愛情ゲージ
欲しがっている愛情を、十分与えてあげられているだろうか。
いつか言葉が話せるようになったら、「寂しかった」、「もっと抱っこしてほしかった」と言われやしないだろうか。小さな体の中にある、「ママから貰いたい愛情ゲージ」は、ちゃんといっぱいだろうか。
最近の私は、そんなことが気になって仕方がない。
二卵性の双子だが、顔はどちらもパパそっくり。3人で寝ている様は、まさに判子をついたようだ。私の遺伝子は3つあるつむじだけか?と少々悲しくもなるのだが、何にせよ可愛いので問題はない。そう、容姿は別にどうだって問題なんかにならないのだ。問題なのは、各々の性格の違いだ。
双子の姉の方はわりと物静かで、一見自己主張が激しくないタイプだ。努力家な面もあり、寝返りも一生懸命練習している様子を何度も目にした。
妹の方は姉とは反対に、活発で自己主張が激しく、感情を表情や態度に素直に表す。いつの間にか寝返りを習得し、私たちを驚かせた。
まさに正反対の性格の双子。しかしこの辺りの違いは特に大きな問題ではない。私が気にしているのは「甘え方」の違いなのだった。
姉は先述した通り自己主張が控えめで、しかも我慢強い。ミルクをあげる際、流石に2人同時には無理なので、どちらかを先に飲ませ、どちらかを後に飲ませることになる。そんなとき、姉と妹のどちらが手のつけようがないか、で先と後を考えることが時折ある。泣き方やおなかの減り具合、放っておくと大変なのはどちらか。総括すると、姉の方が後になることが多いような気がする。妹のミルク中、姉はいつの間にか泣き止み、その順番を待っていてくれる。また、妹と比べると泣くこと自体も少ないので、妹と姉でどちらが長い時間抱っこしているかというと、断然妹の方だ。甘え泣きというものもあまりない気がする。
感情をそのまま表す妹は、泣いたら泣きっぱなし。でも、楽しい、嬉しいという感情もストレートに表してくれる。単純といえば単純で、分かりやすくて、まるで自分の幼い頃を見ているようで、実は扱いやすい。
しかし意外なことに、人見知りがひどいのが姉の方だった。しかもその人見知りの記憶がフラッシュバックするのにタイムラグがある。寝る前や、人に会った後に激しく泣く。これが私にとっては衝撃で、おおらかに見えて実はとても繊細な子だったのだと思い直すきっかけとなった。また、周りに人がいなくても眠りにつく妹に対して、姉の方は私や夫が傍にいないと寝難いような様子がある。そのようなことをここ最近で気付いた、というよりか双子の違いが顕著になってきたように感じるのだ。
何を言いたいのかというと、私は双子の姉のような、我慢強くて感情表現が控えめな、その心情が読み切れないようなタイプの子に、恐れを抱いている。正直、幾分かお世話をする上で融通の利く姉の方に甘えているのは私なのだ。手を掛けている時間、優先した回数、もしこれらで愛情の大きさが計られるなら、きっと姉への愛情は妹よりも少ないと判断されるだろう。自分自身では、双子のどちらかにより愛情を注いでいる気は決してない。勿論どちらも同じくらい大好きで、愛おしい。でもそれは私の中にあるもので、言葉の通じない双子にはきっと態度でしか愛情は伝わっていない。だから心配なのだ。双子の姉は、愛情不足を感じているのではないかと。いつもいつも実は密かに、傷付いているのではないかと。
お世話をする上でどうしても必要になってくる効率や優先順位。私に腕が4本あったら、こんな悩みすぐに解消するのに。
きっと愛情は、双子だから二等分というわけにはいかないのだ。どちらにもあるだけ注がなくていけない。その「ママから貰いたい愛情ゲージ」は、いつでも満杯でなくてはいけない。
私が幼かった頃、母がそうしてくれたように。
だからこそ、そのゲージの大きさを見誤ってはならないのだ。我慢強いからゲージが小さいだろうとか、こんなに泣くくらいだからゲージが大きいのだろうとか、そんな当てずっぽうはしてはいけないのだ。甘えてくるから沢山の愛情を、甘えてこないから少しで大丈夫、なんて言語道断なのだ。
私が与えられるだけのありったけの愛情を双子それぞれに。どうか、愛されていることが一生の安心感となりますように。
ずっとずっと、精一杯の愛を注ぐから。
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