倫理に反することそれすなわち不倫

みなさん、こんにちは。メリアです。

本日はこちらの1冊を紹介致します。

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私の大好き山田詠美さんのこちらの本。

日本を代表する著者の山田詠美さんが今年の2月に新作を発表したということで私もすぐに購入いたしました。

内容

私の趣味は人の夫を寝取ることです。

衝撃の1分から始まる、3人の視点で描かれた不倫小説。

料理研究家の喜久江、その夫の太郎、そして喜久江の弟子であり、太郎と不倫をしている桃子。

Wife:喜久江はもう余裕のある大人。何度だって夫に言い寄る女は見てきた。太郎はそれでも私と離れられない。私たちは体ではなく心で繋がっている…。

Husband:喜久江は信頼のできる妻。彼女は俺を立ててくれる。料理も美味い。誰もが言うのです。「お前の妻は完璧だ」と。確かに完璧です。でも違うんです。モモもまた違うんです。過剰な思い入れなしに話をそのままの状態に受け取るモモ、いい。

Lover:先生のことを誰よりも尊敬しています。先生がいなければ今の私はいません。太郎さんと出会ってしまったことは仕方のないことなんです。好きになってしまったのだから。血も涙もないわけではないんです。


感想

3人の視点で描かれた不倫小説ですが、内容は重たくなく軽いタッチで描かれています。

また、全体的に山田詠美節が炸裂し、読みながら「これだから山田詠美さんが好きなんだよなぁ」と思うのです。


何事も完璧にこなす料理研究家の喜久江

芸術家気取り(全然売れていない)の夫、太郎

喜久江の弟子で自由で気取らない桃子


一見、「喜久江がかわいそう」と思われそうなのですが、3人それぞれが妬み妬まれ、羨み羨まれる、そんな関係を絶妙に描いています。

喜久江が料理研究家として有名となったのは、夫に美味しい料理を振る舞うためであり、芸術家の夫を立てるのです。"いかに夫に喜んでもらうか"で一喜一憂する喜久江はいつの間にかメディアに取り上げられるほどの有名人に…。

しかし、そんな喜久江に太郎は感謝しつつも「立てさせてあげなければならない」という想いも少なからずは持っているのです。そんな日々から逃げるように不倫を繰り返し最終的に気取らず、ありのままでいる、波長の合う桃子に心を奪われます。

一方の桃子は決して悪気があって自分の尊敬する先生の夫を寝取ったわけではありません。たまたま、好きになった男性が先生の夫だったのです。が、不倫であることを世間は良いとは受け止めないのも事実。太郎は先生との切れない絆を持っていることを羨ましいと思う一方、太郎と私もまた、切れない絆を持っている。


この三つの複雑な関係を巧妙に描く山田詠美さん。


山田詠美節も炸裂し、一人一人の個性も生きるユーモアあふれる作品だと感じました。


この作品は一言で言えば『不倫小説』なのですが、男女の関係に置いての不倫はもちろん、それぞれの登場人物が"自分自身の倫理に反する行為を行なったとき"に不倫という表現もします。


不思議な三角関係ですが、最後はやっぱり一途な人が結ばれ合うのかなと勝手に思いました。


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