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断橋 2


 私は、たくさんの友人知己がいる。30年、40年と付き合っている人もたくさんいる。その大半は、メディアを通して知り合った人たちである。私が編集していた雑誌の読者であったり、書いた書籍の読者であったりした人が大半である。Twitterなどの言葉に触れて連絡くれた人もいる。

 人類は、最初は、生まれた家族や地域の中てしか人間関係は作れなかった。やがて都市が生まれ、同じ学力の学生たちが都市の大学に集まり、新しい人間関係が生まれた。実際、大学というのは、生活風習の違う、さまざまな地域の学生たちが集まるのが新鮮であった。

 今でも、生まれた地域の関係や小中学校の同窓生、大学の友人たちと、一生の親友として日常的に付き合っている人は多いだろう。私は、ほとんどない。

 私は、1970年に大学をやめて、雑誌メディアの世界に入った。既存の仕事であれば、また、それぞれの業界の中で仕事を通して人間関係が生まれ、友人が増えるだろう。しかし、私は「参加型メディア」というのを生涯のテーマにしてしまったので、出版業界の人間関係よりも、読者との人間関係の方が増大した。

 ロッキング・オンは、4人でスタートしたのだが、私以外の3人は、読者と結婚した。70年代に、講談社の伝説的な編集者である内田勝さんと出会ったのだが、彼にそのことを話すと、とても驚いた。旧来の出版業界にとっては、読者は客であり、客との関係は商品メディアを通してでしか成立しないので、直接、仲良くなるなんてありえないし、まして結婚なんて、考えられない、と。それは、アイドルがファンに手を出した、みたいな関係を想像されたのかもしれない。

 しかし、70年代の私たちは、自分らがロックファンであり、読者もロックファンだから、同じ地平にいた。通常は、職場結婚や業界結婚が多い出版業界の中で、70年代ロッキング・オンは、メディアを通して、1対1の関係性を成立させていたのだと思う。

 メディアを通しての関係性を育む。2020年に、突然のコロナ情況に人類は襲われ、人々はオンラインの世界に、背中を押されるように突入した。Zoomが注目され、最初は、リアル世界の関係性を持ち込むように、友人や学校や職場の関係者と、オンラインでの交流や講義・業務にシフトしていった。

 しかし、やがて、オンラインで、新しい出会いが生まれ、新しい人間関係が發生しつつある。これこそが、情報化社会への幕開けだと思う。

 地縁、血縁、能力縁などは、本人が選択したものではなく、強いられた偶然性によって築かれたコミュニティの中での関係性である。しかし、メディアを通した関係性とは、個人と個人が、ある共通の目的性やテーマ性によって、それぞれが自発的に参加して出会った結果である。これまでの友情とは違う質の「友情」が生まれるはずである。少なくても「腐れ縁」ではない。

 オンラインで、対立や差異化を追求する時代は、終わりはしないだろうけど、別の役割が見えつつある。それはオンラインがはじまった時から、見えていた可能性であるが、Zoom環境によって、より明確化されたものだと思う。

 YAMI大学・深呼吸学部は、その動きを推進していきたい。


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