圏内
ひとりでどこかに行きたくなることがあった。
きっとみんな心のどこかで、ふとそんなことを思うときはあると思う。
今日の授業サボって知らない街に行こうかな、とか
仕事行かずに行けるところまで遠く行ってみようかな、とか。
でも大体の人はみんな、そんなことを思いながら電車に揺られて、降りたくもない駅で降りたり、いつもの信号を曲がって、停めたくもない場所に車を停めるの。
そんな自分を、嫌いになったり、する。
衝撃を求めているのに、打撃に弱かったり、奇妙を求めているのに、異質になれなかったり、なんてつまんないんだろう、と思ったり。
頭のおかしなことをすると、ものすごく気持ちが良い。
酒で酔っ払いながら、夜の街を全速力でかけてみたり。
降りてはいけない駅で降りて終電を見送ってみたり。
次の日のことなんか考えずに高い場所から街を見下ろしてみたり。
思ってもないことを叫んで景色を滲ませてみたり。
もっと小さなことでもいいや、
夜に洗濯機をかけたり、
昼間からスト缶を片手にしてみたり、
外が明るくなってから眠りについてみたり。
自分は変わっているとか、
自分はおかしいとか、
自分は普通じゃないとか、
自分は突飛だとか、
それが素晴らしいことだと思ったり、
それが憎らしいと思ったり。
こういうの、全部含めて、
私って、とても普通。
ありきたりで、よくいる人間。
人間らしくて、愛おしい。
知らない街に行ったら、知らない人になれるかって言われたら、そんなこと絶対になくて。
遠くに行ったら、普段の自分と離れられるかって言われたら、そんなこと絶対になくて。
でもたくさん、おかしなことしていたい。
おかしくて、つまらなくて、愛おしい、そんな誰かが自分だって思えたら、生きてる意味なんか考えなくたって、幸せの意味なんか知らなくたって、人生がそのうち終わるかもしれないね。
こういう写真が、結構すき。
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