飲食店で働いていてよかったと思うこと

今でこそ、企業で働いているわたくしですがついこの間まで飲食店で仕事をしておりました。まぁ言うても、今も食事に関する仕事をしていますが、そんな中、今日ふと「飲食店で働いていてよかったな」と思うことがあったのでざっくりとまとめてみたいと思います。

まず、自分は飲食店で働いて、そりゃあもちろん長時間労働なんて当たり前の世界で休憩がない日だってザラにありました。
でもブラックだと思った事は一度もありません。
記憶を美化するとかじゃなくて、本当に楽しかったと今でも思っています。
キッチン内で他のコックと胸ぐら掴んで喧嘩したなんてのは良い思い出で良いことも嫌な事もたくさんありましたが総じて言えば本当に楽しかったです。

・なぜこんなにもブラック視されるのか?

飲食店がなぜこんなにもブラックであったり、敬遠されるのかについてですがそこには歴史的な背景があると思うのです。
日本の飲食店と言えば、やはり日本食や和食、割烹、精進料理、寿司、天ぷらなど職人の世界観が色濃く文化として存在してます。
その中にあって、飲食における師弟感というのはやはり

「教えてやっている」

という感覚が非常に強く、自分が飲食店に務め始めた14年前でもその色はかなり強かったと覚えています。職人さんなんか基本、マジで怖いですし、先輩もマジで怖かったです。普段優しいんですけどね。

基本的に師弟感という概念が存在していて先輩は教える、後輩は教わる立場だからこそ師弟、というヒエラルキーが存在してたんです。
このヒエラルキーつまり序列が成立していたのも飲食店独自のシステムと言っても過言ではない「独立」という制度があったからこそ成り立っていたと思うのです。

「独立する術を教えるからこそ安月給」

飲食店の場合、必要なモノは資金とノウハウだけです。
もちろん、人脈も必要ですが、基本的に資金とノウハウされあれば運営出来ます。だから、飲食店は参入障壁が低いため、ありとあらゆる業界から参入者が後をたたないのです。(8割は3年以内に消えますが)

そのうちのノウハウの一つが「料理人としてのスキル」です。
味付けやもちろん、献立、仕込み、仕入れ、片付け、掃除などそれに関わる項目は数知れません。
それらに関するしっかりとしたスキルと資金があればすぐに独立出来ます。
ノウハウってコカ・コーラ社で言えばコーラのレシピと同様、本来は外様だけではなく、身内にすら教えたくない情報なんです。
もしあなたが飲食店のオーナーであったとしたら、それを安々と新人に教えたいと思いますか?

思わないですよね?

だから昔の飲食店では長い修業期間を経ないと本当のスキルを教えてもらえなかったんだと思います。
まぁその中にあっても基本、教えてもらえませんよ。
知りたかったら盗め、が基本ですし、やったこと無いことを「やれ」って言われて「出来ません」なんて言ったら「お前は何を見てたんだ」って怒られますからね。w
今の飲食店なんてそういう事も手取り足取り教えてくれて情報すら盗み放題だらかいくらでも模倣的な飲食店が乱立するんですよね。

・飲食店でヒトとしての基礎を教わった

自分は飲食業界に関われて本当に良かったと思っているうちの一人です。
それと言うのも飲食業界で本当にヒトとしての基礎を教えてもらったからです。挨拶、気配り、心配り、配慮、おもてなし、人を想う心、本当に多くを学ばせて貰いました。
その中でも、学ばせて頂いて本当に今でも感謝していることがあります。
それは

「掃除」

です。
飲食店での仕事における基本中の基本は掃除です。
これが出来なければ何も教えてもらえません。
とにかく掃除です。朝一も掃除、昼一も掃除で、終わりも掃除です。
とにかく掃除が基本です。これが出来なければ、ずっと使いまわしです。
それもただの掃除じゃないんです。

1.早く終わらせる
2.確実に終わらせる
3.とにかくキレイにする

これが出来ていなければ次の仕事をさせてもらえません。
とにかく掃除を徹底的に教えられます。
テーブルの拭き方、床の掃除の仕方、トイレの壁の拭き方など細かな掃除の仕方を学びました。
だから、今でも自然と掃除出来ます。嫌とかそういう観念とかまったくなく自然と掃除が出来るです。
普段、生活していても掃除が基本になっています。
朝起きたら床掃除して、トイレが汚れていてばトイレ掃除して、テーブルが汚れていれば自然とテーブルを掃除します。
すべて飲食店で教わった所作が、今の生活の基盤になってます。

逆にですよ。
そのお陰で人を見る目が養われました。
まず、掃除しない人を信頼しなくなりました。
心の病を患っているなら話はもちろん別です。
ですが、掃除って本当に人生の基本なんです。
その基本が出来ていない人に、信用出来る人ってまずいないんですよ。
掃除ってまず、自分以外の人も自分も含め不快になるものを取り除こうとする気概がないと「しよう」と思えないんですよ。
その意識が無い人が人様に対する思いやりがあるかと聞かれれば確実にNOだと思うんです。

きれい好きである必要は無いと思います。でも掃除が出来ないって時点で
確実に「なにか」あります。
あるダイエットジムで働いていたトレーナーに聞いた話なんですが
「痩せられない人は概して部屋が汚い」
と言っていました。その人はオンラインでダイエット指導をする仕事をしていて、携帯のカメラ越しに映る部屋が汚い人は大概太っていたそうです。

脳内の整理も然り、部屋の整理も然り、掃除って本当に人生の基本だと思うんです。
その掃除をわたしが教わったのは飲食店でした。
ディズニーなんかでも掃除って徹底されてますよね?
見たくない物を見せないっていうのはおもてなしの基本でもありますし、自分以外の人に対する配慮の基本でもあると私は思うのです。

その基本を教えてくれた飲食店の仕事がブラックか?
と聞かれれば私はNOだと言い切ります。

飲食店という場所は本当に多くを学べる場所です。
人との付き合い、仕事の優先順位をつける能力、料理能力はもちろん人との関わり方、掃除も経営も学ぼうと思えばいくらでも学べる環境です。
汗をかくなら営業職も飲食も一緒です。両方経験がありますがどちらもまた違った辛さがありますし、甲乙はつけられません。
しかし、やり切ることの清々しさはどちらの仕事にもあります。

飲食店の仕事は確かに重労働ですし長時間労働ですが学ぶ事も本当にたくさんあります。
もし、そのステージが今の自分に必要無いというのであれば他を目指すべきですが、基礎の基礎から学びたい人にとっては飲食店というのは本当に学びの多い場所ですので一度経験してみるのも良いと思います。

ただし、金儲けだけが目的のチェーン店ではなく、ちゃんと飲食に対する志がある企業や店舗に務めるというのは言うまでもなくですが。

楽して金を稼ぐコトもできますが、経験値だけは楽して稼げるものではありません。
是非、若いうちに飲食店も経験してみてはいかがでしょうか?

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