2019年紅白歌合戦「不協和音」(欅坂46)レビュー/坂道を降りていく者。
2019年紅白歌合戦「不協和音」(欅坂46)レビュー
1.坂道を降りていく者。
人は、日常の中に生きている。日々の何気ない時間の流れの中に小さな事件が散りばめられていて、穏やかな空気に包まれている。しかし、そうした平穏な日常は、「誕生」と「死」という、日常とは比べ物にならないような巨大な非日常にはさまれている瞬間(まばたき)のような人生だ。多くの人は、そうした非日常を意識することなく、日々のルーティンに追われて過ごしている。
しかし、少しの人間が、この掴みようのない非日常について意識してしまう。意識してしまうが、やはり少しの人間の中の、多くの人は、何食わぬ顔でやりすごしてしまう。そして、少しの人間の中の、また少しの人間が、意識した非日常に向かい合い、その輪郭を触り、拡大し、表現という形で、日常を生きる人たちに、問題意識を突きつける。
日常の中の非日常を意識したことのある人は、平手の問題意識が刺さるだろうが、意識しない人には、説明をすることは出来ない。
平手友梨奈の2019年、紅白歌合戦、不協和音を聞いた。あれは平手が15歳の時だったろうか、秋元康がラジオの番組で「平手は、他の子たちとは、目指すものが違うから」と発言した。平手は、平手だけが、他のアイドルのように日常の喜怒哀楽を表現しようとしたのではなく、その感情の奥底にある非日常に触れようとしていたのだろう。他のアイドルたちが坂道を駆け上がる、と頑張っている時に、平手だけが、坂道を降りて行ったのだろう。
2019年の紅白のステージが、平手の目指していた空間の一つだったのかも知れない。そのあとは、ゆっくり休養して欲しい。
2.笑顔の意味
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