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千葉市美術館「ジャポニスム」展-ロシアのジャポニスム

 浮世絵の収蔵と展示で定評のある千葉市美術館の「ジャポニズム:世界を魅了した浮世絵」展を観てきた。
 歐米とロシアにまで広がりを見せた近代の特異な芸術運動を、モデルと仰がれた当の北斎や広重らの浮世絵と縦横無尽に並列して対照させる展示は、適切にして広大な現象をかいまみさせるすぐれたものだった。

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 ゴッホやモネの絵画構成や画題選択への影響はつとに知られていたが、本展で若きホイッスラーや、ビアズリーの版画にもジャポニスムの影響が確認できる点が興味をひいた。『白樺』の柳宗悦が先鞭をつけたポスト・インプレッショニスムやビアズリーの批評を更新する根拠が得られたのがよかった。言うなれば、「複製技術時代」における版画が世界市場に流通して、模倣が模倣を呼ぶ、交感関係が実現していたのであり、単線的な民族ないし国家の美術史を軽やかに超えていく。展示の終章には、浮世絵が洋画とあいまって、いわば本邦に逆輸入され、小林清親に代表される、明治期以降の新たな浮世絵の展開の一旦もあり、往還運動の帰趨にますます好奇心がわいた

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フランスはもちろん、ノルウェーのムンクや米国にさえ波及したこと、特にロシアにいたっては他国とも異なるジャポニズムが見られ、世が世だけに郷愁をさそった。写真は撮影が許された作品の一部である。イヴァン:ビリービンは宮崎駿にも影響を与えたという。往還運動は時代を超えてなおもつづく。



 個人的にはちょうどいま「海苔」に関する記事を書いているところなので、魚屋北渓(ととやほっけい)の「和布刈の神事」を確認できて、奇縁を感じた。ああ、締切間近だというのに美術館に4時間も滞在してしまった。早く記事を書きあげねば…

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千葉市美術館に収蔵されている「和布刈の神事」とは異なるヴァージョンだが、参考に掲載する。




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