見出し画像

「ドル円相場と○○の関係」という都市伝説④日米の金利差

「FRB(アメリカの中央銀行)が政策金利を引き上げると、円安ドル高になる」という都市伝説がある。

要するにこういう理屈である。
「ドルの金利が相対的に高くなると、ドルの魅力が高まる。すると世界中のマネーは、魅力を増したドルを買う(ドルの需要が高まる)。するとドルの通貨価値は上がる、つまり円安ドル高になる」。

本当なのか調べてみた。


過去20年を見ると、アメリカの政策金利が上昇した期間は合計3回。
2000~2001年、2004~2007年、2017~2019年頃である。

画像8


一方、日本の政策金利は、2000年以降、ほぼ0%前後で横ばい。

画像8


そうすると、日米の政策金利差が拡大した期間は、過去20年で合計3回あるということだ。2000~2001年、2004~2007年、2017~2019年頃である。

画像8


さて、アメリカ政策金利は、ドル円相場と、どのくらい連動しているだろうか。並べて表示してみた。

画像4

三つの期間をそれぞれ拡大してみる。

まず一度目。2000~2003年頃。

画像5

まったく連動していない。
アメリカ政策金利の引き上げに伴って、ドル高になるどころか、むしろ円高になっている。そして金利の引き下げに伴って、ドル安になるどころか、むしろ円安になっている。

都市伝説は覆された。


続いて二度目。2004~2009年頃。

画像6

2004~2009年では、かなり連動している。
アメリカ政策金利の引き上げに伴って、円安が進行している。そして金利の引き下げに伴って、円高が進行している。

「FRBが政策金利を引き上げると、円安ドル高が生じる」という都市伝説は見事に立証された。


最後に三度目。2015~2020年頃。

画像7

さほど連動していない。というか2017年以降、ドル円相場そのものがほとんど動いていない。


§ 中間まとめ
・過去20年の中期的なスパンでみると、日米の政策金利差は、ドル円相場に影響を及ぼさなかったといえる。
・ただし、2004~2009年頃の短期的なスパンにおいて、両者は一時的に連動していた。

以上の説明で納得する人は、きっと騙されやすい人にちがいない。
次回に続く。


§ 用語集、参考webサイト
・アメリカの政策金利:
FF金利。出所は「FRED」より。
・日本の政策金利:1994年まで「公定歩合」が、2013年4月まで「無担保コール翌日物」が、政策金利の役割を果たしていた。本記事ではデータの連続性を考慮して、「3ヶ月LIBOR」を使用。出所は「global rates.com」より。
・LIBOR:金融機関同士の短期的な融資に付される金利のこと。基本的には政策金利に連動するが、リーマンショック、コロナショック時など、信用不安が表面化するとき、政策金利から瞬間的に乖離することがある。これはLIBORが、純粋な金利指標に信用リスクを上乗せしているためである。
2021年以降、LIBORは廃止される見込み。
詳細はwikipedia、および「ファイナンシャルスター」に詳しい。
・その他、チャート作成には「TradingView」を使用。 

§ 2020.03.25 加筆修正



あなたのグラスのてっぺんを、私のグラスの足元に。私のグラスのてっぺんを、あなたのグラスの足元に。ちりんと一回、ちりんと二回。天来の響きの妙なるかな! byディケンズ。Amazon.co.jpアソシエイト。