新型コロナウィルス騒動でS&Pは約12%下落、ブラックスワンとなり得るのか

米国株式市場は新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響を巡る懸念が根強く、続落して終了した。
ただ、主要3指数はそろってこの日の安値からは上向いて取引を終えた。

過去最高値から約12%下落

S&P総合500種は過去12営業日のうち10営業日で下落。
S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズによると、2月19日に終値としての過去最高値を付けてからの下落率は約12%に達し、時価総額にして3兆4300億ドルが消失した。
ただ、この日は取引終盤にかけて3指数は下げ幅を縮小。
BNYメロン・インベストメント・マネジメント(ニューヨーク)の首席ストラテジスト、アリシア・レバイン氏は、連邦準備理事会(FRB)当局者が新型ウイルス感染拡大の経済への影響を緩和するために金融政策に加えその他の手段も利用する可能性を示唆する発言が出たことが株価の支援要因になったと指摘。
ただ「経済にどのような影響が出るのかはまだ極めて不透明だ」と述べた。
米債券市場では10年債(US10YT=RR)が0.66%まで低下し、この日も過去最低水準を更新。
国債利回りの低下は金融株の売りにつながり、S&P500銀行株指数(.SPXBK)は4.7%低下。週初からの下落率は8%を超えた。
この日はトランプ米政権がクルーズ船の利用を控えさせる措置を検討しているとのロイターの報道を受けクルーズ船運航株が売られ、カーニバル(CCL.N)は2.6%、ロイヤル・カリビアン・クルーズ(RCL.N)は1.2%安となった。
ジョン・ハンコック・インベストメント・マネジメント(ボストン)の共同最高投資ストラテジスト、エミリー・ローランド氏は「この日の下落は全て新型ウイルスの封じ込めに向けた取り組みに起因している」とし、「封じ込めに向けた措置は商業活動や消費活動の抑制につながる可能性があり、市場はこれに反応している」と述べた。
朝方発表された2月の米雇用統計に市場はほとんど反応しなかった。
週足ではS&P総合500種が0.6%、ダウ工業株30種が1.8%、ナスダック総合が0.1%、それぞれ上昇した。
この日の取引ではS&Pの全11部門が下落。中でもエネルギー株(.SPNY)が5.6%と大きく下げた。
米ボラティリティー・インデックス(恐怖指数、VIX)(.VIX)は一時2015年8月以来の高水準を付けたが、株価が下げ幅を縮小するに従い低下し、取引終了時点では2.32ポイント上昇の41.94となった。

急落のレジャー銘柄に押し目買いの動きも

新型コロナウイルスの感染拡大への不安から今週何回も急落した米株式市場だが、ウイルスを巡る状況に振れる展開が続くと予想される。
ただ、こうしたウイルス相場のなかで売り込まれてきた航空、ホテル、クルーズなどの銘柄には、押し目買いの機会を窺う動きも出始めた。
1000ドルもの急落となるなかで特に売りを浴びたレジャー関連株はかなり妙味がでていると一部投資家は指摘する。

例を挙げると、アメリカン航空グループ(AAL.O)の予想株価収益率(PER)が3.3倍。
年初は5.4倍だった。ホテル運営のマリオット・インターナショナル(MAR.O)は17.6倍(年初23.2倍)、クルーズ船のカーニバル(CCL.N)は6.4倍(年初11.6倍)といった状況だ。
新型ウイルスが発生国の中国以外で猛威をふるうようになり、これらの銘柄に対する悲観的見方が消えたわけではないが、このところの急落の押し目を狙う向きのレーダーに入っているようだ。

アクティブ型上場投資信託(ETF)を手掛けるアドバイザーシェアーズは、ハワイアン航空の親会社(HA.O)やスカイウエスト(SKYW.O)など国内線を主力とする航空会社株を買い増し、アメリカン航空株を空売りした。
「規模が小さめの地域航空会社は、今の(需要低下の)危機を乗り越えられる。
大手は苦境が続くだろう」とノア・ハマン最高経営責任者(CEO)は話した。
ハリス・ファイナンシャルのファイナンシャルアドバイザー、ジェイミー・コックス氏は、保有するデルタ航空株に強気姿勢を崩していない。
業界再編により会社が少なくなり、さほど運賃を値下げしなくても乗り切れるとみている。
ただクルーズ船運航会社には悲観的。横浜港の「ダイヤモンド・プリンセス」の集団感染問題が投資家心理を冷やすと指摘する。
「航空会社の中国便運休よりも、ダイヤモンド・プリンセスのほうが、ずっと長く人々の記憶に残るだろう」とコックス氏は述べた。

新型コロナウィルスは2020年のブラックスワン

ベンチャーキャピタル世界大手のセコイア・キャピタルは6日、新型コロナウイルスは「2020年の『ブラックスワン(予想が難しく起きた時の影響が甚大な事象)』」であり、今後の経済ショックに備えるべきとするノートを公表した。
セコイア・キャピタルはこの中で、各社は経費削減を検討し、支出計画や従業員数を見直すほか、資金調達・販売環境の変化に備えるべきだと訴えた。
ノートは「約50年近くあらゆる景気後退を乗り越える中で、われわれは重要な教訓を得た。それは状況の変化に素早くかつ断固とした調整をしたことで後悔したものはいないということだ」とし、「景気低迷局面において、売り上げやキャッシュの水準は常に経費よりも速いペースで落ち込む。
ある意味でビジネスは生物学に酷似している。(進化論を提唱したチャールズ・)ダーウィンが考えたように、生き残るのは『最も強い者、最も賢い者ではなく、変化に最も順応した者』だ」と指摘した。

総括

投資家は今後の不透明さに不安を覚えている。

新型コロナウィルスの拡大はいつ収まるのか、
移動制限、イベント中心による経済影響は。

先が見えないなかで、正解を見つけることは難しい。
できることは、調整しながら正解にたどり着くことである。
何度もトライアンドエラーして、うまくいったものが正解となるのだ。

それには痛みが伴うが、これが早ければ早いほど痛みは少なくて済む。

できることをやろう。
手洗いうがい、睡眠と食事、人混みを避ける、買い占めはしない。

出典

ロイター 3/7 米株続落、新型ウイルス懸念で 週足では小幅高

ロイター 3/7 波乱の米株式市場、急落のレジャー銘柄の押し目狙う動きも

ロイター 3/7 新型ウイルスは今年の「ブラックスワン」=セコイア・キャピタル