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眠剤無しで眠れる幸せ


「眠り方が分からない」という経験をしたことがあるだろうか。休みたいのに休めない辛さが理解出来るだろうか。暗闇の中でぐるぐると嫌なことを思い出しては枕を涙で濡らす、孤独に震える長い夜を過ごしたことはあるだろうか。私はただただ夜が恐かった。


双子出産後から、「睡眠導入剤(眠剤)」を内服していない。

もう5年程になるだろうか。不安・抑うつ状態と診断され、現在は双極性障害(躁うつ病)へと変わった病名。そんな持病があるから産後うつなど簡単に発症しそうだなあと大いに心配していたのだが、杞憂に終わってしまいそうだ。出産後、乱れたホルモンバランスが戻るのに6ヶ月掛かるらしい。イコール、正常な精神状態に戻るまでその位の期間を要するということだ。既に5ヶ月を過ぎた私の精神状態は波風の立たぬ海のように穏やかだ。理由もなく悲しくなることも寂しくなることもイライラすることもない。

ついでに産後すぐに始まった双子の世話のお陰で朝晩と睡眠時間が取れず、荒療治の如く眠剤不要の体になってしまった。双子の世話をする為、泣いたらすぐ目覚めることが出来るように、と思っていたら眠剤が飲めなくなった。そして子どもが寝ている時間に少しでも自分も睡眠が取れるように、と努めていたら何故か夜にちゃんと眠れるようになった。何たる育児の副産物。今まで眠剤を飲んでいても眠りにくかった私が、本当に落ちるように夢の中に誘われる。ずっと自然な眠りに憧れていた。

そう、今ではパラダイスですよ。双子たちが寝て、夫と晩酌しながら各々好きなことをする時間があって、一日働いて疲れた体を温かな布団に横たえれば知らないうちに朝になり、体が癒されている。日中に活動して、夜に体のメンテナンスが出来る幸せ。そんな当たり前のことが当たり前でなかった私にとっては、この現状がとても喜ばしい。

きっと精神疾患を抱える人の多くは、睡眠障害に悩まされた経験が多かれ少なかれあるだろう。どうやって治したのかと聞かれても、どうにもこうにもおすすめ出来る方法ではないので何とも答え難いが、生活習慣や環境をガラリと変えると治る可能性はあると思っている。実は高校生の頃に過敏性腸症候群を患っていたこともあるのだが、高校を卒業し一人暮らしをするようになってからというもの症状が良くなった経験がある。過敏性腸症候群も精神的なストレスが主な原因として挙げられるが、その時はその時でどうにか吹っ切れたらしい。だから、これは私個人にだけ適応されるものかもしれないが、生活環境を変えるというのは一つの治療法だと思っている。とは言ってもそんなに簡単に出来ることではないと思うので、おすすめはしない。

兎に角、私は今眠剤を飲まなくても眠れている。それだけで大層幸せなのだった。

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