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ルッキズムと上手に付き合うZ世代。MERYが斬る最新の”かわいい”観

 こんにちは。MERY Z世代研究所の西村です。
前回に引き続き、Z世代の女性の一人である私が、Z世代を生き抜く中、まさに肌で感じたリアルな「かわいい」観を発信します。

 トレンドに敏感なZ世代の価値観や感性は、めまぐるしく変化しています。その中でも、SNSの発達により「かわいい」に対する価値観は、ときにシビアに変化します。しかし、多様性が広く受け入れられるZ世代の中でも、共通した「かわいい」観があるように思われます。

 世の「かわいい」観の変化に戸惑い、紆余曲折がありながらも、自分が納得できるそれぞれの価値観を見つけた、Z世代の「かわいい」観の変遷を見てみると、Z世代の本質が見えてくるかもしれません。

1. 勝手に上がった「かわいい」の基準

 私たちも気付かない間に、どんどん「かわいい」に対する基準が上がっているように思います。

 それを象徴するトピックとして例えば、以下が挙げられます。
(1)今や「脱毛」はスタンダードに
(2)パーソナルカラーや骨格タイプなど「自己分析」が必要に
(3)スキンケアは「成分」で選ぶように

 まず(1)脱毛については、多くの方が共感してくれるのではないでしょうか。少し前まで脱毛は、気になる人が気になる箇所だけを行う「+αの美容」でしたが、電車やYouTubeの広告の影響もあいまって、当然に求められるものになってしまいました。服に隠れて普段は見えない箇所までも、毛のないツルツル肌が理想とされ、これに苦しさを感じるZ世代の女性も、少なくないように思います。


 また(2)メイクやお洒落をするにも、自己分析や知識が前提になったように感じます。パーソナルカラーや骨格タイプ、顔タイプといった自己分析ツールの存在は、多くの人が知るようになりました。さらに、影響力のあるインフルエンサーやユーチューバーがそれらの診断を紹介し、自分に何が似合うのかを把握したうえで、メイクやお洒落をする人が増えてきました。

 他にも(3)美容領域では、成分に対する関心が高まっています。Twitterの美容アカウントでは、レチノールやナイアシンアミド、セラミドやアゼライン酸などのスキンケア成分について言及するツイートがバズりました。『innisfree(イニスフリー)』や『KIEHL'S SINCE 1851(キールズ)』といった気軽に買えるブランドからも、レチノール入りアイテムが発売されており、レチノール入りというポイントもきちんと訴求されています。まさに、成分を重視してスキンケアアイテムを選ぶという考え方の浸透が伺えます。

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2.「かわいい」のインフレが続く理由

 では、なぜこうも「かわいい」の基準は上がり続けるのでしょうか。

 今ならではの理由として、大きくふたつあるように思います。
(a)何が「かわいい」なのか、解像度が上がった
(b)膨大な情報により知識を得て、優劣がついてしまった

 SNSで多くの情報を目にしたために(a)以前よりも「かわいい」の解像度が上がったと感じる人も少なくないのではないでしょうか。今までは「どこか垢抜けないな」となんとなく感じていたことが、具体的にどこのパーツがどうだから垢抜けないと説明ができるようになってしまいました。中顔面や遠心顔などというフレーズは、TikTokなどを通じて10代のZ世代にまで浸透してしまっているほどです。

 また、コロナ禍でのマスク生活により、口元を見られたくないからマスクを外したくないというZ世代の声をよく聞くようになりました。目が大きくてキラキラしているのが「かわいい」の基準だった時代が終わり、マスク生活を経て「かわいい」には鼻や口元の重要性も高いということ多くの人が実感するようになったのかもしれません。

 具体的で明確な原因がわかってしまうと、具体的で明確な解決策もわかってしまいます。全てを解決できるわけではないのに、どんどん「かわいい」に対する理想ばかりが高まってしまいます。

