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『お金の減らし方』(読む前)

 森博嗣が『お金の減らし方』という本を出しているらしくて、読んでないのに「あ~……わかる」と思った。明日本屋に行ったら買うかもしれない。
 
 なんで減らし方やねん、増やし方or稼ぎ方のほうが需要あるやろ。という、誰もが考えそうなことは確かにそうなんだけど、世の中お金を使うのが下手って人は意外といる。著者の森博嗣もその類いなんじゃないか。まだ読んでないからなんとも言えないけれども。
 
 自分は学生のころ何万円か持って家を出て、さあ今日は好きなものなんでも買うぞーと意気込んだ日があった。当時としては(たぶんいまでも)大金だったので、外に出た直後はワクワクしていたのだけど、結局五千円も使わないで帰ってきた。欲望が安い。
 
 お金を使うのに慣れていないと、いざお金を持ってみても尻込みしてしまう。欲しい本の前に立っても「いや本当に読むかわからないし」「学校の図書館で借りられるかもしれないし」とか考えて、手が出ない。服を見ても「別にいま着るものに不自由してないし」と思って、買うところまで行かない。
 
 だからときどき、派手にお金を使う人を見ると「自分と違うな……」と感じる。その内実はさまざまだ。クレジットカードを何枚も切り、あるいは家賃を切り詰めながらハイブランドを買う人。株に注ぎ込む人。いいホテルに泊まるタイプの旅行が好きな人。日々、お酒を飲んだり出前を取ったりが習慣の人。
 
 「出前や飲酒が贅沢か?」と言われるかもしれない。このへんの感覚は人による。ただ自分は「自炊すれば安いじゃないか」「一回呑んで何千円もかかるっていうのが、ちょっとよくわからない」と思っている。会社の人について行ったことはあるけど、飲み屋さんって普通に高い。
 
 「千円でべろべろに酔える」を指して「せんべろ」なる言葉もあるらしいけど、それだったら900円のランチのほうが安い。「千円なら安い」っていう感覚がわからないのは、呑まない人間だからだろう。
 
 もちろん「ちょっといいところ」なら話は別だ。特別な機会だから、中華やフレンチのフルコースを食べたい……ってなったときに「予算は千円で」とはならない。だけどそういう機会は、年に2,3回あるかないか。コロナで自粛していた期間に関してはゼロだった。
 
 職場の人がコンビニでフラっと買ってくるサンドイッチを見ても「サンドイッチと飲み物でゆうに500円は超えてるなあ。お菓子もプラスしたら千円行くのでは」と思う。自分はおにぎりを握って行く。コンビニで買うという発想があまりない。素人がつくるより企業が研究したおにぎりのほうがきっとおいしい。のだろうけど、買うという発想が欠けているからこうなる。
 
 最近発見したのは、ちぎったチーズを入れたおにぎりが意外とおいしいこと。あっためて食べるときにトロリと溶けてやわらかくなって、あ~温かいもの食べてるなあって思えるのがいい。
 
 こう書くと倹約家みたいだ。でも貯金のプロじゃない。本屋でふっと買い物をするし、喫茶店があると寄ったりする。珍しい食材に挑戦して余らせることもあるし、部屋に飾るカードを買うときもある。こういうお金なら使える。でもそれ以上っていうのは、感覚として結構わからない。一回で何十万もする趣味になると、もう思いつかないのだった。
 
 お金を楽しく使える才能のある人って楽しそうなんだけど、たぶんあのへんの才覚は自分にない。ここ何か月かは美術館にも劇場にも行かなくなってしまって、よくないな~と思いつつ日々が過ぎる。「映画を見すぎて金欠」「劇場まで遠征したいけどお金が」と言ってる人が異次元に見える。
 
 自分にとって「楽しいお金の使い方」は、後天的に学んでいくものになりそうだ。がんばりたい。

本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。