頭頂冷水
給湯器が急に反応しなくなり、お風呂のお湯が出なくなった。その日は家族皆があきらめて翌日、ガスの人が来てくれた。古い給湯器なので新調しないといけない一週間くらいかかるかも。と言われた。
なんとか水で
さっぱりしたかったので、しかたがないから水で頭を洗うことにした。暖かくなったとはいえまだ肌寒い。首周り生え際への冷水シャワーはゾワワとするのでやめておいた。頭頂に人差し指を置き頭のカーブに合わせて下部に親指がくる範囲を冷水で洗う。少し冷たい感覚が伝わるのが鈍い。とはいえ当たり前だけど、ひんやりだ。口が"イー"のかたちになる。
洗い終わると、頭頂部を不思議な感覚が頭皮にまとわりつく。ヴェールみたいに微かにでも確かにそこに何かの層があった。冷水で洗った部分だけがじんわりとあたたかくなってくる。
雪降るトルコの安宿で浴びた冷水シャワーの感覚を思い出した。お湯出るようにしてと何度もフロントにクレームしたノスタルジー。極寒なのに、身体は寒くない。皮膚が思い出した、あの記憶。
たらいは消費カロリー大
子どもたちは汗をかく。全身冷水は寒すぎていかんだろうと、たらいに湯をはる。キッチンの給湯器は無事なので、キッチンから廊下を通って風呂場までバケツを運ぶ。子どもたちは気持ちが良かろうが、一日の最後にこの運動はきつい。部屋にお湯をぶちまけるわけにはいかないので子どものお手伝いは遠慮する。私が一週間は持たないのでこの案は一日で終了となった。
なんとかバケツ一杯で
冷水だけだと毛穴の汚れは落ちきらない。タライよりも小さめのバケツでなんとかならないかと考えた。小さめのバケツなら、キッチン給湯器の湯を一杯汲むだけ。これが調子良くて、5日間続けた。
バケツにお湯をためて2つの手桶でくみ出し分けておく。それぞれ手桶湯(A)(B)とする
バケツのお湯で頭を洗う。泡はなるべくバケツに入らないようにあわを外で絞ってからゆすぐ
トリートメントは諦める
とはいえバケツ内のすすぎ湯は少し汚れたのできれいな手桶湯(A)で頭髪をすすぐ
バケツ内の残り湯で身体を洗う
最後にきれいな手桶湯(B)で身体をながす
完成
バケツ一杯の湯で、わたしたち家族はその週の清潔な状態を保つことができた。
給湯器がなおった
予定通り一週間め、新しい給湯器が来て我が家に取り付けられた。風呂場にお湯が出るようになった。
その日は久しぶりにあたたかいシャワーを浴びた。
昨日までバケツ一杯でなんとかなっていたのに、私はこのとき何リットルのお湯を使ったのだろう。きれいになって身体はあたたかく清潔になったけど、こんどは後ろめたさとか罪悪感みたいなものがヴェールみたいに頭にまとわりついてなかなか離れてくれない。
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