足が地面から離れて上方へ引き上げられ、宙に浮く。腕も水平方向へすぅっと動き、同時に背中が後方へ傾いていく。プールで仰向けに浮かんでいるような、身体のどこにも圧がかかっていない感覚。12分間の無重力だ。
 そう、最近流行りの「無重力」マッサージチェアである。もちろんほんとうの無重力ではなく、脚と手が浮いた「ような気がする」だけだ。それでも5~6年前に初めて体験して「浮いてる! これはすごい!! 足がラク~!!!」と歓喜したのだった。
 地元のスーパー銭湯で、風呂から上がりロビーに来た。あとはチェアに身体を預けて脱力しているだけ。それで「ハードな仕事お疲れさま。明日から通常モード」になるためのルーティンが完成する。
 完全に身体を緩めるには、前段階である風呂の入り方も重要。身体を洗ったあと、まず立位のジェットバスへ。水流がお腹にぎゅるんぎゅるん当たってはくだけていく。関東の銭湯は20か所以上行っているが、自宅から徒歩10分のここより強い水流のところはない。腰が痛いときには後ろ向きで使うと、その辺のマッサージ師よりもずっと「上手く」圧をかけてくれる優れもののジェットだ。
 腹部用だけではなく、太もも用、ふくらはぎ用のジェット水流もあり、すべてかなり強い。脂肪や水分を揉みだしてくれそうな気がするだけではなく、風呂に入った後はじっさいに脚が軽くなる。むくみが取れるのだ。
 そしてこの後が本命だ。ラスボスとも言える。敵? そう、足裏ジェットが、台湾式リフレクソロジーにも匹敵するほど「痛い」のである。だが、敵の様相をしているが実は最強の味方。シャープにかかる水圧が、すべての足裏のツボを充分に刺激してくれる。10分も入れば、内臓の働きが20%アップした!といえるくらいの強さなのだ。
 ここまでが「ノルマ」でいつも同じ。これで身体の緊張がだいぶほぐれる。次は脳の番である。塩サウナでも日替わり風呂でも、露天風呂でも、バブルバスでもよい。数分間座って目を閉じれば、心のなかのおしゃべりが止んだ「瞑想」の境地に入れる。
ハードな仕事の納品後はこうして汗と身体を絞り、フル回転していた脳を緩める。ぼーっとしてから風呂から上がり、ロビーの隅にあるチェアで宇宙へ行く。地上に帰ってくれば、通常へのルーティンは完了だ。


#温泉 #銭湯

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