【第4話】 “再生”ボタンを押して音楽を聴くのが好きだ
マリンの部屋には両親から譲り受けたCDとプレーヤーがある。
もちろん、音楽はスマホから好きなだけ聴くことができるし、YouTubeなら曲だけでなくMVだって見れる。
だけど、プラスチックのケースからCDを取り出し、スーッと機械に飲み込ませると、“再生”ボタンを押すのがマリンは好きだった。
今日はあの曲が聴きたい、と決めている時もあれば、ただその時の気分で、可愛かったり目を引くデザインの一枚を引っ張り出したりもする。
「この辺は全部ジャケ買いなんだよね」いつだったか、部屋にあるCDを見ながら懐かしそうにママが言ってたなあ。その言葉の意味がすぐにはわからなかったけれど、つまりいつもマリンがしているのと同じように“可愛かったり目をひくデザインの一枚を引っ張り出して”買うことだと聞いて納得した。昔はそうやってお店で選んで音楽を買っていたんだ、とちょっと楽しそうな気がする。
夜10時を過ぎた頃、音楽を聴きながらベッドでゴロゴロしていたマリンは、ふと思い立ち引き出しから一枚のカードを取り出した。この前学校帰りに行ったあの場所の“SCREAM!!”と書かれた白いカード。
あの日「あげるよ」と渡したばかりのものを逆に差し出され呆然としているマリンに、男は言った。「気が変わったら来てよ。イベントがある時連絡するから」
「あんなこと言ってたけど、連絡先だって知らないのに……」
そう思ったとき、白かったはずのカードが光り始めた。
CDみたいにいくつもの色を帯びながら。