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山田真哉『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』新書およびコミック版

数字に弱い校閲者を救える本なのか

 わたしはほんとうに数字に弱い。暗算もできないし、小数点や数百万以上の数になると、どちらが大きいかを瞬時に判断できない。翻訳校閲のときはmillionが出てくるたびに、かならず紙に数字を書いて確かめる。
 そんなわたしが読むべきなのは、まず本書であることはわかっていたが、やっと実行に移した。発行から18年経ったミリオンセラーをやっと読む気になったということだ。

コミカライズは内容が薄い!?

 あまりにも数字への苦手意識が強いので、コミック版から読んでみた。ベストセラーのビジネス書はコミカライズされるのが最近の風潮だが、あるコミック版を読んで「こんなに内容薄いのに1500円もするのっ!」と思ってからは信用していなかった。
 だが、最寄りの図書館に本コミックがあったので借りてみた。 
 高校生アイドル、数字感覚なしに会社を辞めた父、専業主婦でコスト感覚のない母がそれぞれ、どうやってお金と経営の感覚を身につけていくか。
 ストーリーは予想よりずっと面白い。そして、確かにあっという間に読み終わるのだが、各章の終わりにあるコラムはなかなか難しい。
 ということでマンガから入ったのは大正解だった。これまで偏見を持っていた自分を恥じる。

棚卸減耗損てなんだろう

 さて、マンガを読み終わってから本編のページをめくってみた。すると驚き! マンガはちゃんと本編のエピソードを使っていたのだ。「別物」でそれらしく仕立ててあるコミックではなく、エピソードを生かして本編のエッセンスをコミカライズしてあった、ということを本編を読んで知った。
 これなら読めそう。さおだけ屋のからくりはマンガに載っていたので、本編を読んでもさらっと眺めながら、会計用語が頭に入ってくる。「ゴーイング・コンサーン」なんて聞いたこともないが、さっきマンガに出てきたから覚えている。「連結会計」の意味もわかった。
 聞いたこともない「棚卸減耗損」などの語も、ちゃんと目がとらえてくれる。会計の話に集中できるのだ。これが、先にコミックを読んでおいた効果だろう。
 というわけで「本編(新書)」の方も投げ出さず最後まで読めた。そこでもう一度マンガに戻る。すると「棚卸減耗損」といった語が使われている。さっきは通り過ぎてしまった用語がきちんと入ってくる。 
 そう、マンガは「本編」の予習にもなるし、復習にもなるのだ。1回目は飛ばしてしまった「用語集」も今度はちゃんと「そうかそうか」とうなずきながら読める。「用語集」も、マンガで予習してから本編を読めば「棚卸減耗損」の意味も頭に入ってきた。

おすすめ!マンガサンドイッチ読み

 というわけでこの読み方、「マンガ」→「本編」→「マンガ」と読んでいく「マンガサンドイッチ読み」はおすすめだ。「ビジネス書のコミカライズなんて、面白くもない。内容も薄くて買う気がしない」わたしのような人も、最寄りの図書館をぜひチェックしてほしい。置いてあったらめっけものだ。
 この著者の本はおもしろい。これなら自分もちょっと数字に強くなり、確定申告書類もスムーズに作れるかもしれない、と希望が湧いてきた。
 というわけで、著者の続編である『食い逃げされてもバイトは雇うな』『「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い』も読むことにした。さてどんな内容が書かれているのだろう。

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