ドラマ、ちょっと昔のアメリカ
アメリカの人気ご長寿ドラマ「フレンズ」を見ている。シェアハウスに住んでいる仲間たち6人が主人公の、日常系コメディー。座ってみるコメディなのでシットコメディと言うらしい。逆がスタンダップ・コメディ。
1994年放送開始、そこから2004年まで続いたというから、知ってる人もそれなりにいるかもしれない。当時のアメリカが伝わってくるので、新しい歴史ドラマを見ている気になる。いまシーズン1。
94年には当然、スマートフォンがない。携帯電話も普及してない。登場人物がトランシーバーみたいな電話を持って会話する。場合によってはポケベルも出てくる。知ったように書いてみたけど、ポケベルが何なのか、世代じゃないのでいまいちわかってない。
なんか呼ばれると鳴るんだよね?
ほかにも世代の差をところどころで感じる。たとえば、主人公格にアジア系が一人もいないこと。アジア系もアフリカ系も、ちょっと台詞があったり背景に映っていたりはするけど、それだけ。存在しているけどメインじゃない感じが伝わってくる。
レズビアンやゲイの人たちも出てくる。でも主役の6人は全員、異性愛者の設定になっていて、同性愛が出てくると観客の笑い声が入ったりする。すごく嘲笑っているわけじゃないけど、変わり者とみなしている笑いだ。
いまのアメリカはこうじゃない。とりわけアフリカ系をメインキャストに据える作品が多くなり、複数人が主役のときは同性愛者がいることも珍しくない。出てくるアイテムから配役まで含めて、すべてが「昔の作品」だ。
いまならこれは撮れないのだろうか。そう思うと、コメディドラマなのにちょっとさびしく見えてくる。もう戻って来ない時代の産物。良いか悪いかは別として、昔のものにはこういうさびしさを感じる。
もちろん国の違いもあるので、その差も気になる。たとえばこの回は、最初のほう(3:00あたり)で米のご飯を食べている。デリバリーの食べ物らしく、寺みたいな模様が箱に描かれている。中華料理か、日本食か、はたまた別の国か。
よその国の食事事情なんて実際よく知らないから、海外の日常ドラマを見るとどうしても目が行ってしまう。
これを紹介してくれたイギリス出身の知人は「1番すきなドラマ」と言ったついで、日本でこういう暮らしは無理だねと言う。
「シェアハウスに住んでいる人もいるけど、本当に住む場所を共有してるだけって言ってた。日本でこうやって集まって仲良くできる空間は、特に社会人にはないと思う」
ドラマの中の登場人物が楽しそうだっただけにグサッときてしまった。自分もむかし女子寮にいた頃は、それなりに食堂で先輩としゃべったり、同級生が失恋したと言って部屋に駆け込んできたりしたけど、社会人になってからはもうない。
でも正直、他人との間に境界線を引きたい自分には、ひとり暮らしのほうが性に合う。寮生活は楽しいこともあるけど、いつも他人と空間を共有しているストレスのほうがまさった。
いつ誰が部屋に入ってくるかわからなくて、話したくないときも話しかけてくる人がいて、食堂での会話は聞かせているつもりがなくても、周囲に筒抜けだったりする。だから知人には、わたしにはこのドラマみたいな生活は辛い、と返した。
それでもドラマはおもしろい。少し前の異国の日常、異国の笑い。切れのいいアメリカンジョークが炸裂して、しばし90年代のアメリカに浸ることができる。リアルな英語が学びたい人におすすめのコメディ。
本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。