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屋久島を学ぶ⑦森の日:植物学者のルートと樹木プロファイリング

こんにちは!デザイナーの meron です!
前回の更新から日があいてしまったので、改めて。わたしは2019年に会社の七夕企画で願いが採用されまして、1ヶ月(11月中旬〜12月中旬)屋久島に住みながら半分仕事、半分創作活動をしておりました。

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なぜ屋久島?というと、こちらの理由が根本ですが、シンプルに大好きでおもしろいからです。学びが多くて、刺激的で、視野がどんどん広がる。


そして半分創作活動の一環として、学びの多いガイドさんと共に登山や森や地質、植生などをまるっと学ぶプログラムを組んだので、それをまとめていくシリーズがこの「屋久島を学ぶ」となります。


前置きが長くなりましたが、この日は 12/11 の第7回です!


■植物学者 田代善太郎が調査をしたルート

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屋久島には、大正7〜12年にかけて植物学者の田代善太郎が植物調査をした場所がいくつかあります。この日は、そのルートの一部をゆるりと歩いていきます。

個人的にテンションがあがるのは、この調査報告を読んでいると自分が今までに行ったことのある場所も記載されているところ。時代は違えど、共通の杉を通して「大正時代、あそこにきていたんだー」ってイメージできるのも、なんだか不思議でうれしい。

ちなみに田代善太郎は、明治編・大正編・昭和編とボリューミーな日記を書いていて(田代善太郎日記)、なかでも大正編には師事する牧野富太郎(採取した植物標本は約40万点の植物が恋人のような素敵な方)や、アーネスト・ヘンリー・ウィルソン(世界で初めて屋久島の森林や日本の桜を紹介した方)など、テンションがあがる人物も出てきます。

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ボリューミーすぎて、全部読んでません!


■いざ、ゆったり散歩のように:写真中心

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歩いているとすぐに壊れた橋があった!
なんだか人がこない静かな場所なのに、人を感じるのもおもしろい。


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決して縦の写真じゃないツツジ。
川の近くにいたのだけど、なんと水の流れで真横になっているみたい。
生きるぜ!!ふんばるぜ!!みたいな執念のようなものを感じる。すごいなぁ、植物。


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杉がヒメシャラを食ってる!ように見える!!
このヒメシャラは横にのびてるけど、まだまだ元気そう。一体何十年とこの場所とり合戦をしているのだろう?わたしが生きている間には決着しなさそうだなー


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やっぱりオオミズゴケ大好きだなぁー。このモサモサっと密集しているところに、手の平で上からふさふさっとやったり、かき分けて古いオオミズゴケの中に手を突っ込んだりしてます。癒しっ


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今はコロナで屋久島に行けないし、森も歩けないから、写真をみているだけでもテンションがあがるなぁー。ああ、はやく収束してほしい!!


■突然始まった、樹木プロファイリング!!

歩いていると…

「お、これはいい。」

???

「この樹はなんでしょうか?」

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!!!

なんだこれ!!!

……

き、木肌を見るとサクラっぽいです…
が!こんな四方八方にのびてるのみたことない…
しかも、根がガジュマルの気根のように細かくウニョウニョしてて…

「そうです、サクラです。」

!!!


(ここからは会話をたのしみながら皆さんも想像してみてください)

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「いまここでは、一つのおもしろい特徴と、二つのおもしろいことが起きています。」

えー!!!!

なんだか、幹になろうとした感じがします!成長しようとしたような…。けど、死んじゃった…?

「なんらかの理由で死んじゃった。そうしたら?」

…そうしたら!?

「複雑なんですよ。こうです!ではなく、こうなってこうなった。それが重なれば重なるほど、むずかしくなっていくのがプロファイリングです。」

ええええええ!!!
む、むずかしい…

「ぱっと見、何がおこってます?」

ぱっと見…。皮がはがれてる!!

「はがれてますか?」

えっ!はがれていっている…枯れている…?

「それだけでいいですか?」

えっ!!

「ぺろっとむけました!って話ですか?」

ええええっ(混乱)!!!

