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ばけものフレンズ 第3話

1ー1 学校の保健室

 ナシと保健室の先生、化け狸のココ。
 ココ、ナシの体から機材を外す。

ココ「はい これで終了」
ココ「特に異常無し っと」
ココ「気分はどう?」
ナシ「…普通です」
ココ「良かった でも何かあったらすぐに言ってね」
ココ「前代未聞よ 黒い影わるいものを吸収して 使役するなんて」
ココ「でも それが またいつ暴れるかもわからない」
ココ「あなたがまた取り込まれることだってありえる」
ココ「そうなる前に祓うことをオススメするけど」
ナシ「少し 考えさせてください」
ココ「悩め若人わこうどよ そのときキミは 美しい」
ナシ「なんですか それ?」
ココ「エールよ さ 今日はこれでおしまい」
ココ「気を付けて帰りなさい」
ナシ「…ありがとうございました」

 ナシ、保健室を出る。
 誰もいないのを確認してから、黒い腕を出す。
 その腕を、優しく撫でる。
 ココの言葉を思い出す。
  またいつ暴れるか分からない。
  取り込まれることだってありえる。
  そうなる前に。
 溜め息をついて、腕をしまう。
 ナシの妖怪アンテナアホ毛が反応する。

ナシM(黒い影わるいもの? でも 反応はすごく弱い)
ナシM(一応 行ってみようか)

1ー2 草が生い茂った公園

ナシ「反応は ここから ん? 誰かいる」

 草むらの中。
 小柄な女子高生が、しゃがみこみながら、
 何かに話しかけている。

ニカ「怖がらなくて大丈夫だよ」

 ナシ、静かに近づき様子を見る。
 女子高生の前には、子猫サイズの小さな黒い影がいる。
 見るからに弱っているが、必死で威嚇している。
 女子高生は餌を差し出している。
 その腕には、ひっかき傷がいくつもある。
 ナシ、小さい頃を思い出す。
 道端の子猫に、同じようにした記憶。
 女子高生に声をかける

ナシ「どうしたの?」

 女子高生、ビックリしてナシを見る。

ニカ「これはその あの…」
ナシ「いいよ 助けたいんでしょ」
ニカ「はいっ でも…」
ナシ「私がやるから」

 ナシ、黒い腕を出し餌を受けとる。
 それを小さい影に差し出す。
 小さい影、少し警戒してから餌を食べる。
 のどを鳴らすと、黒い腕のなかで眠ってしまう。

ニカ「すごい」
ナシ「あなた 名前は?」
ニカ「ニカ です ありがとうございます」
ナシ「お礼はまだ ここにいると危ないから」
ナシ「もっと目立たないところに移動する」
ナシ「この腕を隠したいんだけど」
ナシ「一緒に来てもらえる?」
ニカ「はいっ!」

1ー3 学校の裏 誰も来ない山の中

 ナシ、ニカ。
 山の中で、見つかりにくそうな場所を見つける。

ナシ「ここなら大丈夫かな」
ナシ「これでよしっと さて話を聞かせて」
ナシ「ニカはどうして この子を助けようとしたの?」 
ニカ「わたし 呼び寄せちゃう体質みたいで」
ニカ「悪い子も多いんですけど 良い子もいて」
ニカ「この子は悪い子じゃなさそうだったから」
ナシ「黒い影わるいものだよ 良い子なんているの?」
ニカ「いますよ! みんなが言うほど」
ニカ「悪い子ばかりじゃないです」
ニカ「たぶん 悪い子ばっかりが目立つから」
ニカ「でも良い子だって いるんですっ」
ニカ「へっぷちっ」
ナシ「どうしたの?」
ニカ「わたし 黒い影わるいもののアレルギーみたいで…」
ナシ「なんぎだねぇ」
ニカ「えへへ」
ナシ「この子は大丈夫だから しばらく様子を見てあげな」
ナシ「私も 見に来るからさ」
ニカ「お姉さん お名前は?」
ナシ「ナシだよ」
ニカ「ナシさん ありがとう!」

 ニカ、笑顔を咲かせる。
 その表情は誰かに似ていた。

ナシM(誰だったかな?)

1ー4 放課後 屋上

 ナシ、メガネを屋上に呼び出し、相談をする。

ナシ「ガネっち 聞きたいんだけどさ」
ナシ「悪さをしない黒い影わるいものってさ いると思う?」
メガネ「きっと いますよ」
ナシ「ホントか?」
メガネ「はい 生き物って環境によって変わるんです」
メガネ「だから そういう個体もきっといますよ」
ナシ「だよなっ! 私もそう思ってたんだよ!」
ナシ「うんうんっ」

2ー1 学校の裏 誰も来ない山の中

 ナシ、ニカ。
 例の場所で、小さい影を見ながら話している。

ニカ「ナシさん どうしよう… 怪我してる」
ナシ「なにかに襲われたんだな」
ナシ「まだ体力がないから なおりが悪いんだ」
ナシ「大丈夫 たぶん なおせる」

 ナシ、黒い腕を出して小さい影を抱き上げる。
 腕が傷をなでると、傷がふさがる。

ナシ「これでよしっ」
ニカ「ナシさん ありがとう」
ニカ「メコもよかったね」
ナシ「名前つけたの?」
ニカ「そうなんです めこ~ って鳴くからメコ」

 ニカ、メコに手を伸ばす。
 引っ掛かれて傷になる。

ニカ「まだダメみたい へっぷちっ」
ナシ「ニカの傷は治せないから 注意してね」

 ナシ、絆創膏を差し出す。
 ニカ、嬉しそうに受け取り、傷に貼る。

ナシM(この かわいくて放っておけない感じ)
ナシM(どこで感じたんだっけ)
ナシM(それは さておき)
ナシM(メコ 大きくなったな)
ナシM(このまま大きくなったら…)
ナシM(…まぁ 悪く考えすぎか)
ナシM(生き物は環境で変わる)
ナシM(私たちに慣れれば)
ナシM(メコも悪さはしないはず)

