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今こそSCREAM!!

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“metanoteシリーズ”の最初のオリジナルストーリー、 『今こそSCREAM!!』という作品になります✨ 約2年間、誰もが感じてきた自分を表現すること、 人と繋がることがで…
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2022年3月の記事一覧

【第12話】 息を吸うのは吐き出すため、大声で叫ぶためだ

 ステージの上で何かトラブルが起きたみたいだ。  小突きあったり掴みかかったり揉めているのが、離れたところからでもなんとなくわかった。順番にステージに上がっていた客のマイクの取り合いがきっかけらしい。  「あ〜あ、盛り下がっちゃった」  「何ケンカしてんだって感じ。せっかく楽しかったのに」  近くでそんな声が聞こえてきて、マリンは心にチクっと何かが刺さった気がする。みんな一緒に楽しんでたのに、なんか自分のことばっかり。  SNSでも感じることがある。みんなつながりを求めている

【第11話】 新しい場所なら、きっと見たことない自分に会える

 ステージに上がって思い切り叫んでいる人たちがなんだか楽しそう、と思ったのは事実だ。だってなんだかみんな達成感に満ちた顔をしているのだ。  だけど、じゃあ自分が同じようにやってみるかと言われると、話は別だ。そんなことできない。隣にいるアキを見ると、彼はまたしても両手をクロスさせ×を作っていた。ほら、やっぱり彼だって同じだ。  なのにキラーAは、「そう? 二人とも上がりたそうだけどな」と言うのでマリンは思わず、「なんで? どこがですか?」と語気を強めてしまった。アキも目をまん丸

【第10話】 ステージで叫んだ人たちは、みんな晴れ晴れとした表情だった

 しばらくたって、制服の男子が作ったバツの意味がわかってきた。どうやら今日のイベントは、バンドが出てきてライブをするのではないらしい。  DJが流す音楽をバックに、集まった人たちが次々にステージに上がっていく。そして順番にマイクを持つと、好きなことを叫んでいた。これはお客さんもステージに上がる人も境のないイベントなんだ。  中には、マイクを持たずにただ絶叫しているだけの人もいる。それもありのようだ。  マリンは、その様子をしばらく呆然と見つめていた。ステージで叫んだ人たちは、

【第9話】 音楽って魔法だ、一瞬で世界を変えてしまう

 え、なんで?無視しなくてもよくない? 思い切って声をかけたこともあって引き下がれないのと、ここで彼に見放されたらますます居場所がなくなってしまう気がして、マリンはもう一度声をかけることにした。  「初めて来たんだけど、ここ不思議だよね。どうやって知ったの?」  しかし男子は、振り向いたもののまたしても返答なし。  「ちょっと!」彼に向けた言葉が2回連続で虚しく宙に浮き、さすがにそう言いそうになる。  だがその時、彼がメモに何かを書いてスッとマリンに差し出した。  「え、なに

【第8話】 ここにくれば何かが変わりそうな気がした

 やっぱり、ってどういうこと? 彼の言葉とちょっと見透かしているかのような微笑みにマリンはなんだか恥ずかしくなった。  興味ないですって言いながら、実はどこかで気になっていたのがバレていたのかと思うとちょっと悔しい。  男はキラーAと呼ばれていた。恥ずかしさをごまかしたくて「あなただって相当怪しいですよ!」とか言いそうになったけど、その言葉は飲み込んだ。  ここにくれば何かが変わりそうな気がしたのだ。というと大げさかもしれないけれど、なにかきっかけになるかもしれないと思ったの

【第7話】 海の深くへと潜っていくような緊張感が心地いい

 マリンが “SCREAM!!” の前にやってくると、今度はシャッターが開いていた。 開かれたままのアリスの扉に少し屈むようにして入ると、階段を降りていく。  コツンコツンと足音が響くたび、マリンのドキドキは大きくなった。  この下に、いったいどんなことが待っているんだろう。なにもわからない知らない場所、まるで海の深くに潜っていくような緊張感が妙に心地いい。階段を最後まで降りきると、「受付お願いします」とスタッフらしき女の人に声をかけられ、えっ、と動揺する。  だが、名前と年

【第6話】 全開なんて無理だけど、ほんの隙間くらい心を開けておいてもいいんじゃないの

 「アキって、そういうとこあるよな」  放課後、教室のベランダに出て下校する生徒たちの姿を見ていると、横にいたモリヤがそう言った。  「そういうとこ?」とアキが聞くと、モリヤはグランドを見たまま、なんか他人を寄せつけないっていうか壁を作るみたいな……そういうとこ?と言った。  モリヤとの出会いは中学に入り、同じクラスになったことだった。出席番号で並んでいたことから話すようになり、背の高さや体格がほとんど同じように成長したこともあって、なんとなくそのまま一緒にいるようになった。

【第5話】 引き出しから漏れる光は、抑えきれない好奇心のよう

 「なにこれ……光ってる……?」  今まで真っ白だったはずのカードが、CDのようにキラキラといろんな色を湛えながら、光を放っていた。カードにはQRコードのようなものが浮き上がっている。  「連絡するってこういうこと!?」  マリンは、気づくとそれを読み込ませようとしている自分にハッとして、いやいやいや、ダメだダメだ、と慌てて止めた。確かに、あの男の人はなにか危害を加えるような怖さはなかったし、悪い人ではない気がしたけれど、あんな、シャッターの奥に地下へと続く小さなドアとかどう

【第4話】 “再生”ボタンを押して音楽を聴くのが好きだ

 マリンの部屋には両親から譲り受けたCDとプレーヤーがある。  もちろん、音楽はスマホから好きなだけ聴くことができるし、YouTubeなら曲だけでなくMVだって見れる。  だけど、プラスチックのケースからCDを取り出し、スーッと機械に飲み込ませると、“再生”ボタンを押すのがマリンは好きだった。  今日はあの曲が聴きたい、と決めている時もあれば、ただその時の気分で、可愛かったり目を引くデザインの一枚を引っ張り出したりもする。  「この辺は全部ジャケ買いなんだよね」いつだったか、