマリン、小さい頃から歌うのが大好きだっ

【第14話】 歌おう。真っ白な世界に色を塗るように、声で絵を描くように

 曲のイントロが聞こえてくると、まるで太陽が昇るみたいに気分が満ちてくる。  どこにも行き場がなかった憂鬱な思い、悶々と渦巻いていた濁った感情が、トンネルの向こうで信号が青に変わるのを待っているようだ。  さあ歌おう。真っ白な世界に色を塗るように、声で絵を描くように。  その瞬間、滞っていた感情は、出口を見つけスピードを上げて飛びだして行く。  「なんて気持ちいいんだろう」歌っていると体の中が浄化されて新しい綺麗な水が流れ込んでくるみたいだ。  横にいたアキの声も、リズムを纏

【第13話】 音を立てて “再生” ボタンが押された、そんな気がした。

 マリンは自分の中で動き出した何かを感じながら、深く息を吸い込んだ。 頭の中では、キラーAの言葉がぐるぐると巡っていた。  「どこかへ行きたいって、なんで思うのか。どうして今の場所じゃダメなのか。新しい場所に行けば、きっと見たことない自分に会えるって思ってるからじゃないかな」  そうだ、ずっと思っていた。どこか知らない遠くへ行きたいと。  それは見たことない自分に、新しい自分に会いたいっていう気持ちだったんだ。  「つまり、変わりたいってこと……。アキも一緒だったんだね」