 また、知識をたくさん得た弊害として(b)人の個性に優劣があるように感じてしまうことがあります。例えば「骨格〇〇が一番いい、骨格△△は損」という発言は、SNSでよく見る発言ではないでしょうか。どんなタイプも、得意とするものや苦手とするものがあって、優劣があるわけではないのに、どうしても優れているものをひとつに絞りたくなってしまいがちです。

 いいとされるタイプが流行れば、違うタイプの人の中には、それに寄せようとする人も現れます。それぞれが最も輝ける「かわいい」のタイプがあるはずなのに、ひとつの高い理想を抱いてしまうケースもあります。

3. 高まった「理想の自分」にはなれずに

 もちろん、時代の変化とともに「かわいい」も多様化しました。自己分析ツールが広まったといえど、似合うものに縛られずに好きなものを身に着けようという考えも同じように広まっており、さまざまな自己表現が受け入れられやすい雰囲気になりました。この雰囲気に救われた人もいるはずです。

 しかし同時に、自分の信じる「かわいい」を追求していくうちに、大きな壁に直面する人もいるのかもしれません。
 服やメイクといった[身に着けるもの]とは異なって、顔や体といった[備わっているもの]に関しては、活発な多様化が進んでおらず、圧倒的な存在感のある「かわいい」はやはり固定化されているように感じます。

 服やメイクなどは明日にでも変えることができますが、顔や体といった素材は、なかなか簡単には変えられないもの。いくら「かわいい」が多様化したといえど、やはり人気の「かわいい」は存在していて、インフレ化に気持ちがついていけない人も多々いるかもしれません。

4. そんなZ世代の「かわいい」磨きとは

 だからこそ、どんな「かわいい」にも共通するものを磨こうとする風潮が強まってきました。例えば、健康的な肌や髪、歯や体型などは誰か他人と比べられる相対的なものではなく、過去の自分よりもっと綺麗にしようなど自分の中で完結するものであり、これらを求めるような美容観が出てきたように思います。

 成分を重視してスキンケアアイテムを選ぶのも、健康的な肌に近づきたいから。ツヤツヤしてうるおっている髪の後ろ姿の写真を載せた、髪質改善を勧めるツイートがバズるのも、健康的な髪に近づきたいから。

 視点を変えて、Z世代のダイエット事情も見てみましょう。食事制限よりも、筋トレや有酸素運動など体を動かすことを重視するダイエット方法がほとんどではないでしょうか。「体重よりも見た目」という考えが浸透し、単に細い体よりも引き締まった体が好まれるようになりました。まさに健康美が定着したということだと思います。

 美容において避けたい、不清潔・不自然・不健康の中でも、特に不健康を避けたいムードは強まっています。「若いうちに無茶しよう」という刹那的なものより、「若さを酷使しない」という持続可能な本質を育てることに価値を見出しているZ世代が多いように感じます。

5. 数年後、数十年後を待てるZ世代

 止まらない「かわいい」のインフレ化に、戸惑ったり落ち込んだりしても、自分なりに納得のできる「かわいい」観をZ世代は見出しています。すぐには効果を実感できなくても、根本的な改善に繋がると信じて、モチベーションを高く「かわいい」を磨き続けられるのが、Z世代の特徴です。

 すぐに肌が白くなるわけではないけれど、将来のシミを防止するために日焼け止めを塗り続ける。すぐに痩せるわけではないけれど、いつか引き締まった体になる日を楽しみに筋トレを続ける。 

 コロナ禍を経て、健康美という「かわいい」観を確立し、成長を続ける様子を見るとZ世代はたくましいように思えます。長い時間をかけてようやく効果を実感できる、気の長い作業に対して、あまり苦痛を感じていません。
 遠い先を見据えるようになったZ世代。「数年後、数十年後の自分に役に立っていそう」と思えるものに惹かれるため、本質を磨きたいという欲求に応えられるアピール方法が肝になるかもしれません。

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