「例えば…同じようなものがここにありますね。どうですか?これはいずれもサクラの皮です。」

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あーーーーーー。
めちゃめちゃ根がはっている!!

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「そうですね。よくみました。これは根ですねー。」

うーーーーーーん。ん!?根っ!!??

「根でしょ?」

根…

「これはなんですか?これは。」

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幹…(混乱)

「幹。枝かもしれないですけどね。」

うん…

「で?」

でえええええええええ!!!
え、枝か幹なのに、すごい根がはってきて…しかも皮の下とかに入ってる…。うーーーーーーん…

「さっきも言ったけど、一つのおもしろい特徴と、二つのおもしろいことが起きています。三つがあるんですよ。」

えええええーーーーー(混乱)

「最初のおもしろい特徴は、これとこれを見ればわかるかな」

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右は皮が浮いている…

「そうですね。なぜ浮いているんですか?」

え?枯れたから??

「枯れたら浮くの?」

えええええええ!!!

「枯れたら浮くよね。だけどこれなんかは本当にそれだけですか?」

………

「左の枝はどうですか?浮いてますか?」

みっしりかと思いきや、ちょっと浮いてる!!

「なぜ?」

なぜ!!!!
か、乾いて中の体積がシュッとなったから!!

「(別の枝を持ってきて)これ乾いてますか?」

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しめってる…

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「なんでこうなるんですか?中身はどういう状態?」

ええええーーー!
く、腐ってる!!

「皮は?」

腐ってない…

「なんで?」

えええええええええ!!!!

「内側はボロボロで柔らかくなってるのに、皮は全然しっかりしてるんですよ。腐りにくいんだよね。」

うー

「虎は死して皮を留め、人は死して名を残す。格言がありますね。」

(知らなかった…)

「サクラは死して皮を残すんですよ。」

へーーーーー!!!


* * * * *


ちょっと長くなるのでここまでにします!

結果、特徴としては…
その腐りにくい皮に目をつけたのがワッパであり、工芸品の素材に使われる樺細工になるそうです。ここからサクラの極めて特異な、皮が腐りにくく異常に丈夫だという特徴がわかるということでした!!おおおー

そして枝の中が腐るというのは何が起きているかというと、菌が食べて(分解して)いる状態。皮は食べにくいんだそうです。

そして根は何をしているかというと…
木の食べ物は、水や光以外に自分の体を作る材料(ミネラルや窒素やリンなど)を根から吸収します。根は、食べ物をかき集めにいく役割。わたしが混乱していたのは、根は下へ下へとのびていくって思っていましたが、それは単なる思い込みで、「食い物があればどこにでも行きますよ!」なんだそうです。
何が言いたいかというと、菌が枝を食べて分解した排泄物や菌自体が死んだ残りがそこにあるので、自分の死んだ部分に自分で根を出して吸収している「死んじゃった俺の手ー。じゃあ食うかー。」という状態。
なので、自分で自分の体を食ってる状態が起こってるようです。

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なんと!!
めちゃめちゃおもしろい!!
植物ってすげっすね!!!!

「えぐいよね。」


それからも違うプロファイリングを始めて、田代善太郎ルートよりも植物に夢中になってしまうのでした…。いつか、ルート全部いってみたいなぁと思いつつも、すっっごくたのしかった、笑笑。

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みた瞬間に、ちょっとわかんないっす…と小声で言ったら、「これはそもそもなんですか?」とプロファイリングスタート!!!ひえー


■そもそもの仕組みと伝え方

途中から、かなり夢中になったプロファイリング。
やってみて思ったのが、根拠立てて説明ができないといけないのと、それぞれの特徴を正確に理解している必要があるなぁと。乾く!腐る!とか手前の言葉だけじゃなくて、背景にある「腐るとはなぜか?」など、そこまでを説明できないとなと感じました。これってすごく仕事にもつながる…。ちょっと突っ込まれたら不安になるくらいの根拠や知識じゃダメだということです。

このなぜなぜの深堀はかなり頭使ったし、面白かった!!仕組みを知ったらおもしろいことが自然界にあるっていうのも、ダブルたのしい!

本日はここまで!
次回は軌道跡の散策です!

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