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よくなってる、こともある

 わからないことがたくさんある。仕事なんて、最初の数年は誰でもそんなものかもしれない。建築業界で働いていると「ちょいちょい目にするあれ、こういう名前なのか……」ってことがよくある。
 
 たとえば「グレーチング」。よく側溝の上に乗っかっている、格子状のあれを言う。小説なんかでは「側溝のフタ」って書かれる気がする。
 基本的な機能は、人や自転車が落ちるのを防ぐこと。それならただのフタでもいいのだけど、グレーチングは排水もしないといけない。それでああいう格子状の形になる。

画像引用元:https://www.daikure.co.jp/grating/


 なにかに名前がつくことはいい。誰かが言っていた、「目に映るすべてのものには名前があって、それがわかればわかるほど解像度が上がっていく」。逆に、目にしているものの名前を知らないとすれば、存在を知らないのも同然だ。
 
 だから名称を覚えるほど「昨日と同じ世界に住んでいるのに、昨日より存在が増えている」みたいな事態が起こる。
 
 普通に生きていると、自分の興味のない分野は正直知ろうと思わないわけで、仕事でもなければ知らなかっただろうな、と思う。ちなみに今日覚えたのは「有孔折板(ゆうこうせっぱん)」で、文字通り孔のあいた板を指す。
 
 折れ曲がった金属板に多数の孔があいており、風を通しつつも視線をさえぎることができる。ちょっと目隠しがほしいときや、柵を作りつつ通気性を確保したいときに使われる。レースのカーテンの金属バージョンだというのが自分の理解。
 
 「孔」も「穴」も「あな」と読むけれど、ここでは「孔」が正しいのだそうだ。貫通しているほうが「孔」、していないと「穴」。だから、たとえば「落とし穴」なら後者の字を使う。それはそうだ、貫通してたらブラジルまで行ってしまう。
 
 他にも建物の内部を快適に、安全に保つための無数の道具があって、覚えるだけで大変。自分は事務方だけど、運び込まれた材料の名前をわかっていないと仕事にならない。それで空いた時間にはカタログを眺めながら、部品の名前を覚える。
 
 カタログは、あたりまえだけど各社がそれぞれに気合を入れている。「わたくしどもの商品は、油で汚れた空気や、高い湿気にも耐えられます。長い期間、安心して使える製品を提供します」とか「豊富なカラーバリエーションのパイプ。建物の外観をそこねません」とか。
 
 読んでみると、特に飲食店の空調設備には、油を含んだ空気に強いものを使うらしい。普通のもので対処しようとすると、すぐに油がこびりついてダメになる。またお店などのデザインを気にする場所では、配管パイプの色は無視できない。だから企業側も、色の種類を豊富に取り揃えている。へえ。
 
 地味ではあるけれど、日々こういう世界も進歩していくんだなあと思う。つい最近、新しいマンションに引っ越した人が「特別すぐれたところはないけど、すごく住みやすい。住宅は進化してる」と言っていた。そうだと思う。
 
 耐震性は増し、木造でもそこそこの強度を出すことが可能になり、安全面での法律も厳しくなっている。少なくとも建築に関していえば、「むかしはよかった」なんてことはあまりない。木造建てのビルなんていう、前なら考えられなかったものもできた。

 https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00159/070700050/

 なんだかんだ、物事は前に進んで行くものらしい。生まれた時代の景気がよくなかったので「イケイケドンドン」の頃を知らない自分だけど、それでも世の中って進歩してるんだなと思う。

 
 そういえば出生率が話題になっていたけど、流山(千葉県)では子どもが増えているそうですね。

千葉県流山市はこの10年で0~4歳の子どもが3000人以上増え、人口増加率6年トップを達成した」 https://www.fsight.jp/articles/-/49590


 こういうニュースをもっと聞けるようになるといい。自分もできることから頑張る。


本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。