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#02 アモルの接吻で蘇るプシュケ〜がんばれプシュケ後編

こんにちは芸術の秋 いただきます食欲の秋・・・
それはさておき

今回も前回に続き、ルーブル美術館で私が一番感動した彫刻。

『アモルの接吻で蘇るプシュケ』の題材になったローマ神話

『黄金のロバ』の挿話である『愛と心の物語』についての続きです。

『姿を見てはいけません』という約束を破って、クピドの姿を見てしまったプシュケ。そもそも人間であるプシュケは飛び去ってしまった恋愛の神クピドの後を追うことはできません。

何もかも失ってしまって再び悲しみに暮れてしまうプシュケ。どうにかして愛する人に会いたいと思い、クピドの母であるアフロディーテ に再びクピドに会えるよう懇願します。

しかしプシュケへの嫉妬からクピドを遣わせた、美の女神アフロディーテはそんなプシュケに容赦はありません。

エドワード・マシュー・ヘイル「プシュケと玉座のヴィーナス」1883年

>>「プシュケと玉座のヴィーナス」エドワード・マシュー・ヘイル1883年>>

ならばと次々にプシュケに無理難題を突き付けます。

1つ目の試練は『大量の小麦、大麦、えんどう豆など穀物の山を仕分けろ』というもの。

2つ目は『凶暴な金の羊の毛皮を持ってこい』というもの。

どちらの試練も、とてもプシュケ1人では成し遂げられるようなことではありません。ところが実はそっと影から見守っていたクピドが、神の家来などを遣わせてプシュケを助けて2つの試練を難なくクリアしていくことが出来ました。

しかし3つ目の試練は並大抵ではクリア出来るようなことではありませんでした。アフロディーテはプシュケに最後の試練を与えます。

『すべておまえ一人で成し遂げたことではないであろう。最後の試練を与えよう。冥界に行き、冥界の女王ペルセポネーから美の箱をもらって来なさい』

というものでした。冥界へ行く・・・つまり死ねということです。

しかし人間であるプシュケには他に選択肢がありません。高い塔から身を投げるため、死を覚悟して塔へ登りました。すると何処からともなくまた声がして『哀れな少女よ、そのような生涯のとじ方をする必要はありません。』と、また不思議な声に導かれ、冥界の番犬ケルベロスの脇を通り抜け、冥界の河の渡し守カローンを説き伏せ無事、冥界の女王のもとへ辿り着くことが出来ました。

数々の難題を克服して来た少女を健気に思った冥界の女王は

『プシュケよ。そなたに美の箱を授けよう。だが決して開いてはなりません。』

と言って箱を渡します。

最後の試練も成し遂げることが出来たプシュケ。しかしその心に隙が生まれます。やっと試練を成し遂げて小川で顔を洗いに行くと・・・そこには数々の試練を乗り越えるためにやつれ果ててしまった自分の顔が・・・

やっと愛するクピドに会えるというのに、こんな見窄らしい姿を見せたくないと思ったプシュケ。そこには、開けると若返る美の秘訣が入った箱が・・・冥界の女王に『開けてはなりません』と言われていたにも関わらず、美の箱を開けてしまうと・・・中から白い煙が・・・

黄金の箱を開けるプシューケー、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス1903年

>>「黄金の箱を開けるプシュケ」ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス1903年>>

とうとうプシュケを永遠の眠りが包みます。

火傷の傷が癒えたクピドがそんなプシュケのもとに駆けつけます。プシュケから冥府をすべて取り除き箱に戻します。

フランソワ・ジェラール「プシュケとアモル」(1798年)

>>「プシュケとアモル」フランソワ・ジェラール 1798年>>

そして天空神ユーピテル(ギリシャ神話の神ゼウス)に取り成し、プシュケに神の酒ネクタールを飲ませ神々の仲間入りさせることでクピドとプシュケは結ばれます。

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>>「The Abduction of Psyche」ウィリアム・アドルフ・ブグロー 1895年

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以上がルーブル美術館の彫刻『アモルの接吻で蘇るプシュケ』の題材となった物語です。

調べれば調べるほど美しい男女の物語を主題にした絵画が出て来ます。やはり美しいものを追求する芸術家が各時代において、作品表現するに適していたと言えますよね。

とは言え…プシュケ…

最初は美しいがあまりに嫉妬の対象になったり可哀想なんだけど、そこはやっぱりお姫様w なんか天然というのか?呑気というのか?ハラハラするけど職権乱用しまくる恋愛の神クピドによって、どんな窮地に追い込まれてもしっかり助けがあって、最後はハッピー♡

純粋すぎて姉たちの思惑にも気が付かない無垢な感じとかが、愛おしいのだけれども、ダメって言われたこと全部やっちゃうからw

でもプシュケの人間故の弱さを克服して、受難を乗り越え神になるというストーリーにも象徴されるように、Psycheには蝶という意味もあります。蝶が蚕から成長し、綺麗に羽ばたく姿からきているようですね。

なので神になり、クピドと羽ばたく彼女の背中には蝶の羽が描かれます。これがプシュケのアトリビュート(西洋美術において伝説上・歴史上の人物または神話上の神と関連付けられた持ち物)になります。

さらにプシュケ(Psyche)には、魂、精神、心という意味もあり、英語のpsychic(サイキック/精神・超能力)の語源にもなっています。

と、聞くとちょっと蝶の美しさとは裏腹に美しい故の怖さも感じる私です。


『アモルの接吻で蘇るプシュケ』の解説は以上です。


次回はウジェーヌ・ドラクロワ作『民衆を導く自由の女神』をご紹介します。

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