 ナシ、影の腕でメコを抱き抱える。
 メコ、のどをならす。
 ニカ、笑顔で手を出して引っ掛かれる。
 ナシ、絆創膏を渡す。

2ー2 放課後の教室

 ナシ、ナナミ。
 ナシが笑顔でナナミに話しかける

ナシ「ナナミちゃん 一緒に帰ろっ」
ナナミ「ゴメンっ!」
ナナミ「今日は絶対はずせない用事があって」
ナナミ「また明日ね」

 ナナミ、足早に教室を出る。

ナシ「なんだろう」
メガネ「…気になりますよね」
ナシ「っわぁ 急に出てくんなよっ!」
メガネ「気になりません?」
ナシ「…なる」
メガネ「ナシさん 共同戦線といきましょう!」

 メガネ、手を差し出す。
 ナシ、その手を握り返す。

2ー3 山へ向かう道

 見つからないように、誰かの後を追うナナミ。
 目が悪く何度も物音を立ててしまうが、
 驚異的な身体能力でカバー。
 尾行を続ける。
 そのナナミを尾行する、眼鏡をかけたナシ。

ナシ「ヤバい 見ててハラハラする かわいい」
ナシ「誰を尾行しているんだろ? ガネっち 見える?」
メガネ「もちろん 視界が変わるので注意してください」
メガネ「女の子 うちの制服ですね」
ナシM(ウソっ 何で気がつかなかったんだ…)
ナシM(見たことあるに決まってる)
ナシM(ナナミちゃんに そっくりだ)
ナシ「ナナミちゃんの 妹だ」
メガネ「妹さん!? じゃあ なんで尾行を?」
ナシ「わからない でも…」
ナシM(この先には あの山がある 嫌な予感がする)
ナシ「ねぇ ガネっち もし何かあったら」
ナシ「私の味方でいてくれる?」
メガネ「? …もちろんですけど?」
ナシ「約束だよ」

3ー1 学校の裏 誰も来ない山の中

 ニカ、ナナミ、眼鏡をかけたナシ。
 以前より小さくなっているメコ。
 ニカ、絆創膏だらけの手に餌を持っている。

ニカ「今日はね チュールを持ってきたんだ」
ニカ「気に入るかな?」

 ニカ、チュールを差し出す。
 メコ、その手を引っ掻く。
 ニカが落としたチュールを丸のみにする。

ニカ「置いたほうが食べやすかったね へっぷちっ」
ニカ「でも なんだか小さくなってない?」

 そこに、ナナミが出てくる。

ナナミ「最近ケガが多いと思ったら」
ナナミ「そういうことだったのね」
ニカ「お姉ちゃん!?」
ナナミ「今すぐ祓います そこをどきなさい」
ニカ「なんで? メコは何も悪いことをしてないよ!」
ナナミ「ニカ あなたの手を見てみなさい」
ナナミ「その影わるいものは ニカを傷つけてる」
ナナミ「十分に悪いことをしてる!」
ニカ「これは違うよっ」
ナナミ「違くないっ!」

 ニカ、唇を横に結ぶ。
 メコを抱いて逃げようとする。
 メコが伸びる。その下は地面に続いている。

ニカ「えっ?」

 ニカの周りの地面が盛り上がる。
 とても大きくなったメコの本体ほんたい
 地表に出てくる。
 メコの本体、ニカを取り込もうとする。

ナナミ「ニカをはなせっ!」

 ナナミ、ニカに向かって飛ぶ。
 メコ、腕をしならせ払い落とす。
 ナナミ、地面に叩きつけられる。
 さらにメコの黒い腕が襲いかかる。
 ナシ、ナナミの前に立つ。
 黒い腕でメコの腕を受け止める。
 ナシの表情は、前髪に隠れて分からない。

ナシ「メコ ごめんな ニカを 放してくれないか?」

 メコ、おそるおそるニカを解放する。
 ナナミ、ニカを抱いて距離をとる。

ナシ「なぁ ガネっち」
ナシ「悪さをしない黒い影わるいものって …いると思うか?」
ナシ「信じてたのに …わからなくなった」

 ナシ、涙が流れる。

メガネ「いますよ」
メガネ「ナシさんの影は」
メガネ「ナシさんの力になっているじゃないですか」
ナシ「…そうだったな こんなに近いのに 気がつかなかった」
ナシ「ガネっち ありがとう」
ナシ「ナナミちゃんの所に 行ってやってくれ」

 メガネ、ナシを離れてナナミの所へ。

ナシ「メコ…」

 ナシ、メコに向かってなにかを言う。
 それから、巨大な黒い腕でメコを叩き潰す。
 メコ、跡形もなく消える。

4ー1 後日 誰も来ない山の中

 ニカ、メコと書かれた石を置く。
 目を細め、涙を浮かべながらその石をなでる。
 へっぷちっ。とくしゃみが出る。
 ニカの後ろに、黒い肌の少年が立つ。

??「ニカ ありがとう」
ニカ「ん?」

 黒い肌の少年、走ってどこかに行ってしまう。

ニカ「…メコ?」

 ニカ、涙をふいて立ち上がる。

ニカ「ありがとうねっ メコ」

 ニカ、両頬をパンと叩き、歩き出す。

4ー2 さっきとは別の場所

 黒い肌の少年=メコ、ナシ。
 メコ、待っていたナシに抱きつく。

メコ「行ってきた」
ナシ「じゃあ 私たちも行こうか」
メコ「うんっ」

 メコ、とけるようにナシのなかに入っていく。

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