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私と橘川幸夫/平野友康

 これまで僕は、橘川幸夫から何度も雑誌を作ろうとか、こういう企画をしようと数限りなく誘われてきました。彼の企画には、どこか昭和の懐かしい匂いが漂い、常に面白さがありました。毎回彼の話を聞くのが楽しかったし、こんな人は自分の周りにはいませんでした。

 橘川の企画は、何かが売れるとか流行るとかではなく、企画を通して人々の関係やその人自身が変わっていくことが目的でした。その変化が集団としても起こるのです。私は過去何年にもわたり多くの企画を聞いてきましたが、その中でも特に多かったのが雑誌を作ろうというものでした。例えば、大学内でパンフレットを作るために編集部を設置しようという提案が多かったです。「なぜ外部の広告代理店やプロのライターに頼むのか。なぜその中間の代理店に頼むのか。内部でやったほうが良いじゃないか」と彼は言っていました。この意見には一理あると感じました。

 数年が経ち、僕は糸島でまちづくりをするようになりました。その中で感じたのは、例えば新しいコミュニティの脆さです。テーマや企画に集まってコミュニティを作ることは悪くないのですが、もともと存在しなかったものだから常に存在が脆いのです。一方で、代々続いてきたものや生活に必要なもの、何十年も続いている地元の関係性はしっかりと地に足がついています。例えば、糸島の運送会社「イトキュー」は、毎朝150台ものトラックが市内を走り回り、生産物を市場に運んでいます。これは非常にグラウンデッドな関係性を持つ組織です。

 僕は技術者として、新しいコミュニティを作り出そうと考えがちですが、現実的でグラウンデッドな組織がどう変わるかが重要だと感じるようになりました。橘川が言う「換骨奪胎」は、しっかりとした組織が新しい視点を手に入れて変わっていくことです。これは非常に大切な取り組みだと思います。

 橘川の企画は、一見普通に聞こえる提案でも、その根底には組織や関係性の変化があり、非常にクリエイティブです。雑誌「イコール」もその一環で、橘川はこれを多くの人を乗せる乗り物のように考えています。彼は、未来を見るセンサーと過去を見るセンサーを備えた雑誌を作り、それでより精度を上げていきたいと言っています。前には未来を見るセンサー、後ろには70年代を見る過去へのセンサーをつけて、雑誌を探検の乗り物として捉えています。

 昨晩、久しぶりに橘川の深呼吸講義「永久革命」を聞きました。彼はライブで講義をしました。橘川は非常に現実的で、現実世界と仮想空間を探検する探検隊のようです。彼は振り子理論やよはとつ理論を用い、常に新しい視点を提供しています。

 橘川のよはとつ理論とは、人が最初に寄り添い、次に弾けて孤独になり、そこでとどまり、最後に本当に人と繋がるというプロセスです。それを、よ、は、と、つ、と呼びます。

 昨晩の彼の講義は、インターネット大航海時代を見据えたもので、非常にクリエイティブでした。彼の話を聞くことで、現実的な組織の重要性と新しい視点を持つことの大切さを再確認しました。

 橘川は、「遊ぼうぜ」と常に言っています。彼は「死ぬまで遊ぶぜ」という精神を持ち、70億人が70億通りの「人類の可能性」を追求しているのだと言います。引きこもっている人も、タバコ屋のおばちゃんも、デビッド・ボーイも、坂本龍一も、みんな何かを追求している仲間なのだと。橘川は、その可能性の追求を「報告」しあうことが「表現」であり、それが他の人に間接的に影響を与え、次の生命に引き継がれていくと信じています。

 橘川の世界観は、過去と未来の両方を見据えつつ、現実的な視点を持ちながらも、新しいアイデアや関係性を探求し続けるというものです。彼の振り子理論では、常に一つの方向だけを信じるのではなく、その反対側も意識し、信じているものも疑ってみるという姿勢が重要です。

 橘川は、常に探検を続ける精神を持ち、雑誌「イコール」をそのための乗り物として位置づけています。彼のアプローチは、単なる出版物としての雑誌ではなく、人々が集まり、新しい視点やアイデアを共有し、探検するためのツールとしての雑誌です。

 橘川幸夫は、ライブの人間であり、歌を歌う代わりに授業をし、講義を行うことで知られています。彼の深呼吸講義「永久革命」では、川の時代から海の時代への移行をインターネットに例えて説明し、フラットな世界での探検を提唱しています。彼は、現実世界と仮想空間、そして人々の心の中の意識を探検することに焦点を当てています。さらに、橘川は、未来と過去を見るセンサーを備えた乗り物としての雑誌を探検の道具としています。

 まとめとして、橘川幸夫は、その独自の視点と斬新なアイデアで、人々の関係性や組織の在り方を変革し続けています。彼の提案や理論は、現実的でありながらも非常にクリエイティブで、新しい視点を持つことの重要性を強調しています。彼の「遊ぼうぜ」という精神は、人生を楽しく、意義深く過ごすための鍵となるものであり、それぞれが自分の可能性を追求し続けることを促しています。橘川の世界観は、これからも多くの人々に新しい視点を提供し続けるでしょう。

追伸

 そんな「橘川幸夫さんの活動を支援する会」ができたそうです。参加お申し込みはこちらから。彼の活動資金になりますので、みなさまどうかよろしくお願いします。


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